新刊『日本AV全史』(ケンエレブックス)が発売になりました。タイトル通りに日本のアダルトビデオの全歴史をたどる一冊で「日本のAVの歴史教科書」を目指して書きました(笑)。
日本のAVの歴史は、1981年から始まるというのが定説なのですが、映画が誕生した18世紀からブルーフィルム、お色気映画、成人映画、そしてビニール本に至る流れも前史として書いています。
黎明期となる80年代前半、市民権を得ていく80年代後半、オルタナティブな作品が続出した90年代前半、インディーズ旋風が巻き怒る90年代後半、次々と主役が交代し、AV女優が憧れの存在となっていく00~10年代。そして出演強要問題からの適正AV、昨年のAV新法設立まで、業界の動きを中心に綴りました。
雑誌などでは特集はよくやっているし、ムックなども出ているので意外に思われるかもしれませんが、実はAVの歴史について書かれた書籍はほとんどなく、全体の歴史となると藤木TDCさんが書いた『アダルトビデオ革命史』(幻冬舎新書)一冊しか見当たらないんですね。この本も80年代の流れが中心ですし、2009年発売なので当然10年代以降の動きは書かれていないわけです。
つまり現在までのAVの歴史をまとめた書籍は、本書のみということです。
AV生誕30年にあたる2011年の時は、多くの雑誌で特集が組まれましたし、僕が監修者となり30社以上のメーカーが参加したプロジェクト「AV30」のような動きがあったのですが、40周年にあたる2021年は、そうしたイベントもありませんでした。
AV40周年のタイミングで、歴史をまとめておきたいなと思っていたところ、ケンエレブックスさんから本書の企画を打診され、渡りに船と執筆を開始したのです。まぁ、結局なんだかんだで時間がかかり、生誕40年の2021年から2年遅れての刊行となってしまいましたが(笑)。
あくまでも業界の動きを中心に書いているので、AV女優・監督個人についてはあまり触れられませんでしたから、重要な存在なのに、なんであの人が登場しないの?という感想を持つ人も多いと思います。できるだけ客観的な視点から書こうと意識はしていましたが、それでもやはりこれは安田史観でのAV史です。個人的に思い入れの強い90年代に関してはどうしても濃くなってしまいます。ゴールドマン監督への記述は多すぎると自分でも思います(笑)。
他の方の視点から書けば、また全然違うAV史が生まれるでしょう。ぜひ読みたいので、色んな書き手にどんどん書いて欲しいんですよね。
どんなものにも文化はあり、歴史があるというのが僕のスタンスです。単なる性欲のはけ口だと思われているAVにだって、40年の歴史の中で様々な変化がありました。そしてそこには、多くの人たちが切磋琢磨を続けてきた文化としての積み重ねがあります。この本を通して、少しでもそれが伝わればいいなと思っています。
巻末の36ページに渡る長大な年表を眺めるだけでも、その歴史の重さは感じられると思うんですよね。
一部で話題となっておりますが『日本AV全史』は、装丁に凝りました。デザインは(Ya)matic studioこと野田大和さん。実は本編中にもゴールドマン監督の初期作品における先鋭的なデザインワークを担当したデザイナーとして名前が登場しているんですが、以前から単著の装丁をやってもらいたいなーと、ずっと思っていたんですね(1991年にゴールドマンのレーベルから発売した僕のバンド、モデルプランツの2枚のシングルCDは彼のアートワークでした)。
この電書時代において、紙の書籍を買ってもらうには、ブツとしての魅力が必要だというのは常々考えていて、そのひとつの答えとして野田さんのデザインがありました。昔からギミックを考えるのが好きなんですよ、野田さん。その野田さんに好き放題にやってもらいたかった。
これはケンエレブックスという版元と、五十嵐さんという編集者だったからこそ実現できたと思います。こんな装丁、他の出版社じゃ、なかなかゴーが出ないよ(笑)。
VHSビデオカセットをイメージした表紙とカバー、そして小口(角度によって絵が変わる)やページ下のパラパラ漫画、シール裏に至るまでギミック満載。これはぜひ実物を手にしていただきたい。楽しんでいただきたい。
僕がAVについて初めて原稿を書いたのは1987年。当時、編集をしていたアイドル雑誌のAVコーナーを担当したのがきっかけでした。それから36年間ずっとAV関係の原稿を書き続け、時には制作側の立場としてAVに関わってきました。それが今、こういう本を出せるというのは、書き手として本当に幸せだな、と思うのですよ。2019年の『日本エロ本全史』(太田出版)と本書を書けたことで、もう思い残すことはないです。
……とは言いつつも、次にも楽しそうな本の企画が進行中なのですが(笑)。
先日の発売記念イベントでは、某メーカーさんが大量に購入してくださいました。社員に配るそうです。AVメーカー様、業界関係各社様、社員教育教材としていかがですか?(笑)。色々黒歴史も書いちゃってるから怒られそうではありますが……。
というわけで安田理央、渾身の一冊、『日本AV全史』、ぜひお買い求めくださいませ!
↑こちらから買っていただくと、僕にアフェリエイトが入りますので、よろしければ(笑)。
ちなみに『日本AV全史』発売記念ということで、『痴女の誕生』『巨乳の誕生』『日本エロ本全史』という太田出版での3冊の電子書籍が、なんと50%オフという出版社の枠を超えたセールが行われております。2/16まで! この機会にこちらもぜひお読み下さい!
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