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ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「晴れた空」半村良

 僕は、ここ数年小説を読んでいません。読むのはノンフィクションばっかり。あと映画もドラマも見ません。我ながら、つくづくフィクションに興味がないんだなぁと思います。漫画くらいか、フィクションで好きなのは。あとは官能小説か、あれはあんまりストーリーないけど。
 でも、昔はたくさん映画も見てたし、小説も読み漁っていました。一番好き、というか影響を受けたのが半村良でした。
 最初はアレです。角川映画の「戦国自衛隊」。あの頃の角川映画はすごいパワーがありまして、映画化された作家の小説を小学生もむさぼり読んでたんですよ。CMでガンガンやるし、本屋に行けば角川文庫が派手にフェアをやってるし。横溝正史森村誠一大藪春彦片岡義男山田風太郎…。今、考えれば、小学生が読むのはどうかと思うようなラインナップですが、みんな角川映画が教えてくれたのです。そんな中で僕が一番衝撃を受けたのが半村良でした。
 映画化された「戦国自衛隊」自体は、意外にそっけない中編で、まぁ、こんなものかという感想でしたけれど、角川文庫で発売されていた他の作品は小学生には毒が強すぎました。「産霊山秘録」「石の血脈」、そして「黄金伝説」「英雄伝説」「楽園伝説」などの伝説シリーズや「闇の中の黄金」などの嘘部シリーズ…。次々と読み漁りました。講談社文庫から出ていた「妖星伝」がとどめでした。土着的でおどろおどろしいムードと、物語の根底に脈々と流れる弱者の悲壮な哲学。しかし何よりも、作者の豊富な転職経験を活かした様々な職業のリアルな描写が、大人の世界に憧れる小学生にはたまりませんでした。ちゃんと学校に行って、まっとうな会社に就職するというコースを全く考えもしなかったのは、たぶんそのせいです。早く社会に出て働いて人生経験を積みたいと、知らず知らずのうちに刷り込まれたのだと思います。
 ま、そんなわけで、大人になってからも半村作品は読み続けていて、この「晴れた空」も最初の単行本が出た91年時に読んでいたのですが、最近、祥伝社で文庫化されたので、読み直してみたのです。那須旅行のお供として。
「晴れた空」は東京大空襲で家族を奪われ孤児となった少年たちが、激動の時代を生き抜いて行くという大河小説です。最後に重要キャラクター数人が悲劇的な結末を迎えるものの*1、基本的には非常に前向きで、半村作品にありがちな「人間が生きていくことのやるせない哀しみ」は、あまり感じられません。読後感も爽やかです。実はその分、当時読んだ時の印象は薄かったんですけどね。
 さて、14年ぶりに読み返してみたのですが、ああ、小説というものは読み手の状況によって受け取り方が大きく変わるものだなぁと実感しましたよ。もうね、読んでいて目頭が熱くなりっぱなしなんですよ。戦災孤児の話ですから、当然のごとく親子の情についての描写が幾度となく登場するんですよ。もう、そこでダメです。親を失った少年たちの思い、そして子供を残して死んでいかねばならなかった親の思い。14年前には、スルーしていたとこで、ひっかかりまくり。自分が親という立場になって読むと、もう感情移入しちゃって、泣けて泣けてしょうがないんです。
 小学生の頃にたくさん読んだ小説を、読み返してみようかなと思いました。当時は生意気にもわかったつもりになってたけど、実際は半分も理解してなかったんだろうなぁ。

*1:ネタばれになっちゃいますが、とても素敵な女性が、終盤で大変すさまじい堕ちっぷりを見せます。今、読むと、そこに強烈なエロチシズムを感じてしまい、何度も読み返してしまいました。これも昔、読んだ時は感じなかったことだなぁ。

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