ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「DAMMUNE(だみゅ〜ん)」という事件

 一昨日、3月24日にustreamで中継したイベント「DAMMUNE(だみゅ〜ん)」は、もうなんというか奇跡的な体験をしたような気がします。今も、まだ余韻が残ってます。なんだったんだろう、あの高揚感は。


 この企画がスタートしたのは、そもそも知り合いの女の子たちがDOMMUNEの会場に行きたいと言い出したことがきっかけです。DOMMUNE宇川直宏さんが主宰するライブストリーミングで、金・土を除いた毎晩19時から24時までのオンエア。基本的にはトークショーとDJの二部構成でその質の高さが話題を呼び、毎晩5000ビュー以上という空前の盛り上がりを見せています。

 DOMMUNEは毎回抽選で50名が会場で見ることが出来るので、それに応募しようかなと女の子たちがtwitterでつぶやいたんですね。そうしたら、TKDが「ていうか君ら、じゃあ、俺がいっしーバーで3時間DJやるよ。そっちの方がレアだぞw」と言い出した。これが3月11日のことです。TKDは、かつてDJ EMMAとともに下北沢ZOO木曜日のレギュラーを担当した伝説のロックDJで、現在は主にマンガ原作者として活動してる人です。


 そしてDommuneと同じ枠でやりましょうw 平日で。24日かなあ。その前にトークショーで客が欲しいw」となり、そのトークショーで僕に声がかかったので、即OK。ちょうど第3号を出したばかりの「No1 in HEAVEN」をネタに話すことに。でも僕一人じゃ寂しいので、柳下毅一郎さんに声をかけて……という風に、話がどんどん広がっていきました。
 17日には練馬の素晴らしい居酒屋「友愛」*1にて第一回会議。トークで安田・柳下、DJがTKD、そしてネット管理がtag(田口こくまろ)というメンバーが決まり*2、20日には江古田の素晴らしい居酒屋「お志ど里」*3にて第二回会議。ここでAV監督の伊基公袁(イギー・コーエン)が、撮影スタッフとして参加が決定。なんで練馬とか江古田で会議をやってるかというと、僕とtag、イギーが練馬区民だからです(笑)。


 実は当初はイベント名はXOMMUNE(糞ミューン)だったんですが、あんまりだというのと、なんかDOMMUNEをDisってるみたいという理由で変更。あくまでもDOMMUNEリスペクトというのが僕らのスタンスでしたから。そこで、ダメなDOMMUNEという意味で、DAMMUNE(だみゅ〜ん)に決定。DAMMUNEのロゴマークは「友愛」にてTKDが、注文用のメモ用紙に走り描き……いや、本人談「カレーだけ食べられたカツカレーを前にして、描いた。魂入れたよw」とのことです。

 11日に思いついて、もう24日には本番。2週間足らずですよ。DOMMUNEは一年も前から準備されていたというのに…。


 DAMMUNEのイベント名が決定してすぐに、tagちゃんがustreamtwitterに登録をしたんですが、その時に間違えて「DUMMUNE」と登録して慌ててやり直したり、スタート時間を一時間早く告知してしまって修正したりと、この時点でさっそくダメっぷりを遺憾なく発揮するDAMMUNEスタッフ。「情報弱者のためのバーチャルクラブ」というキャッチは、DOMMUNEと間違えてDAMMUNEを見てしまうような人がターゲットという意味だったのですが、自分たちが既に情弱感満点です。
 この頃、DOMMUNEは5000ビューを超えていたので、会議の時の目標は1000ビュー。でも、自信がなかったので十分の一の500ビューも行けばいいよね、なんて話していたのでした。


 さて、当日。あいにくの雨の中、僕らは放送開始の3時間前から会場となる渋谷Bar Issheeに集合。イギーがかなり本格的な映像機材を持ち込んできました。さすがS1などの王道どころメーカーで仕事をしてるプロの監督。カメラ2台にDVDプレーヤーを映像ミキサーに入力してイギーが操作、それをtagちゃんがPCでustreamへ出力するというシステムになりました。このセッティング時も、テスト放送をかねてust中継してたんですが、それを見てる人にtwitterでハッシュタグの付け方を教えてもらったり、マイクテストを確認してもらったりと、みんなに助けていただくDAMMUNEというダメなスタンスをここでも遺憾なく発揮。しかも、本来の首謀者であるTKDは放送開始ギリギリまで来ないというダメっぷり。本番が思いやられます。

 実は前日のDOMMUNEでの五所純子さんとPhewさんのお料理教室を見て、僕は大変なショックを受けていたんです。デアプランとかDAFとかスーサイドかけながら二人でケーキを作るというシュールさ。しかも途中でPhewさん、ケーキ作りを放棄して曲を聴き込んでたりするフリーダムさ! ダメなDOMMUNEを目指してはみたものの、あの凄さにはちょっとやそっとじゃ叶わない。とりあえず、トークしながら駄菓子とか魚肉ソーセージとかカップラーメンとか食いながら飲みながらだとダメっぽいかなぁと直前にドンキホーテに買い出しに行ったりしてました。でも実際にはそんな余裕はなかったんですけど。


 さぁ、いよいよ本番開始です。DOMMUNEより5分早く開始して、少しでも客をいただこうという姑息なテレビ局のような作戦で18:55スタート。放送開始前に既に67ビューもあって凄いねと言ってたら、DOMMUNEは同時刻で680人。戦う前から十分の一。
 気を取り直して行きましょう。まずは「No1 in HEAVEN」Vol.3のイントロ、テレサ・テン歌唱の「喜久盛」CM〜モデルプランツLAST LIVE映像「いい大人」から。
「No1 in HEAVEN」の映像を流しながら、僕と柳下さんでトークしていくというスタイルなのですが、ustreamでは裸がご法度。いちおう成人向けである「No1 in HEAVEN」は当然、裸の映像が多いわけなんですが、その中でも裸が出てこないパートを選んで放送することになります。うっかり裸が映りそうになると、慌ててスイッチングしたりして、その緊張感もたまりません。

 僕がエロ本文化を復興させたくて「No1 in HEAVEN」を作り始めたなんてトークをしつつ、この日に映像をかけまくったのが天才監督ゴールドマンの作品なんですね。まずは20年前に制作されたジャパニーズボンデージの傑作「TOKYO BIZARRE」。これはアートっぽくて大変カッコイイ作品なんですが、これに引き続いて「No1 in HEAVEN」用に撮り下ろした「学級委員長」を上映。淫語ブームの開祖であるゴールドマンならではの傑作ショートムービー。ヌードこそ無いんですが放送禁止な淫語が連発されます。まぁ、ustreamの外人スタッフには日本語はわかんないだろうという判断で(笑)。
 これがウケたので、嬉しくなって僕は「今日はゴールドマン祭り!」と宣言して、どんどん上映していきました。ゴールドマンが新宿の駅前で歌いながら歩く「ストリートライブ」、そして「No1 in HEAVEN」には未収録ですが、僕がゴールドマンの最高傑作だと思っている20年前の作品「僕はこの瞳で嘘をつく」を流しました。

これが大変ウケまして、柳下さんに「安田さんはゴールドマンが好きすぎる」と言われた僕としては大満足でありました。ゴールドマンという天才を、みんなに紹介できたのは、本当に嬉しいんですよ。

 その後もVol.2に収録した二村ヒトシ監督の最高傑作(と僕は思ってる)「もしも朝の通勤電車ががっついたベロキスをするカップルで満員だったら」を流したり、Vol.3収録の「杉作J太郎、アニメを語る」を流したり。会場のお客さんとtwitterの反応を見つつ、あれを流したりこれを流したりできるのは楽しいですね。もう楽しくてカップラーメンを食べるとか忘れちゃった。
 そしてVol.3で最もエロいと評判の「女装美少年」を上映。モザイクがかかるようなところに特殊な修正をした特別バージョン。まぁ、ようは杉作さんの顔写真で隠したんですが。女装っ子ちゃんの可愛らしさと修正のバカバカしさがウケて、これもよかったなぁ。

 そんなこんなであっという間に2時間ですよ。750ビューを超えましたよ。これは大健闘ではないかと内心で祝杯をあげつつ、「No1 in HEAVEN」未収録のモデルプランツLAST LIVE映像「君がいなくても」で第一部は終了。慌ててDJシフトに切り替えます。


 この時のTKD談。

「前日はDOMMUNEのアカウントを聞いて、自分と安田さんのフォロワーをフォローしたりして、結局選曲できず・・遅刻した上会場で直前まで選曲するというダメダメな始末。最初100人200人かなあ、DOMMUNEの1/10の500人とかいけばいいよね、って言ってたら、トークで700人越え。正直これから始める自分のDJに生きた心地がしませんでしたよ。赤紙もらって戦地に赴く感じ・・。みなに心配そうな目で見られてたしw現場なら慣れてるけど、放送とかぜんぜん感覚がわかんないんだもん」


 でも、奇跡の時は、この後に訪れたんです。


 第二部のTKDのDJセットがスタート。一曲目はtagちゃんと見てきたばかりの「涼宮ハルヒの消失」のオマージュとしてサティの「ジムノペディ」。そしてピーター・ガブリエル「Heroes」ビーチボーイズ「surfs up 」なんて渋いところから回して来ますよ。
 TKDのプレイに合わせての映像は、基本的に据え置きのカメラ2台に、僕がDVDプレーヤーで「No1 in HEAVEN」の映像や、その他のAVの映像を流し、それをイギーが現場の映像とミックスしていくというスタイルで作っていきました。

 最初は、そんなにちゃんとVJをする予定じゃなかったんですが、twitterのTLを見てると、結構ウケてるんですね。TKDが何かけるかもわからないし、こっちも手持ちの映像は限られている(なにしろ裸はダメ)。だからもうメチャクチャですよ。
 後藤邑子朝比奈みくるの声優)の「Smells Like Teen Spirit」 カバーやキュアーに、僕が昔撮った長谷川ちひろの妹モノAVを重ねるというカオス! どんどんキレを増して行くTKDのDJに、どう考えてもミスマッチな僕の送り出す映像をイギーが見事にミックスしてくれて、なんだかわからないけど、カッコイイものになってます。ニューオーダーに延々と杉作J太郎さんの顔をカットインしたり、ニッポニアエレクトロニカ製のレアな映像をガンガン使ったり。
 TKDのプレイがスタートした時は、少し減っていたビュー数も、どんどんウナギ登り。え、何、800突破? 900行った?


 ジョージ・マイケルをプレイしているTKDから「ここで女装美少年を!」なんてリクエストも入ったりして、これまたウケる。会場では、デパートメントHのガンプラブースの現リーダーでありプロ原型師のマキノ先生が出張してくれて、マスターグレードのGMを組み立ててくれました。わずか二時間の早業、しかも盾にはDAMMUNEのアイコンマークまで描かれていました。その作業の様子もカットイン。完成後はDJブース前でGMがDAMMUNEのアイコンマークを掲げていました。
 TLにはガンプラ、UKロック、AVってモロ中学生男子の青春じゃん」とか「こっちは童貞くさい」とか、なんというかDOMMUNEとは確実に違ったものとして認められています。
 さぁ、TKD畳みかける、Janes Addiction! EMF! プライマル・スクリーム! そしてついに1000ビュー突破! まさか無理だろうと思ってた1000人視聴ですよ。今、この瞬間にTKDのプレイを 1000人もの人が見てるんですよ。いっしーからシャンパンをプレゼントされ、みんなで乾杯。会場は一気にヒートアップします。


 これで僕ら的には大満足だったわけですよ。ところがまだまだ終わらない。江口寿史さんがTLに顔を出してくれたので、さっそくVol.2に収録の江口さんの映像をカットイン。杉作さんから続くインタビューという感じで、竹熊健太郎さん、吉田豪くん、寺田克也さんたちの顔もカットイン。これ、「No1 in HEAVEN」知らない人には、意味不明でしょうね。だけどそれが妙な味わいを出していたようです。

  DJ Q'heyの「20年程前、ボクの憧れの存在だったDJ TKDがダミューンにてプレイ中」なんてツィートもあって、さらにビュー数がヒートアップ。そしてなんと坂本龍一がまでTLに登場。「両方聴いてるけど、ダの方が音楽がいいね。^^;」とのメッセージまで! これでまた一気にビュー数がアップ。
 坂本さんの言葉にもありましたが、この時、DOMMUNEとDAMMUNEの両方を行ったり来たりしてた人がかなり多かったようです。まるでメインフロアとセカンドフロアを行き来するように。あるいは同時に立ち上げて、音はDOMMUNE、映像はDAMMUNEなんてことをしてた人も。
 そして僕らが狙っていたように本当にDOMMUNEと間違えてDAMMUNEを見ていた人も結構いたようです。その一人が「おしゃれさんが視聴するというドミューンというものを見ていたつもりでしたが、ダミューンというほうを見ていることに今気付きました。」という江古田ちゃん(笑)。

 PIL、トーキング・ヘッズメタリカ、ブラーとTKDも飛ばす飛ばす。僕の方は、もう手持ちの映像がなくなってきたので(もともとそんなに VJするつもりじゃなかったので)、柳下さんと手持ちカメラで場内を撮ったりしてたんですが、TLには「あの狂ったVJは帰っちゃったのか」とのツイートが。よろしい、じゃあ、またやりますよ。と、プレイ再開。でも、この時のVJはイギーだと紹介してたので、彼が狂った人だと思われたようで、ごめんなさい。狂ってるのは僕です。イギーは大変センスよいVJです。

 本当は23時で終了とか言ってたんですが、ここまで来ると終われない。DOMMUNEが終了した12時を過ぎると、こっちに流れてくるお客さんも多数。そしてついに3000ビューを突破! と、同時にTKDのプレイも終了。DAMMUNE第一回も終了となりました。ちなみに最後はシニード・オコナーに若林美保さんがローションまみれになる映像でした。*4


 しかしあの時の高揚感はなんだったんだろう。単にビューの数字が上がっていくというだけじゃなくて、その数字が確実にその人数を表している実感がありました。会場には20人弱の人数しかいなかったんですが、twitterのおかげで3000人の人と一緒に踊っているという気分がリアルに感じられました。そしてUstreamTwitterという新しい技術が新しい面白さを生み出す、その現場に今、自分たちはいるんだという喜びだったんでしょうね。会場では僕らだけじゃなくて、全員がスタッフという感じでしたしね。なんかすごく一体感もあった。久しぶりにインターネットって、おもしれー! という感動。

 それにしても、実際に自分たちがやってみて、DOMMUNEの凄さ、というか主催の宇川直宏さんの凄さを思い知りましたね。だって、これを毎日やってるんですよ! 僕らなんて、翌日はみんな抜け殻ですよ。

 最後にこの企画が立ち上がった時のTKDのツイートを引用します。

「正直な話、DJをして、客が何人入ったとか、盛り上がって楽しかったとか、そういうのはどうでもいいんだよね。それより俺の DJ見てDJ始めたとか、俺のパーティで出会って結婚したとか、そういう方が嬉しいしやった甲斐があると思うもの。表現なんだから、次の人にバトン渡したいじゃん。」
「小箱の楽しみって、そうやって新しい人がどんどん生まれていくことだと思うよ。距離が近いから生まれやすいんだよ。パンクはそうじゃん。ピストルズのお客はみんなアーティストになってったじゃん。下北沢ZOOが求めてたことはそれ。小箱なんだから客入ったっていってもたかがしれてんだしさ。」
「表現なんだから、表現への賞賛は、表現として返していくしかないと思うんだよね。言葉やお金じゃないんだよな。表現つっても難しい話じゃなくて、こっちが驚かしたんだから、そっちも驚かしてよって話だよ。」
DOMMUNEがやばいと思うなら、何か始めないと。始めない理由を探しているなら、その表現はそこまでのものでしかなくて、その域に達してないっていう評価を下したことになるよね。」

TKDカッコイイ。結婚して!


そして、宇川さんからもツィート。
「ダダダダダミューーーーーン!!!!!!!!!!!!だみゅーん観てみたかったぜ!!!!!!!!DAMMUNE!!!!!!みれるわけねーーーーだろ、裏だから!!!柳下さん、 TKD裏れすぺくとD.E.A.T.H!!!!! 」
最高です。


次回のDAMMUNEは、まだ未定。でも、また何かやりたいと思ってます。http://twitter.com/dammuneで告知しますので、興味ある方はtwitterでフォローしておいて下さい。

ちなみに4月4日には、スナックニッポニアで僕が一日店長として「No1 in HEAVEN」ナイトを行います。まぁ、高揚感の無いDAMMUNEという感じでやりたいと思いますので、ぜひいらして下さい。こっちはust中継ないから、思う存分、裸も出すぜ!

※第一部のトークショーについてのツイートをARTIFACT69さんがまとめてくれました! http://togetter.com/li/10954

*1:肉料理が安くて美味い練馬が誇るディープでカルトな店

*2:ちなみにこの日、首謀者のTKDは打合せ開始の時刻に、まだ馬込にいた。

*3:江古田最大級の江古田飲みの基本となる店

*4:その後、プライマルの「Come Together」がかかり、見ていた人にはアンコールだと受け取られたようですが、実はこれは店内の片付けのBGMとしてTKDがかけたもので、放送されてることを知りませんでした。なので、最後がブチ切りになっております。

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