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ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

TOKYO BIZARRE!

原稿アーカイブ

 P.R.O.M. #33で久しぶりにDJをやったのですが、その際にBGVとして様々なAVのハダカが出てこないシーンのみをカットアップして編集したビデオを流してみました。*1
 その中でゴールドマン監督の初期の傑作「TOKYO BIZARRE」の予告編を丸々使いました。僕も久しぶりに見たのだけれど、いやぁ、改めて素晴らしい。あんまり素晴らしいので、ゴールドマンに許可をもらって、その「TOKYO BIZARRE」予告編をYouTubeにアップしてみました。

 この頃のゴールドマンはデザイナーの野田大和らとHa!というユニットを組んで、様々エロとアートを縦断するような様々な作品やイベントを発表していました。そして僕も音楽やテキストなどで参加させてもらっていました。そういえば、モデルプランツの幻の1st&2ndシングルCDは、このHa!からの発売でしたね。あれは失敗でしたが(笑)。

 まぁ、そんなわけで当時の僕は情報相の如く、色々な雑誌にHa!の記事を書いていました。以下に再録するのは伝説のSMカルチャー雑誌「TOPAZ」3号(1993年 英知出版)に僕が書いた原稿です。デザインは野田大和。今読むと、若くて青くて気恥ずかしい文体ですね。

「colors of tokyo bizarre! 女は東京のオブジェである」
 本誌創刊号でも紹介した謎のユニット/インディペンデントレーベルHa!の代表作であり記念すべき第一回作品でもある『TOKYO BIZARRE』シリーズ全7本が再発された。
 1989年〜90年にAVメーカーの映研より発売されジャパニーズボンデージの新境地を開いた傑作と一部で話題を呼んだものの、限定発売のために長いこと幻の作品とされていたものだ。
 これは女性モデルがビニールテープで縛られて行く過程と、それによって変形された肉体を8ミリビデオで撮影したシリーズで、作品ごとに様々なコスチュームとシチュエーションによるバリエーションが用意されている。ボンデージワークと撮影はあの怪人ゴールドマン、アートワークは本誌等でも活躍中のデザイナーn氏*2が担当しているといえば、興味をそそられる読者も多いのではないだろうか?
 このシリーズ、ノンセックス・ノンヌードという原則を押さえていはいるのだが、オーソドックスな(本来の)ボンデージビデオを期待すると肩透かしを食らう。ここで描かれるボンデージはアーヴィング・クロウやジョン・ウィリーに代表される伝統的なスタイルとも、少し前に流行したファッション的遊びとも、そしていわゆる日本的な「縛り」の情念とも、全く異なった感触を持った独特なものだ。彼らとも交流の深いロマン・スロコムブの固執する白いメディカルルームに僅かに共通するものを見いだせるくらいか。
『TOKYO BIZARRE』で女性に絡みつくビニールテープは、束縛して屈辱を与えるためでも、苦痛を与えるためのものでもなく、肉体をオブジェ化するための道具に過ぎない。日本の「縛り」を含む全てのボンデージは、肉体の持つエロティシズムを更に引き出すことに大きな意味を持たせている。その曲線や、扇情的なポーズの強要。そして自由を奪うことから生まれる被虐的な美しさ。ロープ、レザー、ラバーなどによって締めつけられた肉体は倒錯したエロティシズムの魅力を放ち、観察者の性的興奮を刺激する。
 しかし『TOKYO BIZARRE』では、女性の肉体は意味も魅力も失った、ただの素材としてのみ扱われる。そこにあるのは、意志を持たないただの肉塊である。そして男(ゴールドマン)は、作品を制作する彫刻家のように、黙々とビニールテープで女性を縛り上げて行く。やがて原型をとどめぬほどに肉体を変形され、オブジェを完成させた後は、己の作品に陶酔するかのように様々な角度から、執拗なカメラワークでそれを記録する。事実、完成されたオブジェは信じられないほどに美しい。奇妙な曲線を描く白い肌と、テーマ毎に色分けされた鮮やかなビニールテープの素晴らしいコントラスト。そのはざまから覗く虚ろな瞳。女性の肉体が持つセックスアピールを全て排除してしまったが故に生まれる無機質なエロティシズムがザラついた画面から滲みでる。
 端正なアートワークと、豊富なアイディアに裏付けされたアバンギャルドな撮影技法によって『TOKYO BIZARRE』は、時として芸術の領域に踏み込んでしまいそうになる。しかし紙一重のところでそれを押しとどめているのは、全編に漂う濃厚な犯罪臭だ。何かにとり憑かれたかのようにボンデージという作業に熱中する男の姿は、猟奇的なバラバラ殺人事件の犯人が肢体を解体するイメージと重なる。だから『TOKYO BIZARRE』に触れる時、私たちは見てはいけないものを見てしまったような生理的嫌悪感に襲われるのだ。それは極めて忌まわしく、限りなく美しいのだ。
 股、日本のマニアが陥りやすい海外ボンデージの模倣とも明らかに一線を画し、確固たるオリジナリティを打ち出している点も『TOKYO BIZARRE』の魅力だ。ヨーロッパでもない、アメリカでもない、更には日本でもない感覚。『TOKYO BIZARRE』は東京でしか生まれえないボンデージスタイルなのだ。
 昨年開催された再発記念のイベントでは音響工作やボンデージライブを交えた『TOKYO BIZARRE REMIX』ともいうべき試みが行われた。この実験は必ずしも成功とはいえない結果に終わったのだが、積み上げられた十数台のモニターに映し出されるドライな映像の洪水は、会場の空気を見事に脱色させてしまった。
 ぜひあなたの部屋でも、この現象を楽しんで欲しい。『TOKYO BIZARRE』を垂れ流しておくだけでいい。不快で緊張感あふれるひとときが間違いなく楽しめる。

*1:使用したAVは以下の通り。「私を女優にして下さい。サンパウロ・北京・川崎 E B D-CAPボーダーレス編」「愛壊れたジョッカー夫妻」「THE筋肉グラマラス マッスル千晶」「きら★すた」「ひぐらしがなく頃に」「TOKYO BIZARRE予告編」「ダンスミュージック」「もしも朝の通勤電車ががっついたベロキスをするカップルで満員だったら」「七夏、それから」「巨大ヒロイン マシンレディー」「なま2」「REAL DOLL コンプリートコレクション」

*2:野田大和

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