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ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

猛火・猛煙からの脱出劇

 大阪難波での雑居ビル火災。15人もお亡くなりになった痛ましい事件であります。雑居ビルで、しかも個室ビデオでの火災というと、思い出してしまうのが2001年9月1日の歌舞伎町雑居ビル火災。この時も44名が死亡しております。そして実は僕は、この火災の半年前にも雑居ビルでの火災を体験しているのでした。それも風俗店の取材中に。
 この時の模様を「平口広美のフーゾク魂」*1イーストプレス)2001年6月号に書いております。ちょっと再録。




「猛火・猛煙からの脱出劇」

 3月9日7時頃、僕は某誌の仕事で池袋北口、平和通りの性感ヘルス『池袋の王様』で、Aちゃんを取材していた。インタビューを終え、ヌード撮影をしていた時だ。個室の電話が鳴った。
「え、火事だから、服を着て逃げる準備をしろ?」
 そう聞いた時も、僕らはまだボヤ程度の話だと思って、ヘラヘラと笑っていた。
 しかし、ドアを開けてビックリした。廊下は白い煙でいっぱいなのだ。視界ゼロ。こりゃボヤなんてレベルの話じゃない。 煙の中から、店の女の子や従業員たちが走ってくる。
「とりあえず、その部屋に逃げよう!」
 僕らのいた部屋が一番奥だった。そこへみんなが逃げ込んで来たってことは、もう外に逃げ出せない、つまり閉じこめられてしまったということだ。
 ドアを閉めても、煙はどんどん入ってくる。幸いここは風俗店、バスタオルは豊富にある。各人タオルを口と鼻に当てて、煙を吸い込まないようにした。 その時点で、部屋にいたのは女の子がAちゃんを含む3人、そして従業員が3人に僕の計7人。どうやら、他にも別のの部屋に数人逃げ込んでいるようだ。
 女の子たちは寄り添って、泣き出している。携帯電話で彼氏に電話をかけている子もいた。
「お店が火事なの! 閉じこめられちゃったの! もう、あたし死んじゃうかもしれない!」
 いきなりそんなこと言われて電話の向こうの彼氏も焦っただろう。しかし、その時は、本当に「死んじゃうかも」という思いがチラチラ頭をよぎった。風俗店で火災に巻き込まれて死ぬってのも、風俗ライターとしては似合うかもしれないけど、やっぱカッコ悪いよなぁ、なんて考えもした。でもその一方で、「しめしめ、これはいいネタだなぁ」なんて考えてたりもして、どうにも職業病ですな。
 そうこうしている内にも煙はどんどん部屋に充満してくる。喉が痛い。ふと口を押さえていたバスタオルを見ると、ススで真っ黒になっていた。バスタオルなしだったら、この真っ黒なススが体内に入ってきていたってことだ。そして、タオルで防ぎきれなかった分もあるに違いない。ちょっとゾッとした。温度も上がってきているようだ。 おいおい、消防車はまだかよ。遅すぎるぞ。店長が携帯で「まだですか? 2Fに閉じこめられてるんですよ!」と消防署に電話する。
 消防車のサイレンが聞こえるまで、とんでもなく長い時間がかかったような気がしたのだが、実際には、あとで調べてみたら15分もかかっていなかった。 煙の中から消防士が現れた時は、心底ほっとした。ベランダからハシゴで地上へ。しかし、僕らが降りているその横で、勢いよく放水が建物に浴びせられている。その飛沫がかかるのだが冷たいのなんの。僕はたまたま、その日に買ったばかりのカメラが鞄の中にあったから気が気じゃない。
 路上には、消防車が何台も集まり、そして野次馬の群れ。彼らには僕は、客だと思われてるんだろうなー。いや、僕は取材の人間なんですけどね、と、ワケもなく弁解したい気分になったりして。客でも行く癖に。
 さて脱出した僕らの顔は、ススで真っ黒。コントなんかでよくやる爆発の後で顔が真っ黒になる表現って、ホントなんだなぁと実感。
 火元は一階の中華料理屋で、なんと全焼。その煙は池袋駅にまで届いていたというから、かなりの大火事だったのだ。
 で、煙を吸ったということで、みんな救急車で病院へ。検査のために一晩入院。ま、誰も問題はなかったのだけれど。
 いやー、とんだ災難だったのだが、びっくりしたのは店が翌々日には営業再開、女の子たちも、しっかり働いていたという事実。みなさんタフですなぁ。


この体験のおかげ(?)で、数ヶ月後の歌舞伎町雑居ビル火災の時は、風俗ビル火災専門家としてあちこちの雑誌にコメントしたのでした。

んで、この時の体験を元にしたのが、モデルプランツの「よりによってこんなところで」という曲なのでした。

いや、ホント、火事は怖いです。未だにこういうビル火災のニュースを聞くとゾッとします。


 

*1:そんな風俗誌があったんですよ! すぐ休刊しちゃったけど…

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