人気官能小説家、草凪優が昨年末に発表した「どうしようもない恋の唄」。タイトルは、もしやと思いましたが、本人に確認したところ、やはりルースターズからとったとのこと。なにしろ1967年生まれと僕と同じ年ですからね、この辺はやっぱり通ってるんだなぁ。
コミカルタッチな官能から、切ないラブロマンスまで幅広い作風の草凪氏ですが、こちらはタイトルから想像できる通りに後者。
「ここにいる間は毎晩わたしを抱いて」仕事も妻も失い、死に場所を求めて迷い込んだ場末の町。矢代光敏はそこで出会ったソープ嬢のヒナに拾われる。ままごとのような生活と、呆れるほど無防備で危ういヒナの体に溺れていく矢代。しかし、断ち切りがたい過去への未練がやがて人生最悪の事態を招く……。どうしようもない男と女が、最後に見出す奇跡のような愛とは?
実は某誌の仕事で、草凪氏と睦月影郎氏の対談をライティングすることになり、その参考としてこの作品を読んだんですが、ぐいぐいと引き込まれましたね。
とにかく「わたし馬鹿だから」が口癖な無防備なヒロイン、ヒナがなんとも愛らしく、そして彼女と主人公のセックスの描写が実に切なく官能的なんですね。
急速に緊張を高めていく終盤のクライマックスと、そして唐突に訪れるエンディング。官能小説で、こんなにジーンと来ちゃうことは珍しいなぁ。大人による大人のための、いい物語を読んだという気持ちになりました。
そしてこの小説を読んでから、ずーっと頭の中にルースターズの「どうしようもない恋の唄」が流れているんですよね。初期ルースターズの大江慎也の声って、なんでこんなに切ないんだろう。