読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「AV黄金列伝〜ワタシは、どうして、あの場所に、いたんだろう。」(東良美季 イースト・プレス)

AV

 東良美季さんの新刊「AV黄金列伝」(イースト・プレス 文庫ぎんが堂)が出ました。
 新刊といっても、1999年に出た「アダルトビデオジェネレーション」(メディアワークス)の文庫化で、やったらめったら分厚い(600ページ以上)この本を文庫版としてスリムに再編集したもの、かと思ったら、文庫になっても580ページと分厚い、分厚い(笑)。
「ビデオ・ザ・ワールド」誌を中心に東良さんが1987年から2005年までに書いたAV女優、男優、監督のインタビュー集です。収録されているのは、秋元ともみ、速水健二、中沢慶子、太賀麻郎、山本竜二、ヘンリー塚本、栗原良、藤木美菜、平本一穂、清水大敬松本コンチータ、溜池ゴロー、笠木忍チョコボール向井南佳也森下くるみ小室友里、日比野達郎、白石ひとみ林由美香の20人。
「アダルトビデオジェネレーション」からは、加藤鷹、辻丸耕平、卯月妙子、風吹あんな、カンパニー松尾、高槻彰、中野貴雄、斉藤修、平野勝之、シンプルSANO、バクシーシ山下井口昇平口広美、豊田薫が外されて、太賀麻郎、笠木忍南佳也森下くるみ林由美香が加えられたということになりますね。外された部分も、いい原稿ばかりなので、ぜひ続編としてまとめて欲しいなぁ。


 さて、もう何度も書いていますが、僕がエロ系ライターになったきっかけのひとつが、高校時代に読んだ「ボディプレス」という雑誌です。1985年に浦和の古本屋で偶然手にしたこのエロ情報誌が僕の運命を変えました。裏ビデオやビニ本などの情報を掲載した、「オレンジ通信」「アップル通信」の類似誌ということになるんでしょう。でも、この「ボディプレス」はそれらの雑誌よりも圧倒的に面白かった。モダンなデザインや充実したコラムのパワーはもちろんですが、なによりもこの雑誌は「エロ業界」をテーマにしていたところが斬新でした。エロ本、エロビデオに出ている人はこんな人で、作っている人はこんな人たち。そういった向こう側の話が誌面に詰まっていました。そして、そこはやたらめったらに楽しそうだったんです。若さゆえのエネルギーが溢れているみたいで。それまで考えていたヤクザが作っているエロ本、ってイメージを僕はこの雑誌で覆されました。そして、エロ業界そのものに憧れを持つようになったのです。そして「エロ」いことを書くのではなく、「エロ」について書きたいという気持ちが膨らんでいきました。


 その「ボディプレス」の初代編集長が東良美季さんでした。東良さんは「モデルの肖像」という、今で言う企画モデル(当時は業界モデルと呼んでいた)のインタビューを書いていて、その文学的かつセンチメンタルな文章には痺れまくりました。AV女優のインタビューをこんな風に書くことが出来るのかと驚き、東良美季という女性みたいな名前を、僕はしっかりと覚えました。
 ちなみに後に「SPA!」で東良さんに初めてお会いした時は、「ボディプレス」創刊号を持参してサインしてもらいましたよ!


 その後、東良さんはAV監督に転身し、さらにライターとしてエロ雑誌に戻ってきました。その文章は、相変わらず素敵で、1996年に永沢光雄さんの「AV女優」が各界で話題になった時などは「永沢さんより、東良さんのインタビューの方がいいのに!」なんて思ったものです。だから少し後に「アダルトビデオジェネレーション」が発売になった時は、本当にうれしかった。


 そして「ボディプレス」でエロについて書くということの面白さを知った僕は、念願かなってエロ系ライターになったわけです。
 ただ、東良さんとは全く違ったドライな文章を志向しました。極力、文学的な表現を避けた文体を意識しました。それは東良さんと同じスタイルだったら、絶対に勝てないと思ったからです。


「AV黄金列伝」に収められている文章は、AV女優や監督のインタビュー集だと思って、扇情的な部分やショッキングな事実を期待すると裏切られるかもしれません。いや、もちろんそうした要素もあるのですが、東良さんはそこを興味本位でことさらにかきたてることはしません。それはあくまでも物語の中の必然性のある一要素でしかないのです。そう、「AV黄金列伝」の文章は、インタビューというよりも、青春小説のようなのです。甘酸っぱくてほろ苦い物語。
 収録されているインタビューはずいぶん前の物が多いため、この当時とAVを取り巻く環境はかなり変わっています。青春小説のようだと書きましたけれど、みんな熱くて青臭いことを言っています。それが許された時代だったんだな、とも思ってしまいます。
 だからこそ、現在のAV関係者にこの本を読んでもらいたい。AVを作るのが、面白かった時代の空気を知ってもらいたい。だって、みんなつまらなそうなんだもん。エロを作るって、もっと面白いものじゃないかったっけ?


「AV黄金列伝」のあとがきのタイトルは「雲を掴もうとしていた」です。今、僕らはまだ、雲を掴もうとしているのでしょうか。

Amazon 【最大70%OFF】ミュージックセール