ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「晩酌パラダイス」(ラズウェル細木 幻冬舎)

そして最後はラズウェル細木の「晩酌パラダイス」

これは漫画ではなくエッセイ集ですが。
僕は、ほぼ毎晩のように「酒のほそ道」を読みながら晩酌するのが習慣という熱狂的なラズウェルファンなのです。主人公の岩間宗達=ラズウェルさんの呑兵衛としての姿勢には、共感しまくりなんですよね。正に飲みの師匠。「酒のほそ道」で酒の楽しみ方、マナー、そして美味しいツマミなど、ずいぶん学びました。
 そんな「酒のほそ道」哲学がギュっと詰まったこの本、面白くないわけがない。特に今回のメインテーマである自宅での一人晩酌の楽しみ方など、もうたまりませんね。思わず読んでて、黒糖焼酎が飲みたくなって買ってきちゃいましたもんね。
 んで、実は縁がありまして、ラズウェルさんとお知り合いになれまして、一緒に飲んだりできたというファンにとってはたまらなく幸せな状態なわけですが、なんと本書に、僕も登場してるんですよ。サッポロ一番しょうゆ味ファンの「ダリオ氏」としてと、京王駅弁大会マニアとして。はい、この帽子かぶってるおっさんが(たぶん)僕ですね。

いやぁ、もうファン冥利につきるといいますか、うれしくてニヤニヤしちゃいましたよ。

「メガネっ娘凌辱大戦」(松平龍樹 マドンナメイト文庫)

 この意味不明のタイトルと、ちょっと僕の琴線に触れた(笑)表紙イラストに引かれて店頭で手にとったのですが、これはすごいです。怪作としか言いようがない。


以下、公式サイトより内容紹介です。

「すべてのメガネっ娘を我が手に」
大隊指揮官の号令一下、前世紀の亡霊たちが闇を疾駆する。
戦慄のメガネっ娘連続凌辱劇、ここに開幕。
拘束術式○号開放。

黒髪に白い肌、巨乳でメガネっ娘の美人司書は、
謎の組織による残虐な辱めを受けることに……。
「すべてのメガネっ娘を我が手に」
大隊指揮官の号令一下、前世紀の亡霊たちが闇を疾駆する。
戦慄のメガネっ娘連続凌辱劇、ここに開幕!!!


すいません、全然意味がわかりません。恐る恐る購入してみたのですが、読んでもさっぱり意味がわかりませんでした。
まず冒頭の「序章  聖戦布告〜我が闘争〜」からして、

諸君、私はメガネっ娘が好きだ。
諸君、私はメガネっ娘が好きだ。
諸君、私はメガネっ娘が大好きだ。

メガネをかけた女の子が好きだ。
メガネをかけた女子高生が好きだ。
メガネをかけた女子中学生が好きだ。
メガネをかけた女子小学生が好きだ。
メガネをかけた女子大生が好きだ。
メガネをかけた女子図書委員が好きだ。


ってな文章が延々7ページも続くわけですよ。おまけにどうも誤植らしく全部「メガメ」になってるというのはご愛嬌(笑)。

いや、まぁ、その後のストーリーらしきものが始まっても、全くもって意味不明のシュールなシーンの連続。
いわゆるラノベ的な文章なんでしょうかね。

後で調べてみると、どうやらこれらは全て「HELLSING」「屈折リーベ」「超時空眼鏡史メビウスジャンパー」「R.O.D―READ OR DIE」といった作品のパロディになっているらしいんですが、元ネタを知らない私には、もう何が何だか。
作者の松平龍樹氏は、かつて「エヴァンゲリオン」ネタの「発情期 ブルマ検査」で第6回日本トンデモ本大賞を受賞した前科のある人。そう考えると不自然ではないんですが、これが二次元ドリーム文庫じゃなくて、官能小説の老舗マドンナメイト文庫から出ているところに唸りましたね。これからは官能小説も、こうしたセンスを持っていないとダメという時代になるのでしょうか。
 いやぁ、最近、また団鬼六先生を読み返して、昭和なエロはいいなぁと再確認していたところだったので、余計にショックがデカかったです。

「生きる技術は名作に学べ」(伊藤聡 ソフトバンク新書)

「生きる技術は名作に学べ」は「No1 in HEAVEN」Vol.2にも出演してくれた「空中キャンプ」の伊藤聡さんの処女著作で、世界文学の名作についてのガイドブックです。
 とりあげられているのはカミュの「異邦人」、ヘッセの「車輪の下で」、トゥルゲーネフの「初恋」、アンネ・フランクの「アンネの日記」、ヘミングウェイの「老人と海」、モームの「月と六ペンス」、マーク・トウェインの「ハックルベリィ・フィンの冒険」、スタンダールの「赤と黒」、ジョージ・オーウェルの「一九八四年」、トーマス・マンの「魔の山」の10作品。
 まえがきで伊藤さんが書いているように、これらの作品はタイトルは知っていても、実際には読んだことがないという人がほとんどでしょう。僕もこの中では「老人と海」しか読んだことがありません。それも高校入試の時に面接で「どんな本を読みますか?」とたずねられた時にヘミングウェイと答えるのが、かっこいいかと思って慌てて読んだだけです。だから今はもう内容もよく覚えていません。
 伊藤さんはこの本を「あらためて名作を読み直しながら、いっけん手にとりにくそうに感じられるこれらのテキストのユニークな面をあらたに発見し、より自由な解釈をうながすこと」という目的で書いたといいます。
 なるほど、ユーモアの効いたぬるりとした独自の文体で語られると、どの作品も大変面白そうです。もともとタイトルしか知らない作品ばかりなので、「え、これってそんな話なんだ」と驚かされることも、しばしば。「魔の山」って、勝手に登山の話だと思ってたけど療養記なのか、とか、「アンネの日記」のアンネって、そんなに魅力的な(つまり模範的ではない)女の子だったのかと、これまでの自分の無知が恥ずかしくなります。よし、ちょっと読んでみようかなという気分になります。
「こうした小説をよむことができる機会は、十八歳になるまでのあいだに限定されている」と伊藤さんは言います。自分が高校生の時にこの本に出会っていたら、僕ももっと世界の名作文学に触れることが出来ただろうなぁと思います。そうしたら、その後の人生も変わってきたかもしれない。
 でも、まぁ、世界文学は読まなくても、アシモフやクラークなんかの古典SFは読みまくったし、半村良赤瀬川原平には世の中の新しい見方を教えてもらったし、たくさんのポップカルチャーにも触れられたし、それはそれで芳醇な高校時代ではありましたから、後悔はしていませんけどね。それで、今の自分が作られてきたわけだし。
 そして、たぶん、僕はこれからもこの本で取り上げられている名作は、結局読まないんだろうなぁ。きっと、伊藤さんが紹介する文章の方が面白いから。だから、名作を手に取るかわりに、この本を何度も読み返そうと思います。

歩考力 「ひと駅歩き」からはじめる生活リストラクチャリング (下関マグロ ナショナル出版)

 サブカルエロの人から、すっかり散歩の人になった下関マグロ兄ィの新刊は、「歩考力」。帯には「成功している人は、あなたの倍は歩いている! ショートカット至上主義からの脱出が、あなたの『時間』『お金』『仕事』の問題を一気に解決する!」なんて、自己啓発ビジネス書みたいじゃないですか! でも考えてみたらマグロさんの処女単行本って「知的メモ術」だし、以前からビジネス書っぽい本を結構出してるんですよね。

 歩くことで脳が活性化する、生活に対する考え方が変わる、もちろん健康にもなる、という内容で、読み終えると「ちょっと歩いてみるかなぁ」という気持ちになります。

 僕も数年前から歩くことが習慣化してるんですよね。確か、きっかけはダイエット。低炭水化物ダイエットと合わせて、できるだけ歩くようにしたんです。効果はてきめんで、数ヶ月で10キロ落ちました。いや、食事規制を止めたらすぐに戻っちゃいましたけどね(笑)。
 でも、歩く癖は残りました。万歩計を常時携帯して一日一万歩を目安にしてます。
 一度癖がついちゃうと、歩くのが苦痛じゃなくなるんですよ。例えば、僕の事務所は高田馬場にあるんですが、新宿とか池袋には、よく歩いて行っちゃいます。電車で二駅。それだと駅まで歩く時間や、駅の中での移動の時間も考えるとトータルではあまり変わらないんですよね。
 じゃあ、自転車の方がいいじゃんって人もいるでしょうけど、歩くのに慣れると、自転車を駐輪するのが、なんか面倒な気がしてくるんです。あと徒歩だと、帰りは疲れたとか、急に遠くの駅に寄り道する予定(飲みに誘われたとか)があった場合、そのまま電車に乗れちゃう。でも自転車だと、次の日に取りに来なくちゃいけない。こういう自由さが徒歩の良さなんです。
 今の家は、駅まで20分歩くんですけど、歩き癖がついてると、全然苦にならない。むしろ歩数を稼げていいですよ。普通に事務所まで往復するだけで6千歩行きますからね(笑)。

 ぜひ、あなたも歩き者になって下さい!

歩考力 「ひと駅歩き」からはじめる生活リストラクチャリング
http://www.amazon.co.jp/dp/4930703492/

「NYLON100% 80年代渋谷発ポップ・カルチャーの源流」(ばるぼら アスペクト)

教科書には載らないニッポンのインターネットの歴史教科書」などで知られるばるぼら君が、あの伝説のロック喫茶「ナイロン100%」の本を出しました。その仕事の全てが驚異的な情報量に支えられているばるぼら君らしい力作です。いや、ばるぼら君の本で力作じゃない本なんて無いですけどね。


「ナイロン100%」とは、一九七八年八月から一九八六年三月まで渋谷にあった“伝説”のロック喫茶である。店内は白く無機質な内装、BGMは最先端のパンク/ニューウェーヴ。ヒカシュープラスチックスなどが早い時期にライブを行い、8 1/2ゲルニカ、東京ブラボーなどがここを拠点に活動し、ムーンライダーズやサロン・ミュージックの面々も客として訪れた。(プロローグより)


 浦和市在住のニューウェーブ少年であった僕も、当然この名前は知っていて、憧れていたのですが、ナイロンは既に「伝説の店」として語られていて、実際に足を運ぶには敷居が高いと勝手に思いこんでいました。ナイロン全盛期にはまだ中学〜高校生でしたからそんな勇気はとてもなかった。でも僕より一歳年上の常盤響さんは小学生時代から溝の口から通っていたんだよなー。
 こういう伝説的なシーンの話を聞く度に、ああ、なんで自分はその場に行かなかったんだろう、行く勇気がなかったんだろうと後悔することが多いです。ホント、そのすぐ近くにはいたんですけどね。後期ナイロンの常連が流れたCSVには通っていたし。

 それにしても、初期にナイロンにたどり着いたお客さんたちは、ロック・マガジンやZOOといったミニコミといってもいいマイナーな雑誌に掲載されていた小さな広告を頼りにしていたというのも興味深いですね。そんなところまで目を通すほど、みんな情報に飢えていて、雑誌というのはそれほど大きな存在だったんです。そういえば、SMビデオの黎明期もSM雑誌に広告載せるだけで、通販希望が殺到したという話もありましたね。雑誌が輝いていた時代だったんだなぁ、とちょっと変なところで感慨に耽っちゃいました。

 30人近くに及ぶ当事者たちへのインタビュー*1や巻末付録の「日本の初期パンク/ニューウェ−ヴ年表1976〜1981」など、ばるぼら君ならではの偏執狂的なまでの取材力に裏付けられた高い資料性。いやぁ、これで2400円は安すぎるよね。今、本当にかなわないと思うライターって、吉田豪君とばるぼら君だけだなぁ。

 個人的には、ばるぼら君には神保町のレンタルレコード屋「ジャニス」についての本も書いて欲しいと思います。あそこも80年以降の日本のロックシーンにおいて重要なスポットですからね。


あとWebスナイパー連載中の「ある編集者の遺した仕事とその光跡 天災編集者!青山正明の世界 取材・構成・文=ばるぼら」も要チェック!

「フリーペーパーの衝撃」(稲垣太郎 集英社新書)

 1月に刊行されてる本ですが、遅ればせながら読みました。今や1200誌、年間3億部にまで成長したフリーペーパー市場について元朝日新聞記者が調査したという新書。
 フリーペーパーというメディアが成長していく過程や、それによって地方誌が潰されていくという現実、そして世界のフリーペーパーの現状などがわかりやすく書かれていて勉強になりました。
 フリーペーパーの創刊ブームは携帯ネットサービスの開始時期と重なり(iモードは1999年サービス開始。ホットペッパーは2001年創刊、R25は2004年創刊)、フリーペーパーは紙媒体のインターネットへの逆襲だという考え方も書かれていますが、どちらも一見「無料」であるという点の方が大きいと思います。情報もコンテンツも無料で広告頼み。
 そして広告に頼っているメディアに自由な表現、報道はできるのか? という意見もあるけれど、有料誌だって販売収入よりも広告に頼っているのだから(新聞の場合、販売収入が約50%で広告収入が約30%、雑誌では販売収入と広告収入の割合が逆転しているケースも珍しくない)、今の時点でもそこに「自由な表現、報道」があるとは言えないような気がします。それなら、まぁ、あんまり変わらないかなと。
 フリーペーパーに関して言えば、配布スタンドを設置することで、その場所に「置き代」を払うわけですが、その金額は東京メトロで年間3億円、JR東日本で年間8億円にもなるそうです。売店の売り上げはどんどん減少(10年前に比べると4割減!)しているということで「飲料の自販機置くよりも無料誌を置いた方が儲かるかも」という意見もあるそうです。書店が無料誌の配布スタンドを置いているのも不思議な気がしてましたが、置き代目当てなのかなぁ。
 コンテンツを作っているものの端くれとしては、コンテンツは情報は無料で、収入は広告だよりという構造は、まぁ、ちょっと寂しい気持ちがしないでもないですが、それでちゃんと原稿料がもらえるならいいかなとも思います。
 というか、自分自身が今、雑誌に対しての企画とかアイディアは全く浮かばないのですが、ネットだったらこんなことが出来るのに、あんなことが出来るのにとか、いくらでも思いつくのだから、気持ちはもう雑誌(有料誌)から離れちゃっているのかなぁ。
 フリーペーパーでも、もうちょっと面白いもの、個性的で読み応えのあるものがいっぱい出てくる状況になったら、雑誌(有料誌)なんか無くなっちゃってもいいかなという気にもなっちゃいます。
 モスバーガーの「モスモス」とか、パルコの「ゴメス」みたいなものが、今こそ出てくればいいのに。そういえば1979年から80年にスーパーエディター秋山道男が編集していた西友の「熱中なんでもブック」という子供向けのPR誌(フリーじゃなくて10円でしたが)は、当時小学生だった僕にものすごいショック与えてくれました。雑誌というものが好きになったのは、あの本の影響が大きいかも。そう考えると、なんだ、スタート地点からフリーペーパーじゃないか(笑)。

「書けない私でもなれた!お気楽ライター道 」(ウサ吉 技術評論社)

 ライター入門の類は大好きで、見つけると買うようにしています。もう20冊以上持ってますよ、ライター入門(笑)。色んな意味で勉強になるんですよ。買う時は恥ずかしいんだけどさ(笑)。
 そんなわけで本書もブックオフで発見し、即購入いたしました(古本購入で申し訳ない>著者の方、出版社の方)。
 雑貨スタイリストを夢見て上京するも、なぜか編プロ経由でフリーライターになってしまった女性の体験談です。もともとは「ライターってもうかるの!?」というメルマガで発表されたコンテンツをまとめたもののようです。発行は3年前。
 女性ライターのこの手の本でありがちな、「ライターってこんなに素晴らしいお仕事なの! そんな仕事ができて、あたし幸せ!」という自己顕示欲的な思いこみが、ほどよく押さえられていて、読みやすく、面白かったです。これからライターになりたいという人には、実践的な参考になるんじゃないですかね。
 特にライターの専門学校に行くよりも、編プロで働く方が何倍も役に立つというのは、同感です。分業化が進んでいる出版社よりも、何でもやらされる編プロの方が勉強にはなりそうです。仕事内容的には面白味は少ないかもしれませんが、色々なことを学べる。
 結局、この仕事は現場で学ぶしか身につかないと思うのですよ。仕事という責任を背負って初めて「ライター」ですからね。その辺が小説家とか作家とは違うところ。極論を言ってしまえば、アマチュアの小説家はいても、アマチュアのライターというのは存在しないのです。ライターは「プロ」しかいない。もちろん、それだけで食べてるかというのは別の問題なんですけどね。

 まぁ、もし僕がライター志望者にアドバイスするとすれば、まず普通の会社で営業職を2年くらいやって社会の常識と、人とのつきあい方をきっちり学んで、同時にプライベートな時間で自分の得意分野を追求して(今ならブログとか、ガンガン書いて)、その後、編プロでやっぱり2年くらい働いて、雑誌の作り方を隅々まで体験して、それからフリーライターになるというのがベストだと思いますね。社会で人づきあいの基本を知っておくのは、ライターという仕事をやる上で、非常に大事なんですよ。

 しかしなー、今でもやっぱりライター志望者っているのかなー。正直言って、今は最終的に結婚という逃げ場のある女性にしか勧められない道だとは思うんだよなー。
 …なんか今回、男女差別的な発言、多いですね。すいません。

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