ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

続おやじびでお 第18話 パソコン通信時代のアダルト事情

 今やアダルトメディアの中でも、最もポピュラーなものとなっているのがインターネットですが、日本で個人が使用できるようになったのが1994年。一般的に広まったのは2000年以降という感じでしょうか。
 しかし、インターネット以前にもネットは存在していました。それがパソコン通信です。電話回線を使ってデータをやりとりするという意味ではインターネットと同じですが、もっと閉じたネットワークで、基本的には会員しかアクセスできません。また回線も遅かったので、文字情報が中心でした。

 パソコン通信は85年にアスキーネット、87年にニフティ・サーブがサービスを開始。草の根BBSと言われる個人運営のサービスも増えていき、パソコンに強いマニア中心に、少しずつ持ち上がって行きました。
 筆者がパソコン通信を始めたのは93年。当時、初めてのパソコンであるマッキントッシュLC520*1を購入したのもパソコン通信がやりたいというのが最大の目的でした。
 その時に参考にしたのが、当時SMスナイパー誌に館淳一*2が連載していた「パソコン通信SM術」。いち早くパソコン通信に精通していた館氏がSMスナイパーの読者向けに解説したコラムです。そのため、筆者がまず最初にアクセスしたのは、ニフティなどの大手サービスではなく、「Cafe25」というSM専門の草の根BBSでした。


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パソコン通信SM術」の筆者登場回。まだ27歳だったのかー(笑)。

 そうパソコン通信時代でも、しっかりとアダルトな使われ方をしていたんですね。94年に発売された三才ムック「裏パソコン通信の本」を見てみると、「H画像」「美少女」「SM」「エッチ」「ゲイ」などとジャンル分けされたアダルト系草の根BBSが50以上リストアップされていますし、エロはご法度のはずのニフティの中にもエロ画像を見ることができる会議室がある、なんて記事も掲載されています。
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「裏パソコン通信の本」(三才ムック 1994年)

 といっても、この頃の通信速度では、一枚の画像をダウンロードするのに何分、いや何十分もかかるのでした。しかもパソコン通信は従量制*3で別途電話代もかかるため、一枚の画像を入手するのに、えらい金額が必要になったりしてたのですね。
 なので、パソコン通信時代は、アダルトと言っても画像よりも文字による情報が中心になっていましたね。
 前述の「Cafe25」も、SMの体験談や妄想、SM小説などが中心で、むしろメンバー同士の交流の方が重視されていました。

 風俗情報に強かったのが「HEAVEN」。89年に開設し、95年には会員数が1万5千人を超えていたというから日本でも有数の規模の草の根BBSでした。今では2ちゃんねるの風俗板や各種風俗サイトなどで、風俗利用者の生のレポートを読むことができますが、当時はかなり画期的でした。風俗情報といったら、週刊誌やスポーツ新聞で風俗ライターによる(若干信憑性に欠ける)記事しか無かったわけですから。

 また、ニフティの中でも、ホームパーティ*4と言って、ユーザーが個人的に開設できる掲示板があったのですが、そこでもアダルト情報は盛んに交換されていました。というか、筆者などは、そうしたクローズドのホームパーティばかり回っていて、公式のフォーラムなどはほとんど覗きませんでしたね。

 そうしたホームパーティの中のひとつに「谷間の百合」がありました。巨乳と風俗をテーマにしたホームパーティで、そのメンバーはかなり濃いマニアばかり。新幹線で金津園や名古屋の風俗へ遊びに行く者、64ヶ国の女性とやったと豪語する者、ソープに日参する者、大学生のくせにちょんの間に入り浸る者と強者揃い。当然、そこで交わされる会話も雑誌などでは読むことのできないディープなものでした。
 その主催者が、後に日本で最初のインターネットのアダルトサイト「Tokyo Topless」*5を開設し、巨乳評論家として活動することになる工藤隆男です。
「Tokyo Topless」が誕生したのが95年。そしてほぼ同時期にKUKIが「K.U.K.I.TOWER」*6をスタートさせます。こうして、インターネットは急速に普及していき、パソコン通信のユーザーもどんどんと移動をはじめます。
 初期のインターネットでは、海外の無修正画像が見られる! というのが大きなウリになっていたのを思い出しますね。今よりも、無修正がもっと貴重な時代ですから、それは魅力的な話でした。当時はインターネットでも速度が遅いから、やっぱり一枚の画像を見るにも相当な時間がかかったりしてましたけど。

 97年頃には、すっかりパソコン通信は過去のものになってしまい、アスキーネットなどの大手サービスも活動を終了。ニフティもインターネットに直接繋げられるようになり、徐々にインターネットのサービスへと移行していきました。
 現在のネットユーザーの大半は、パソコン通信なんて言葉も知らないでしょう。いや、当時もほとんどの人は、パソコン通信の存在も知らなかったんですよね。一部のパソコンマニアがやるものという印象でしたし、今のネットよりもずっとアングラ色が強かったのです。でも、そこがまた魅力でもあったんですよね。
 たとえエロ画像をまともに見られないとしても、風俗やら裏ビデオといった、大っぴらには言えない趣味の同好の士が集まってそんな話題に没頭できる。それだけで十分刺激的でしたし、感動しました。

 しかし、もうパソコン通信って、二十年近く前の話になっちゃうんですね。考えてみるとこのパソコン通信時代に知り合った人も多いし、今の自分の活動の基礎が出来たとも言えます。改めて、パソコン通信に感謝!

TENGU(ジーオーティー)2011年9月号掲載。mixiを始めた時には、「あ、ニフティっぽいな」と思ったものですが、そのmixiすらも過去のものという印象が。ネットの世界の移り変わりのスピードは怖いほどですね。

*1:1993年にアップルから発売された13インチモニター一体型。CD-ROMドライブ内蔵でマルチメディア志向と言われた。CPUは25MHz、ハードディスクは160MB。当時25万円くらい。ちなみに当時の回線速度は2400bps。現在筆者の光フレッツ環境と比べると、なんと約3万分の一のスピード?!

*2:1975年デビューのベテランSM作家。「パソコン通信SM術」をきっかけに筆者は館氏と知り合い、連載にも登場することに。

*3:ニフティだと1分10円。プラス電話代なので、ちょっとハマると月に何万円もかかってしまった。95年からは23時~翌日8時の間だけ電話代が定額というテレホーダイ制度が出来たため、アクセスは深夜に集中。

*4:月500円で誰でも開設できる個人掲示板。筆者も「ステレオタイプHP」というのを開設し、結構人気があった。さらに高機能のパティオもあった。

*5:インターネット黎明期のアダルト系では最も有名なサイトで、アクセス数ランキングでは常に上位だった。実は筆者も初期の立ち上げメンバー。

*6:現在は、総合アダルトサイトXCITYに発展している。

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