ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「月刊OUT」1978年9月号から僕の雑誌人生は始まった

 結局のところ、僕は混沌とした情報の坩堝というものが好きなんですよ。エロもあり、ロックもあり、B級グルメもあり、真面目なニュースもあり。それらがごちゃ混ぜになっている状態が好きなんです。
 このblogにしても、意識的に色々なテーマに触れるようにしています。blogとしてアクセスを伸ばすなら、テーマを絞った方が、本当はいいんですけどね。

 僕はその「ごった煮」な面白さを雑誌に教えられました。僕が雑誌の面白さを最初に意識したのは、たぶん「月刊OUT」が最初です。1978年9月号。小学5年生だった僕は当時夢中になっていた「さらば宇宙戦艦ヤマト」の特集に惹かれて月刊OUTを手にしました。まだアニメージュが創刊したばかりの頃で、アニメを特集した雑誌というのは、すごく珍しかったのです。
「さらば宇宙戦艦ヤマト」の巻頭特集もキャラクター紹介でギャグを散りばめていたり、勝手に結末を想像したりのお遊び企画があったりして面白かったのですが、それ以外のページも埼玉県の小学生には刺激的すぎました。

 桑田次郎特集での夏目房之介のパロディ漫画、TBSのテレビ番組「日曜特バン」(アニメ、SF系を取り上げることが多かった)の収録現場ルポ、大人向け絵本の小特集、諸星大二郎の(いつもとは絵柄の全く違う)ブラックコメディ漫画、完全にデタラメな文章の星占い、レコードレビューのコーナーでは特撮やアニメ、SF関連のレコードに混じって、ストラングラーズタンジェリン・ドリームも登場。完全に深夜放送のりの読者コーナー「Fromお茶の水」のギャグセンスの高さや、同人誌紹介「ファンジン紹介ちゃん」には(小学生にとっては)お兄さん・お姉さんたちの世界を垣間見たような気がしました。
 そして特に印象的だったのが「世界のSFショー」というパロディ記事。「宇宙水爆戦」のメタルナミュータントとかC3POとかをコラージュして「世界の料理ショー」風に「SFのヒートケーキ・バイオニック風」を作るという内容なんですが「だめじゃないか、スティーブ! 変質と解体したなんか買ってきて!」なんて、後にSFを知った時に読み返してニヤリとするような台詞なんかもあったりして。
 それからブックレビューのコーナーには未翻訳のSFペーパーバック(ディックの「去年を待ちながら」とかノーマン・スピンラッドの「鉄の夢」とか)まで紹介してあったりして、つまり海外文化の匂いも漂っていたのですよ。これがたまらなかった。
 この頃のサブカルチャーってのは、どうしても舶来モノに対するコンプレックスが強かったような気がします。80年代のヒップホップ輸入くらいまでは、これは続いてましたね。これが払拭されたのは、90年代に入ってからでしょうか。この辺の話はいずれ書いてみたいと思いますが。
 まぁ、とにかくその頃に「OUT」の持っていた独特の匂いに僕はノックアウトされたのでした。そして次の10月号が、あの伝説の海賊版特集。そして11月号がOUT自身をパロディするような特集と、僕はずっぽりとOUTの世界にハマっていったのでした。
 特にさくまあきら堀井雄二による「OUT政府官報」や「月刊さくま」などのパロディセンスには強い影響を受け、中学生の時には自分で「ヤスダマガジン」というパロディ個人誌を作ったりしました。ああ、雑誌って面白いなぁ、将来、雑誌に関わる仕事をしたいなぁなんて思ったのもこの頃です。雑誌ライターとしての僕の原点は確実に「月刊OUT」にあると思います。
 あの時、「ヤマト」特集に惹かれて手にした「OUT」が純粋なアニメ雑誌だったら、その後の僕の人生もまた違ってたかもしれないですね。

 高校生になってからも(前にも書きましたが)、ヒカシュー巻上公一のコラム目的で買った「ウィークエンドスーパー」で赤瀬川原平平岡正明を知ったり、露出度の高いグラビア目的で買った「ボディプレス」でエロ業界の面白さを知ったりと、雑誌は常に新しい出会いを僕にプレゼントしてくれました。雑誌が「混沌とした情報の坩堝」だからなのです。

 だから雑誌がそうした特性を失いつつあるのは、すごく残念なんです。うーん、もうそうした雑誌は成り立たないのかなぁ。本屋+雑貨屋というコンセプトでヴィレッジバンガードが成功していたり、tumblrに魅力を感じる人がいっぱいいるという状況から見れば、そうした雑誌も受け入れられるような気もするんですが…。

 ま、そんなことを思いながら、ふとネットで最初に買った「月刊OUT」1978年9月号を発見して通販で購入してみました。今読むと、レイアウトがおおざっぱで、なんとも牧歌的な印象なんですが、やっぱり当時の熱さは伝わってきますね。ノスタルジー抜きにしても、面白いと思うんだよなー。

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