ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

ライターのおしごと

 2月7日に書いた「レンタルAVの見た夢」に対して、雨宮まみさんが「NO! NO! NO!」で反論を書いてくれた。とても素晴らしい文章なので、とりあえず読んでください。その前の日付の分ではカンパニー松尾のロングインタビューも掲載されているので、そちらもぜひ。

 反論されたら、反論し返すというのを期待されると思うのだけれど、ハマジムに対してのスタンスが、僕と雨宮さんでは全く違うので、ちょっと論争としてかみ合いそうにない。正直なところ、僕は今、それほどAVというメディアに対して思い入れがない。だからハマジムに対しても客観的に見てしまう。

 もう10年以上前の話になってしまうけれど、松尾らの世代がAVに登場した時、僕は「え、えらいことになった!」と興奮し、発表するあてもなく原稿を書き、愛読もしていない「ロッキングオン」誌に投稿してしまった*1。「AVでは、映画や漫画や文学に匹敵する表現ができるんだ!」と感動し、この感動を誰かに伝えなくてはという思いからライターになったといっても過言ではない。その頃、僕は広告会社でコピーライターをやっていて、バイトとしてライター仕事をコソコソとやっていたのだけれど、松尾世代のAVでの活躍、過熱しはじめた平成風俗ブーム*2、そして今では笑い話になってしまうけれどアダルトCD−ROMというマルチメディアによる新しいアダルト表現。こうしたものが一気に噴出した時代に、生活のために興味もない広告のコピーを書いているのは耐えられなくなって、アダルト系フリーライターになった。僕が書かなかったら、誰も気づかないままだ、と闇雲に思っていた。

 その頃の熱は、今の僕には無い。今の僕は僕で自分の興味があるテーマを書いていく。僕の視点から見れば、ハマジムの失敗は作品の優劣ではなくメディアの性質の読み違いによるものだ。AVにおけるレンタルとセルの違いが内容にどのような影響を与えるのか、その点に僕は興味を持つ。

 雨宮まみよ、君が作品から受けた感動が、それほど大きいのならば、それをライターとして文章で吐き出すべきだろう。「売れないなら、状況が苦しいなら、どんな汚い手を使ってでもアオって、泣かせて笑わせて、文章でアジりまくって、一人でも多くの人にそれを『見たい』と思わせることがライターの仕事なんじゃないのか。自分が信じたものを、届くべき人のところに届くように力の限り遠くまで投げるのか、ライターの仕事なんじゃないのか。」という君の叫びは、正しい。でも、それが全てのライターに当てはまるものじゃない。だからこそ君がもっと書くべきなんだ。もっと、もっと。

 と、まぁ、本来ならメールで直接出すべき文章なんですが、論争を期待してくれている人もいるみたいなんで、ここにアップしてみます。論争にはならないですね。これで少しでも「NO! NO! NO!」を読んでくれる人、ハマジムのDVDを買ってくれる人が増えれば嬉しいので。実は「レンタルAVの見た夢」を読んで、ハマジムのDVDを買ってくれた人がいたらしいとハマジムの宮下さんが教えてくれました。すごく嬉しかったです。あんなネガティブな文章なのにねぇ。

 エロビデオなんかのことで、こんな熱く語ってんじゃねえよと思う方もいるでしょうが、僕ら、マジなんですよ。ええ、もう。

*1:確かゴールドマンについての文章。その時の編集者が川崎和哉さんで、その縁から僕はあの「ネットトラベラーズ95」に参加することとなる。その後、「ロッキングオン」ではカンパニー松尾についても書かせてもらった。

*2:90年代前半に、イメクラ、性感ヘルスといった新しいタイプの風俗店が急増し、大きな潮流を生み出そうとしていた。

Amazon 【最大70%OFF】ミュージックセール