ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

続おやじびでお 第12話 アダルトアニメとAVの関係

くりいむレモン」とつぶやくだけで、甘酸っぱい気持ちになる40代も多いことと思います。今では珍しいことではありませんが、アニメの美少女キャラがエロい姿を見せてくれるなんて、あの当時はありえない衝撃でしたよね。

 日本のアダルトアニメの歴史というのは、意外に古いのです。その第一作と言われているのは、なんと1932年(昭和七年)に制作された「すヾみ舟」*1です。木村白山という画家が、、35ミリのモノクロフィルムに一コマずつ撮影して、たった一人で制作したというもの。3年もかけて作ったのに、完成と同時に摘発されてしまったとか。なにしろ時代が時代ですからね。
 その後、手塚治虫による「千夜一夜物語*2などセックス描写のある大人向けアニメが作られたりもしましたが、本格的なアダルトアニメとなると、1984年の「雪の紅化粧 少女薔薇刑」(ワンダーキッズ)*3が最初ということになるでしょう。人気エロ劇画家・中島史雄原作によるこの作品は、やはり劇画タッチで、ロリータアニメとうたわれていたものの、当時のオタクの求めていた物とは、ちょっと違いました。
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雪の紅化粧 少女薔薇刑


 このアダルトアニメ黎明期*4は、かなり試行錯誤がなされていて、タレントの似顔絵(?)アニメ「女子大生・聖子ちゃん」「オフィスレディー明菜ちゃん」や、アダルト人形劇「三蔵法師」「羅生門」なんて怪作も続々と作られていました。
 当時は夜中にビデオソフトを紹介する番組があって、この辺の作品もちょこちょこテレビで放映されていたんですよね。ええ、もちろん熱心に見てましたよ、僕は!
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サティスファクション

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オフィスレディー明菜ちゃん



 そうした状況の中、フェアリーダストというメーカーが「くりいむレモン」を制作します。「くりいむレモン」はシリーズ名で、それぞれの作品は独立したストーリー。第一弾の「媚・妹・Baby」は兄妹物で、第二弾の「エスカレーション」はレズ物、さらに「超次元伝説ラル」「POPCHASER」はSF物といった具合に、かなりバラエティに富んだラインナップになっていました。
 初期のアダルトアニメの劇画タッチとは違って、可愛らしいいわゆるアニメ絵で描かれた「くりいむレモン」は80年代のオタクのハートをがっちりキャッチ! 実売一万本以上という当時としては桁外れの大ヒットを記録したのでした。
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くりいむレモン 媚・妹・Baby
 中でも第一作のヒロイン、亜美の人気はすごく、「亜美・AGAIN」「亜美III 」と次々と続編が作られ、1986年には「旅立ち ~亜美・終章~」*5として劇場公開までされました。
 さらに亜美がDJを務める「今夜はそっとくりいむレモン」なんてラジオ番組は作られるわ、PCゲームにはなるわと、マルチメディアに展開。この辺は、今の美少女ゲーム系の先駆け的な動きだと言えますね。

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 しかしこの頃は、当然まだアダルトアニメやゲームの専門誌*6なんてありませんから、一般AV誌に記事が掲載されたりしてました。手元にあるAV情報誌ビデパル1985年2月号でもアダルトアニメの小特集が組まれていて、「くりいむレモン」3、4作の紹介(設定資料や絵コンテを掲載)や、制作会社のワンダーキッズ、フェアリーダストのインタビューなどが掲載されています。制作費が2500万円(!)とか、一タイトルにかかるスタッフ数は100人とか、実写AVとは全く次元が違いますねー。こりゃ、確かに1万本とか売れないとダメな世界かも。
 正直、あんまりアニメ絵エロが好きではない僕なんかも、この頃はいちおう「くりいむレモン」とか、ひと通り見てました。いや、本当は高校生だから見ちゃいけないんだけど(笑)、この時期は「くりいむレモン」は男子の常識というほど浸透してましたからね。まだ、実写AVもメジャーなアイドルが出てくる前だったから、こっちの方が受け入れやすかったんでしょうね。

 その後、アダルトアニメは実写AVとは全く違った道を行き、90年代後半以降は、ほとんどが漫画やゲームのアニメ化になり、オリジナル作品は少なくなりました。恐らくユーザー層も、実写AVとは重なっていないでしょう。
 しかし、そんな実写AVとアダルトアニメの奇跡のハイブリッド作品をご存知でしょうか? 2004年に作られた「痴漢十人隊 THE ANIMATION」がそれです。なんとあのソフト・オン・デマンド~ナチュラルハイの人気シリーズ「痴漢10人隊」をアニメ化した物なんですね。アニメ本編に加えて実写編が入っているのがご愛嬌。当時の広報さんが、「アニメだと女のコのパブを気にしなくていいのが嬉しいですね」なんて言ってたのが印象深いです。
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痴漢十人隊 THE ANIMATION 1 ~獲物たちの黄昏~


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 アダルトアニメやゲームを実写AV化というのは割と多いのですが、AVをアニメ化したのはこれくらいでは……、と思ったけれど、いやいや、まだありましたよ。
 90年代にマニア向けのくすぐりビデオで一世を風靡した松下一夫氏が、その稼いだ金を投入して長年の夢を実現させたというアニメ版「女スパイ拷問 敵の基地は女体拷問所」。もともと「ルパン三世」の峰不二子くすぐりシーンに影響を受けて、くすぐりビデオを撮り始めたという人なのでアニメ版を作るのは、確かに原点回帰なのでしょうが、残念ながらかなり稚拙な出来になってました。「ビデパル」のインタビューでもありましたが、制作費がとんでもなくかかる世界ですからね、ちょっとやそっとの資金じゃまともな物は作れないのでしょうね。それにしても、この作品、定価が3万8千円になっているのが、ちょっとすごい。定価で買った人、いるのでしょうか?
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TENGU(ジーオーティー)2011年3月号掲載。80年代のアダルトアニメは、ぶっとんだ内容の物が多く、どうしてこんなものができたんだろうと考えると眠れなくなります。

*1:摘発により原盤は押収されたが、密かに流出したらしい。当時来日したウォルト・ディズニーが密かにこれを見て絶賛したという伝説もある。

*2:手塚治虫の制作総指揮で作られた劇場用アニメ。声優として青島幸男岸田今日子大橋巨泉立川談志などが参加。その後、手塚治虫は「クレオパトラ」「哀しみのベラドンナ」と立て続けに成人向けアニメを作った。

*3:短編2話を収録、アングラ色が強く強引な展開で一部でカルト扱いされている。制作のワンダーキッズは当時スネークマンショーのビデオなども制作していた。

*4:この頃「ドリームハンター麗夢」「サティスファクション」(原作・あがた有為)「青い体験」(原作・羽中ルイ)などのアニメを作っていたオレンジビデオハウスは、V&Rプランニング以前に安達かおるやカンパニー松尾が務めていたテレキャスジャパンの小会社だった。

*5:同時上映は「プロジェクトA子」。なお終章とあるが、この後も亜美シリーズは延々と作られた。

*6:初のアダルトゲーム専門誌「パソコンパラダイス」(メディアックス)が創刊されたのは1992年

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