ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

中村淳彦のAVメーカー、あけぼの映像

名前のない女たち」などで知られるAVライターの中村淳彦君は、本気で自分以外は全員狂ってると思っている。中村君と話していると、とにかく他人を「狂ってる」「頭おかしいよ」「寒い」と評するのだ。たぶん他の人と話す時は僕のことも「狂ってる」と言ってるんだろうなぁ。そうして他人のことをやたら「おかしい」と言うわりに、自分もかなり社会常識に欠けてたりする。前もチャイムもノックも無しにいきなりウチの事務所に入ってきて、「こんにちわ」の一言もなく、ずっとつっ立ってて驚いたことがある。
 そんな中村君だが、意外にもみんなから嫌われていない。愛されてると言ってもいいかもしれない。僕も嫌いじゃない。なんというか、妙に可愛げがあるのだ。さんざん人のことを罵倒するような原稿を発表しながら、「ちょっと相談したいんですけどー」なんて平気で電話をかけてくる。
 数ヶ月前に中村君が「AVメーカー作ろうと思うんですけど」と電話をかけてきた。その頃、中村君は「もうAVライターはダメだ。なにか他のことを考えなくちゃ」と、しきりに言っていて、たどり着いた結論がAVメーカーをやるということだったのだろう。
 僕もダリオレコードのような自主レーベルをやっていたし、ライターでAVの制作に関わっている人も少なくない。でも、中村君のやろうとしているのは、毎月何タイトルも出していくような、ちゃんとしたメーカーだった。
 中村君の行動は早かった。あれよあれよという間に作品を撮りあげて、思いついてからわずか一ヶ月ちょっとの8月5日には「TOKYO愛玩 異常性欲者のオモチャにされる素人娘たち」「夜勤明けの現役看護婦を強制露出中出しSEX」の2作品をリリースしてしまった。メーカー名は「あけぼの映像」。中村君が仕事をしている曙出版とは関係なく、リストなどに掲載されたとき上になるように「あ」から始まる名前にしただけとのこと。

 ある日、事務所の郵便ポストの中に曙出版の紙袋に入れられたあけぼの映像の2本のビデオが突っ込んであった。袋にも何も書いてないし、手紙もなし。実に中村君らしい(笑)。
 「TOKYO愛玩」はワタルックス、「夜勤明けの現役看護婦」は太賀麻朗がハメ撮りしていて、どちらもあっけないほど普通のAVだった。中村淳彦のメーカーという面を期待すると、ちょっと拍子抜けするかもしれない。中村君が言うほど「異常性欲者」ぶりではないけれど、ワタルックスも太賀麻朗もさすがベテラン。きっちりと「エロ」を見せてくれる。実用度はちゃんとある。
 でも、これならわざわざ中村君が新規参入することもないんじゃないかなぁと言うのが正直な感想だった。中村君自身もその辺はわかっているようで自身のblogでこう語っていた。

当初の目的はメーカーとして成立させることだったので、凄腕のハメ師が撮影したそれなりのエロを提供していればいいのかなって思っていたのだが、それなりのエロを提供しているだけでは、たぶん偏差値的に50くらい。大学で例えると日東駒専の二部くらいの存在で、それで全然OKかなと思ってたんだけど、どうやら各方面に耳を傾けて聞けば聞くほど、完璧に隙間をついてユーザーや販売関係者に誰にも知られる偏差値70以上の存在にならないとあらゆる意味で意味がないらしく、第一弾発売日直前で数字もでてないけど、頭の中を成立させるってことから切り替えることにした。

 僕は正直言って中村君の「名前のない女たち」などの一連のインタビュー物は、あまりにもネガティブな偏見に凝り固まった書き方で現実を捻じ曲げているように思えて好きではないのだけれど、彼が編集している曙出版の「爆写」や「DVD DOKAN」などは、そうした中村イズムを上手くエンターテイメントに転換していて面白いものになっている。裏モノ世代には、こうしたセンスというのは受けると思うし。あげぼの映像は、やっぱりそうした路線を突き進んで欲しい。中村君にしか出来ないAVなら、けっこうイケるんじゃないだろうかと思う。本人も「ミリオンとかS1とかのまったく逆、『幻想を打ち砕く』リアルを描いていきます」と書いてるし。そういうニーズは絶対にあると思う。
「夜勤明けの現役看護婦」の中で、中村君がインタビュー中に女の子を口説いて、ラブラブなハメ撮りをするというパートがある。これが実にラブラブ感がないのだけれど、なんかその「寒い」感じが中村君らしくて面白かった。どうせなら本人がもっとハメ撮りすればいいのに。
 とにかく、あけぼの映像には成功して欲しい。思いついたら、すぐにメーカーを作ってしまった、その行動力は賞賛に値する。僕自身も昨年あたりから色々な流通の実験を繰り返しているがやってみると色々面白い。自分でやってみないとわからないことは多い。とりあえずエロライターという職業は、このまま現状を受け入れているだけでは、かなりヤバイことになる。「AV業界はダメだ、エロ本業界はダメだ」と口先で言ってるだけじゃ、生き残っていけない時代が来る、というか、もう来ている。ライターも自分で何かをやり始めないとダメだ。出版社だけに頼っていたら、心中するハメになる。そういう意味でも、あけぼの映像には成功してもらわないと、困るんだよなー(笑)。

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