ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「東京情報コレクション」(講談社現代新書 1986年)

https://www.instagram.com/p/BeSDcrDHF20/
 新宿駅地下の古本市「古本浪漫州」でたまたま購入した一冊。1986年に書かれた都市論的な東京ガイドだ。
 今から32年前。バブルに向かいつつあり、最も東京が調子に乗っていた頃なので、この本にもその勢いが感じられる。建築史家・陣内秀信による序文「ホロニック都市のコンテクストを読むために」も「『東京は一番エキサイティング!』か?」という章から始まっている。

 とにかく執筆陣が豪華だ。泉麻人がバス路線から東京の変貌を観察し、呉智英が図書館の使い方を講義し、唐十郎が下町の銭湯について語る。赤瀬川原平トマソン入門もある。
 今、読み返して最も面白いのは、30年前の失われた東京の光景だ。まだ秋葉原は「萌都」ではなく最先端の電気街だし、ニューウェーブブームが到来する前のラーメン界は、札幌ラーメンと九州ラーメンが全盛であり、聖地は荻窪だ。湾岸地帯が盛り上がりつつあったようだが、ウォーターフロントという言葉はまだない。この後に盛り上がって、そして消える。

 1986年といえば、僕は高校を卒業して、池袋の西武百貨店でバイトしながら美学校に通っていた頃。実家を出て、江古田の木造アパート(トイレ共同!)でひとり暮らしを始めた年でもある。つまり、まぁ、個人的にも「青春」まっさかりだったのだ。19歳。
 ゲームセンターについて触れた項では、江古田には8軒のゲームセンターとテレビ麻雀専門店が4軒あると書かれている。そうだ、確かにあの頃、江古田はゲームセンターだらけで、僕らの重要な娯楽だった。なにかというとゲームセンターで時間を潰していた気がする。
 それだけあった江古田のゲームセンターも現在は、2006年に開店したマニア向けの店「Game in えびせん」のみ。当時の店はもう一軒も残っていない。同じく、たくさんあった古本屋も壊滅状態だ。
 この本に登場する様々な店も、大半が姿を消している。
 その一方で「店といい、人といい、老朽化が目立つ。あと数年の運命か」と書かれている渋谷ムルギーが、まだ健在だったりもする。

 今、この本を片手に1986年の痕跡を求めて東京を巡ってみるのも面白いかなと思った。


 

「オトコに恋するオトコたち 誰も教えてくれなかったセクシュアル・マイノリティの世界」(竜超 立東舎)

f:id:rioysd:20151112144938j:plain
 日本初の同性愛雑誌「薔薇族」(1971年創刊)の二代目編集長である竜超(りゅうすすむ)さんが、知っていそうで意外に知らない、ゲイを中心としたLGBTの世界を解説してくれるという一冊。LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルトランスジェンダーの頭文字をとった性的少数者を意味する言葉なのですが、それ以外にも性的少数者の種類はあるし、だいたい言いにくいというので、本書ではセクシャルマイノリティ、略してセクマイと呼んでいます。なんか某ジャニーズグループの略称みたいですけど、LGBTより言い安くていいですね、セクマイ。

 ゲイはどうして、男の世界のはずがオネエ言葉を使うのか、というのは以前から不思議に思っていたのですが、その回答も書かれていました。オネエ言葉はゲイの世界の「仲間同士の証」であると同時に、使い出すとゲイの間ではモテなくなってしまう魔のアイテムであるという説明はなるほど、と思いましたね。
 ネットなどが普及して状況が変わったことによって新宿二丁目にも変化が訪れているとか、ゲイの人はBLをどう思っているのかとか、この「近くて遠い隣人」たちの「今」をわかりやすく教えてくれます。個人的には愛読している「きのう何食べた?」が当事者から見てもリアルだと太鼓判を押してくれたのが嬉しかった(笑)。

 竜超さんとは、彼が前の名前を使っている時からの知り合いなんですが、ゲイであると同時に、むしろオタクでサブカル好きという面の方が強い人なので、彼の書くものは僕らにとっても非常に読みやすく、わかりやすいんですよね。
 僕の生きる上でのポリシーは「世の中には色んな人がいるんだから、あんまり固いこと言わない」というものなのですが、この本からも同じようなメッセージを感じました。セクマイにもいろんな人がいる。うん、そりゃ、そうですよね。

「生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術」(泡坂妻夫 新潮文庫)

f:id:rioysd:20140313170313j:plain
 表紙には大きく「取り扱い注意」の札の絵が書かれ、「『消える短編小説』入ってます!」の文字。そして帯には、「お願い。はじめは各頁を切り開かず、必ず袋とじのままお読み下さい。」のコピー。

 そう、この本は、16ページごとに袋とじにされていて、そのまま読むと25ページの短編小説。しかし、袋とじを切り開くと、まったく別の194ページの長編小説になるという凝った仕掛けになっているんですね。
f:id:rioysd:20140313170329j:plain
f:id:rioysd:20140313170341j:plain
 作者はマジシャンとしても活躍した推理作家・泡坂妻夫。本作でもマジックが重要なテーマとして使われています。そしてこの小説自体が、マジックのような構造を持っているんですね。
 短編小説として使われる25ページが、長編小説の一部として取り込まれると、その文章が全く別の意味を持ち、元のストーリーはすっかり消えてしまう。なるほど、これは確かに「消える短編小説」です。なんという緻密な計算の上に書かれているのでしょうか。

続きを読む

エロの「デザインの現場」(有野 陽一 アスペクト)

http://instagram.com/p/lWLuqpjW-6/

 エロ本の先鋭的なデザインについて、そのキーマンとなった9人のデザイナー(編集者含む)に取材した一冊です。

 URECCO、夜遊び隊、チョベリグ、SMスピリッツ、TOPAZ、デラべっぴん、すっぴん、BOYES、GOKUH、BODY PRESS、ビデオザワールド、Chuスペシャル、ザ・ベストマガジン、マニア倶楽部……。紹介される数々の名エロ本。誌名を上げていくだけでも、もう目頭が熱くなってきますね。
 僕も書かせてもらった雑誌がたくさんありますし、登場するデザイナーたちともずいぶん仕事をしました。中でも、野田大和氏とは、ゴールドマン監督と三人で「Ha!」というユニットを一緒にやっていた関係もあって、一時期はよく行動を共にしていました(実は本書でも、野田氏の項で僕の名前も登場しています。嬉しい!)。

 誌面で紹介される彼らの作品……、表紙や企画ページ、AVのパッケージなどは、うっとりするほどかっこよく、インパクトのあるものばかりです。それでいて、エロの宿命なのか、どこかとぼけたユーモアを感じさせてくれます。
 登場するデザイナーたちは、みなさん実際に他のジャンルでも活躍していますし、その才能は単にエロ本の枠に収まるものではないのですが、やはりこの作品群にはエロならではの魅力が感じられます。

 デザイナーに限らず、エロに関わる才人には「そこまで出来るなら、エロじゃなくて一般向けをやればいいんじゃないですか」と言う言葉がよく向けられます。でも、エロというジャンルだからこそ活きる表現というのが確実に存在すると思うのです。
 本書はデザインという切り口から語ったものですが、それは当然エロ本自体の歴史を語ることでもあります。あまり取り上げられることのないエロ本の内幕についての貴重な証言も数多く読むことが出来ます。

 本書の制作中に、「ビデオザワールド」と「Chuスペシャル」の休刊のニュースが入ってきたことが綴られています。あとがきにも「この本でとりあげたエロ本のほとんどすべて、今はもうありません」と書かれています。そして現在残っているエロ本には、先鋭的なデザインを受け入れる余裕はありません。エロ本というジャンルは確実に終焉を迎えています。

 著者はあとがきでこうも書いています。
「『アダルトのデザイン』をひとつの歴史として残したい。それ以上でも以下でもなく、これがこの本をつくる趣旨であり、ぼくの純粋な気持ちでした」
 本書がこの時期に出たのは、必然とも言えます。

 紹介されているデザイナー、こじままさき氏は、やはり紹介されているアルゴノオトこと古賀智顕氏のデザインに憧れて、「URECCO」のデザイナー募集に応募したそうです。
 願わくは、本書をきっかけにエロのデザインの芳醇さを知り、それを受け継ぐ人が生まれますように。

 その力を活かす場は、エロ本ではないかもしれないですけれど。

エロ本のデザインに興味がある方は、WEBスナイパーにて、ばるぼら氏が連載している「ポルノグラフィック・デザイン・イン・ジャパン」もぜひお読み下さい。

「例のプール」発売されました!

f:id:rioysd:20131229114241j:plain
たぶん「今年、最もどうかしてる本」であろう「例のプール」(アスペクト)が発売されました。
例のプールとは、都内某所の撮影スタジオ内にあるプールで、水着物AVなどでよく登場するために、いつのまにか「例のプール」と称されるようになりました。

しかし、この「例のプール」だけで一冊作ってしまおうという無茶な企画が通るなんて、この出版不況の時代にどうかしてるとしか思えません。かっこいいぜ、アスペクト!

というわけで、この話を持ちかけられた時は、耳を疑いましたが、そんなメチャクチャな企画に参加できるなんて、なかなかあることじゃありません。即答でお引き受けいたしました。
インタビューやAVレビュー、そしてキャスティングなどを担当しております。

内容は、AV女優の初美沙希ちゃんや地下アイドルの姫乃たまちゃんの例のプールでのグラビアや、例のプールに関してのAV制作者のインタビュー、例のプールが登場するAVのレビュー、例のプールに関する噂の検証など、この一冊で例のプールの全てがわかる! 

というか、完全に出落ちな一冊なんですが、まぁ、持ってるだけでウケると思いますよ。

実際にネットではかなり盛り上がってますね。

“例のプール”まさかの書籍化、出版社「世の男性のハート鷲掴み」。(ナリナリドットコム)

例のプール”本が発売! 気になる中身をレビュー(日刊SPA!)

男子反応「例のプール」特集本発売(WEB R25)

日本一有名なプールを大解剖した本 「例のプール」(アキバBlog)

他にも、この時に撮影した関連記事もありますね。

“例のプール”&「ARROWS Tab QH」でオトナの限界を試す!(ASCII.JP)

コミケ待機中の紳士に贈る コスプレ写真を2.5次元化する超簡単レタッチテク(週アスPLUS)

以上、姫乃たまちゃんの画像が満載ですので、ご覧ください。
彼女のBlogにも、未発表画像がたくさん掲載されてます。

【画像あり】出版記念!『例のプールの本』の話

いやー、元取ってるな、おれたち(笑)。

最近読んだ本7冊

最近読んだ本をまとめて紹介します。

音楽配信はどこへ向かう?」(小野島大 Kindle

ミュージックマガジンで2008年から連載された音楽配信についてのコラムを収録。この5年間で音楽業界で起きた出来事は、出版業界やAV業界にも起こるのだろうなと改めて実感する。とりあえず現在コンテンツ産業に関わっている人、クリエイターは必読だと思う。しかし、本書では日本でのサービス開始を期待されているSpotifyが、アーチストへの配分が低いとトム・ヨークなどから批判されているなど、やはり問題はマネタイズの方法なんだよなぁとも再認識。


「『ぴあ』の時代」(掛尾良夫 Kindle

1972年に大学生たちが作った一冊の雑誌「ぴあ」はやがて映画業界、音楽業界にも大きな革命を起こしていく。その熱い過程を描いたノンフィクション。意図的に最も熱い昭和の最後の20年に焦点を当てた構成になっているのだが、やはり休刊に至る経緯に全く触れられていないのは不満が残ってしまう。

「ずんだ」(青木俊直 Kindle

最近では「あまちゃん絵」で話題になっている作者の16Pの短編コミック。女性二人が会話しながら、ずんだ餅を食べるだけの話なのだが、たまらなくエロティック。

「グラマー裸婦ポーズBOOK」(風間ゆみ 大洋図書

いわゆるデッサンのためのヌードポーズ集なのだが、モデルが超人気熟女AV女優の風間ゆみ。中肉中背で均整の取れたモデルばかりのポーズ集とは違い、その豊満なボディの迫力はとんでもなくセクシーだ。普通のヌードポーズ集の構成を取ってる分だけ、風間ゆみの肉感的な魅力が際立って見える。エロすぎ。

プラスチックスの上昇と下降、そしてメロンの理力」(中西俊夫 ケイ・アンド・ビー・パブリッシャーズ)

プラスチックス、メロンなどで活躍したミュージシャン中西俊夫の自伝。とにかくその超セレブな交友に度肝を抜かれる。プラスチックス時代のハチャメチャな海外ツアーの話は理屈抜きに面白い。ただし、文章が本業というわけではないので、説明不足な部分も多いのは少し残念。プラスチックスの初期未発表ライヴ&デモを収録したCDの付録も嬉しい。

「同人王」(牛帝 太田出版

2006年からネットで連載されたウェブ漫画を単行本化。同人漫画家を目指すタケオと、彼をコーチする肉便器先生の物語。漫画家漫画は基本的に大好きなのだが、本作はそういった枠を超えた面白さがある。強引にグイグイと読み進ませる暴力的なまでのパワーがある。しかし、「ちょっと待て、これはなんか変だぞ」と思わせる違和感が、また魅力なのだ。

「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」(渋谷直角 扶桑社)

こちらも、作者がホチキス留めのコピー誌で発表した漫画を単行本化したもの。サブカルに憧れる男女の姿を辛辣に描く。もう痛い、痛い。「カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生」「空の写真とバンプオブチキンの歌詞ばかりアップするブロガーの恋」「ダウンタウン以外の芸人を基本認めていないお笑いマニアの楽園」「口の上手い売れっ子ライター/編集者に仕事も女もぜんぶ持ってかれる漫画 」というタイトルだけで勝ち。「同人王」と共に既存の漫画のシステムを破壊するような作品がこの時期に相次いで単行本化されたのは、何だか象徴的な気がする。


というように、無意識に「メディアのあり方」に関係した本ばかり読んでました。

「愛しのインチキ・ガチャガチャ大全ーコスモスのすべてー 」(ワッキー貝山・池田 浩明 双葉社)

http://instagram.com/p/YYyveajW_v/
 ガチャガチャ界の大メジャーブランド、コスモスの商品を約千点もオールカラーで紹介したという本です。これは東北を中心に活躍するタレント、ワッキー貝山の10万個に及ぶコレクションの一部だそうです。

 コスモスは1977年に設立され、1988年に倒産したメーカー。僕が小学生だったのが1974年から1980年ですから、コスモスがあったのは高学年になってからですか。もっと前からあったような印象がありますね。たぶん中学生になってからもガチャガチャやってたんだろうな、僕(笑)。
 あと本社が浦和だったんですね。地元の企業だったのか!

 帯のコピーには「ロッチのシールなど、著作権無視、パクリにコピー、雑な作りのガチャガチャ製品を粗製濫造してきたメーカー、コスモス」なんて書いてあるし、実際に紹介されている商品は、確かにメチャクチャ。
 勝手に複製したビックリマンシールや、コンセプトをそっくりパクったなめ猫グッズ。そして完全に無許可で作っているのだろうけど、原型を留めないほど似ていないので問題にならないような気もするアニメキャラや芸能人の消しゴム人形……。

続きを読む
Amazon 【最大70%OFF】ミュージックセール