ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

ライターになりたいという若者がいたら

 以前紹介した「日の丸電子書籍はなぜ敗れたのか」の著者、鈴木秀生氏のBlog「本とeBookの公園」「文章で飯を食っていくということ」というエントリーを読んで、うーんと唸ってしまいました。

 若者に「電子書籍業界に入りたいんですけど」と言われたことをきっかけに、電子書籍業界の厳しい現状、そして「書く」仕事についての現状と未来について考察した文章です。
 かつては週刊誌では1ページの原稿料が3~5万くらいだったのが、ネットメディアでは1万2千~1万5千円になっているという佐々木俊尚氏の記事を引用し、いや、ネットメディアでは1万2千円もなかなか出せません、とさらに厳しい現状を突きつけてくれます。

 いや、ホント、ネットの原稿料は安いです。ついこの間まで「出版業界って何十年も原稿料上がってないんだぜー」なんて言って笑ってたのが、ここ数年は上がるどころか下がる一方。しかし、それよりも安いのがネットメディアの原稿料なのです。でも聞いてみると、僕はキャリアがある分だけ、まだ少し考慮していただいているみたいで、若い子はもっと安かったりしているようです。
 特に厳しいと感じたのは鈴木氏のこんな二つの文章。

IT業界的なコスト感覚で考えられると、お金をgoogleに払うのとライターに払うのとどっちが得かの二者択一の議論になってしまいがち。残念ながら、実績数値が明確に出やすいネットの世界においてはコンテンツに払うよりネット広告に払う方が効率的かつ確実だと考える人が依然として多数派です。

昔から「売文家」という言葉がありますが、現在は「文」というよりも「集客力」を売る文章家といった表現が実態に即しているのかもしれません。

 発注者にとっての文章の意味が、大きく変わってきているのですね。
ネットメディアは基本的には無料であり、広告やアフェリエイトで成り立っているわけですから、この辺に関してはシビアです。

 僕も「ネットは原稿料安いんだよなー」としょっちゅう嘆いていますが、それもしょうがないかなとも思っています。だって、どこのネットメディアも内情は大変そうですからねぇ。
 ただ、これでは生活できないというのも現実であります。僕などは扶養家族三人抱えてるし、仕事場も維持しないといけないわけで、この先、どうするんだろうと考えると気が滅入ります。
 原稿として書いている量自体は減っていないのに、単価が下がっているために、収入としては減ってしまう。ならば書く量を増やすしかないのですが、もう体力的にそれは難しそう。本来ならば質を高めることで単価を高めていくべき年齢なのですが……。

 僕は古本屋をめぐって古雑誌を漁るのが趣味というくらいで、紙の本に対する愛情は人一倍強いと思うのですが、それでも書き手としては、もう紙よりもネットに書きたいという気持ちの方が大きいのです。少しでもたくさんの人に読んでもらいたいということと、書いたものは早く読んでもらいたい。この二つの点で考えれば、ネットは紙よりも数倍優れているし、ネットに書くことに慣れてくると、紙の雑誌に書くことが、ずいぶん野暮ったく感じられてしまうのです。内容も、文字数もネットの方が制限が緩く、好きなことを好きなだけ書けることが多いのです。
 もっともっと仕事としてネットに書きたい、そんな気持ちになっています。

しかし前述の通り、ネットで書いていくだけでは生活するのは難しく、紙の雑誌にも平行して書いていくことで何とか成り立っているというのが現状です。そして、紙の雑誌はどんどん減っているのです……。

 鈴木氏は

「大丈夫、電子書籍専業でずっと食べていけるよ」と20代の未経験者にアドバイスするほどの確信はまだないというのが本音です。

と書いています。
 僕も10年ほど前には「なんでこんなに楽しくて稼げる仕事なのに、みんなフリーライターにならないんだろう」と本気で思っていたけれど、今はライターになりたいという若者がいたら、「悪いことは言わないからやめておきなさい。文章書きたいなら、別に本職を持ってBlogとかで書けばいい」とアドバイスするでしょうね。
 鈴木氏は「まだ」と言っていますが、僕はライターという職業がこの先、またよくなるかもしれないという展望は持てていません。

追記:とある「ライター募集サイト」を見てみたら、「初期報酬:100文字50円~」「初期報酬:100文字17円~」と書いてありました。2000文字かいて千円? 後者なら340円? 
こりゃ、確かに1万2千円どころの話じゃないですね……。

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