ダリブロ 安田理央Blog

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男優・鳴沢【ゴロー】賢一インタビュー

昨年から「NAO DVD」(三和出版)という雑誌でAV業界の裏側やトレンドなどを分析する特集を連載しています。これまでに「AVのお金」や「AVのパッケージ」「モザイク修正の現状」といったテーマを取り上げてきました。
 そして現在発売中の6月号では「2.5次元からAVへの挑戦!?」と題してアキバ系AVの現状をレポートしています。TMA、イフリート、GIGAといったメーカーへのインタビューやイベントの取材などで構成しています。かなり面白いものになっていますので、この辺のAVに興味がある人は、ぜひ! あ、21日には次の号が出ちゃうので本屋に急いで!(ちなみに7月号の特集は疑似ロリータです)
 この特集の中で、「TMAのゴロー」こと、男優の鳴沢賢一さんにインタビューしているんですが、誌面の都合でチョロっとしか掲載できなかったんですね。これは非常にもったいない。ゴローちゃんの正体を知りたい人はたくさんいるはずだ! というわけで、鳴沢賢一インタビューのロングバージョン原稿を書き下ろしてみました! 鳴沢氏に許可をいただき、ここに掲載いたします。


TMAに欠かせない名男優 鳴沢”ゴロー”賢一

 ネットなどでTMAの作品が紹介される際に、女優以上に注目されているのが「ゴロー」こと、鳴沢賢一氏だ。「Faith/stay knight」(2006年)で主人公のゴローとして登場した彼の、元ネタのキャラとのギャップが話題を呼び、それ以降、鳴沢氏をゴローと呼ぶファンが増えた。その後も「涼宮ハヒルの憂鬱」「涼宮ハヒルの消失」では谷口、「ロゼーンメイデン」ではジュン、「きら☆すた」では白木みのる役で登場。これらの作品を紹介するブログやニコニコ動画のコメントなどでは、女優以上に注目されている。AV男優には珍しくウィキペディアにも彼の項目が作られているほどだ。
「そんな風に話題になってるってのがピンと来ないんですよね。もう9年も普通にAV男優やってますから。これで仕事が増えたわけでもないし、街で声を掛けられることもないし」
 そういって鳴沢氏は笑う。そう、ゴロー氏はじつはベテランといってもいいほどのキャリアを持つプロの男優なのだ。
「でも男優になる前はゲーム会社にいましたから、元々アキバ系には近い人間なんですよ」


 鳴沢氏が男優になったきっかけは、少し変わっていた。様々なトークイベントが行われる新宿のロフトプラスワンで男優ポンプ宇野が主催したAVイベントへ会社の同僚に連れられていったのがそもそもの始まりだ。
「手をあげたらステージで女優さんがフェラしてくれるっていう企画があったので、参加したんですよ。もちろん人前でそんなことをするのは初めてだったんですけど、ちゃんと出来て(笑)。それを見ていたhmp(AVメーカー)のプロデューサーが声を掛けてくれたんです。よかったらAVに出てみないかって」
 当時、鳴沢氏はとあるゲームメーカーで働いていたのだが、AVの世界に興味を持ち、月一本程度のペースで男優のバイトを始めた。
「最初は素人物だったけど、二本目でいきなり夢野まりあって単体モノのカラミやったりして。最初から単体モノによく出てましたね」
 ところがその頃、勤務していた会社が倒産してしまう。
「もともとゲームが好きで、デバックのバイトから入ったんですよ。会社が無くなるというので、他のメーカーからも誘いはあったんですが、どうせなら男優としてやっていこうと考えたんです」
 それが2000年頃の話だ。プロの男優となってからも、コンスタンスに仕事はあった。その流れで、彼を一躍有名にするTMAでも仕事をするようになる。
「一番最初のTMAの仕事はコスプレ女子校生とか、そういう感じの現場でしたね。そのうちによく仕事をしている監督が『Faith』を撮ることになったというので、僕に話が来たんですよ。原作の主人公って、線の細い少年だから、僕とはあまりにイメージが違うってよく言われますけど、その監督がよく使ってる男優の中では、僕が一番若かったんですよね(笑)」
 そして、その「衝撃的な」ゴロー役で、一躍有名になってしまう。
「ブログに『Faith』のレビューが出てるよって聞いて見たら、あんな風に書かれてて。はじめは正直イヤだったんですよ。まぁ、バカにされてるみたいなもんじゃないですか。でも、最近はちょっとこれは美味しいかなって思うようになりました(笑)」
 ネットでは、かなりの有名人になってしまった「ゴロー」だが、実際には影響は、ほとんど無いという。
「あれで特に仕事が増えたってこともないですからね。やっぱりAV業界とオタク業界って、全然違うから誰も知らないんですよ。アキバ系AVって、それほどあるわけでもないですしね。まぁ、別に街で声を掛けられることもないし、騒がれているっていうのは正直実感はないです」
 ニコニコ動画では裸やセックスのシーンはNGのためアップされていない。そのため、ニコニコ動画などで「ゴロー」を見ている人は、彼のカラミのシーンを見ていないのだ。実際のAVを見た人よりも、ニコニコ動画で彼を見ている人の数の方が遙かに多い。そのため、普通のAVで鳴沢氏が男優をやっているのを見て、驚く人もいる。
 3月14日に阿佐ヶ谷LoftAで行われたイベント「バカAV専門学校 2次元からの侵略!オタクAV最前線」でも、彼がセックスをしているシーンが流されると「ゴローちゃんがセックスなんかしちゃイヤだー」などという声があがったりした。
「おかしいですよね、僕はセックスを見せるのが本職なのに(笑)」


 鳴沢氏は現在32歳。いわゆるガンプラ直撃世代だ。
「やっぱり一番好きなのはガンダムですね。というか富野ファンなんです。いちおう最近のダブルオーとかも見てますけど。男優の仕事を始めてからは、少しオタク趣味からは離れてたんですが、最近はまたちょっとぶり返してきたかな」
 TMAの作品を撮る前などは、監督から勉強するようにと事前に元ネタのゲームなどを渡されるらしい。
「AVで、事前にそういうことを言われることは少ないですから、ちゃんとやらなくちゃって気にはなりますよね。女の子たちなんかも、こういうのが好きな子は気合い入ってますよ。事前にダンスとか練習したりとか。そうだ、『きら☆すた』のダンスのレクチャーは僕がやったんですよ」
 鳴沢氏が一番ノって演じたのは、その「きら☆すた」の白木みのる役だそうだ。
白石みのるの実写をやらせたら、僕は男優で一番だと思う(笑)。あれ(らっきーすてーしょん)は2本しか収録されてないんですけど7本くらい撮ったんですよね。他のも公開してくれればいいのに」
 ブログなどのレビューもちゃんとチェックしているという鳴沢氏。
「アキバ系の人たちとも関係を持っていきたいんですけど、あまり接点がないんですよね」
 

 現在のAVでは、男優はできるだけ画面に顔が写らないようにする撮り方が主流だ。台詞がひとつもないということも多い。そのため、ユーザーが男優の個性を認識することは難しくなっている。加藤鷹やチョコボール向井のようなカリスマ男優というものは産まれにくいのだ。そういう意味では、鳴沢氏のようにキャラクターが注目された男優というのは、久しぶりの存在なのである。もしかしたら、ユーザーに顔を覚えられる最後の男優なのかもしれない。

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