ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

惜しまれつつ消えたラーメン屋

 今はどこの町でも同じですが、僕の住む江古田もやっぱりラーメン屋が乱立しているわけですよ。でも、個人的には「ここだ!」って決め手にかける店ばかりで、ごひいきに出来るラーメン屋はなかったんですね。強いて言えば「天下一品」(江古田店は都内で二番目の店だったはず)が好きなんですが、40歳近くなると、アレはちょっとヘヴィですからね。そう度々は食べられない。
 昨年秋にオープンした「らーめん 武蔵裏門公園前」って店があるんですよ。武蔵大学の裏の公園の前だからという、そのままズバリの店名がユニーク。6人しか入れないカウンターのみの大変小さな店なんですが、これが美味いんですね。いわゆる「家系」のラーメン。ただ脂は抑え目で、比較的さっぱりしていて、ちょっとコショウが効いてます。麺は黄色くて腰のある中太ストレート麺。初めて食べた時に、これだ! と思いましたね。よく家族で行ってたのですが、子供もここのラーメンは美味しい美味しいと、たくさん食べるんです。
 で、なによりも、若い店長さん(一人でやってますが)がいい感じなんですよ。気さくで真面目そうで、色々と気をつかってくれて。人柄がいいと、味の方もより美味しく感じますよ。偉そうに仏頂面してるラーメン屋とか、本当に嫌いですよ、僕は! あと、マニュアルっぽい接客とか、心のこもってない薄っぺらな威勢のよさとか。
 そして安いんですよ。普通のラーメンが550円。大盛りもライスも味付玉子も海苔増しも50円。ラーメンはこうじゃなくちゃね。近所にあって、気軽にふらりと入って、店長とちょっと話して、ああ、美味しかったと思えるラーメンなわけですよ。正に理想のラーメン屋!
 なもんで、ここんとこずっと江古田でラーメン食べるなら「公園前」と決めてたわけですよ。ネットなんかで調べてみても、評判がやたらいいんです。江古田!町内会江古田飲み食いランキングでも絶賛の嵐ですよ。こんなに評判がいいラーメン屋も珍しい。
 ところが、なんと6月一杯で閉店しちゃうというじゃないですか! え、なんで、なんで? ネットでも衝撃が走りましたよ。どうやら、店長がサラリーマンに転職するから、ということなんですが。こんなに評判いいのに! 半年ちょっとで閉店しちゃうなんて! 江古田飲み食いランキングでも閉店を惜しむ書き込みが殺到、そして別れを惜しんで客も殺到ですよ。
 行ってきました最終営業日。出勤時間を遅らせて、11時30分の開店時間に合わせて妻と行きましたよ「公園前」。実は妻は、二日前にも子供たちと食べに行ってるんですけどね(笑)。そうしたら、おお、並んでるじゃないですか! 12時前なのに! もうみんな別れを惜しんでるんですよ。一年も営業していない店なのに! 駅からも遠くて小さくて立地条件的には決して恵まれていない店なのに! 店に入りきれなくて、前の公園でどんぶり抱えて食ってた若者たちもいましたよ!(笑)。みんながみんな(そして僕らも)帰る時には「がんばってね」と店長に言うんですよ。
 あとね、どうやら最終週だけ、店長のお母さんが手伝いに来てたんです。お母さんも若くて上品な感じで、すごくいい人そう。んで、店長のお母さんに対する態度が、またよくてね。「それ、熱いから気をつけて」とか気をつかっててね。ほら、よく身内に対しては怒鳴ったりしてる店とかあるじゃないですか。ああいうのって、見ていて精神衛生上よくないですよね。いやな気持ちになりますよね。でも、ここの店長は、すごくお母さんを大事にしてるのがわかるんですよ。ああ、お母さん、あなたは息子を上手に育てたねぇ。うちもあんな息子に育ってくれるといいねぇ、なんて妻と話しましたよ(笑)。
 きっと彼はサラリーマンになっても上手くやっていけると思うけど、やっぱり残念。いろいろ理由はあると思うんだけど、短期間でこんなに愛されたラーメン屋なんて、奇跡のような存在ですよ。
らーめん 武蔵裏門公園前」は江古田の伝説となるでしょう…。

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