ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「サルまん2.0」の壮絶な最終回

 月曜に発売された「IKKI」7月号(小学館)で、「サルまん2.0」が突如最終回を迎えました。まだ連載8回目。これでは単行本にもなりません。
 連載終了の経緯は竹熊健太郎氏のブログ「たけくまメモ」でも「『サルまん2.0』連載は中止しました」 「今回の『サルまん』連載中止について」のエントリーで説明されていますが、凄かったのは本編最終回の原稿でもこの経緯を竹熊・相原コージ両氏の視点から語っているということです。
 竹熊氏は「サルまん2.0」はメディアミックスをテーマに考えていたのだが、それが相原氏や編集部に理解されなかったと言い、相原氏は「もう一度昔のように楽しく連載がしたくて栄光が欲しくて金が欲しくて、だから『サルまん2.0』をやったんだ!!」と赤裸々に語ります。
 いや、もう壮絶な自爆という感じの最終回。前作「サルまん」の作中で、夢よもう一度とばかりに「とんち番長2」を始めるも電波漫画となって終わってしまうという展開をなぞっているかのようです。ある意味で非常に「サルまん」らしい終わり方とも言えますが。
「ご愛読ありがとうございました」という竹熊氏の文章の中に、前作「サルまん」はバブル景気の中だから成立した漫画だったという下りがあります。「要するにマンガであれば何でも売れていたので、ひとつくらいこういうマンガでマンガを笑いものにする酔狂な作品があっても、それを許容する余裕と勢いが業界にあったということです」と竹熊氏は分析します。これ、僕らのいるエロメディア、いや、出版をはじめとするすべてのメディアにも共通して言えることのような気がします。
 もはや漫画はそれ単体では商売にならず、アニメ化・商品化・携帯配信などをやることで、かろうじて維持している状態。だからメディアミックスは必然だと考える竹熊氏と、あくまでも漫画の範囲の中で漫画のネタをやっていこうと考える相原氏の姿勢のズレが今回の連載中止の原因となったわけですが、それは既に崩壊が始まっているライター業界にいる竹熊氏と、やばいやばいといっても、まだ本格的には崩壊していない漫画業界にいる相原氏の状況認識の違いのような気がします。漫画というコンテンツはアウトプットとなるメディアの種類が変わったとしても、基本的にはスタイルは変わらない。しかし、ライターは、メディアの変化によって仕事内容もどんどん変わっていくのです。雑誌などの仕事から手を引こうと考えているらしい竹熊氏は、それを実感したゆえに発想が漫画の枠を越えて暴走してしまったのではないでしょうか。
 僕は最終回を何度も読み返しました。色々なことを考えさせる、強烈な最終回でした。この最終回だけでも「サルまん2.0」という漫画には価値があったのではないかと思います。

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