ダリブロ 安田理央Blog

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「世界が100人のAV女優だったら」(大坪ケムタ・編 扶桑社)

 現在、AVライターとしては第一人者である大坪ケムタ、初の単行本「世界が100人のAV女優だったら」が発売になった。

飯島愛ほかAV女優告白本が売れるのはナゼ?市井の人々も興味津々の「性のカリスマ」の実像を、業界初の100人アンケートで炙り出す“統計ノンフィクション”。ごくフツーのカワイコちゃんが、なぜ業界の門を叩いたかの真相がわかる!? 森下くるみ南波杏麻美ゆまら人気女優の特別インタビュー付き。 (Amazon 内容紹介より)


 AV女優に関する本は、それこそ星の数ほどある。飯島愛の「プラトニックセックス」に代表される告白・自伝系、永沢光雄「AV女優」や中村淳彦「名前のない女たち」のようなインタビューやルポ。しかし、これらの本はAV女優という職業を妙にポジティブなものとして描いたり、逆に必要以上にネガティブに描いたりしている部分が大きく、業界に携わっている人間としては、少々違和感を感じることが多い。これはAV女優モノに限らず、エロ関係の著作全般に言えるのだが、どうしても著者のエロ観が色濃く出てしまうのだ。己の欲望と本能に密接な関係がある「エロ」に関しては、客観的な立場を取ることができる人間など、誰もいないということなのか。

 大坪ケムタが、AV女優100人のアンケートを集計した結果から、できるだけ「リアルな」AV女優の姿をあぶりだそうとしたのが本書である。
「学校のクラスではどんなタイプの女の子でしたか?」という質問には「騒がしかった、明るい、元気、リーダー的」が19%、「生徒会役員、優等生」が16%、「不登校」16%、「普通、真面目」13%、「不良」13%、「目立たない子、地味、大人しい」11%という結果がでている。これ、普通のクラスそのままではないだろうか。
「ハマっている趣味があれば教えて下さい」という質問には、「スポーツ(ジム、スノボ、サーフィン)が8%、「映画、DVD鑑賞」が7%、「テレビゲーム」7%、「エステ、ヨガ、足ツボ」7%、「旅行」5%、「アロマ、香水集め」5%…。ごく普通のOLの回答と全く変わらない。AV女優と聞いて、一般的にイメージするホスト遊びのような回答はゼロだ。その普通さには、拍子抜けするほど。
 確かにAV女優には精神的に不安定な子もいる。精神が荒廃した子もいる。セックス依存症と思われる子もいる。しかし、それはAVをやっていない普通の子でも同じではないか。若干、その比率は高いかもしれないが、取り立てて特徴といえるほどの差はないのではないかというのが、僕の実感だ。つまり、すべての18歳以上の女性は、AV女優になる可能性があるということだ。特定のパーソナルの子だけがなるわけじゃない。

 AV女優という職業に、過剰な思い入れを期待している人が本書を読むとがっかりするかもしれない。ここにはドラマはない。ただ「普通の」現実がある。しかし、本当にAV女優という職業について知りたいと思ったなら、まずこの本を読むべきだ。

 ところで、このあんまりなタイトルについては、大坪は最後まで抵抗していたことを彼の名誉のために書いておこう。「世界がもし100人の村だったら」って、6年も前の本なんだけどなぁ…。

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