ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

混浴、それは厳しい戦い(前編)

 先日、混浴温泉を体験してまいりました。おや、あなた、「ほぉ、いいですね。羨ましい」と思いましたか。とんでもありません。混浴は戦いなのです。甘い気持ちで臨んではいけない厳しい世界なのです。ワタクシ、二日間を戦い抜きました。もうヘトヘトです。
 ワタクシが混浴温泉に挑むのは、これで二回目となります。昨年、初めてこの世界に足を踏み入れて衝撃を受けました。あ、とりあえず、昨年のレポート読んで下さい。はい、読みましたね。そうです。混浴温泉に挑む者は、ひたすらお湯の中で獲物を待つのです。それが混浴道なのです。
 今回も昨年と全く同じプランで戦いに臨むことになりました。メンバーは混浴歴17年のベテラン、Tさん。通称、混浴の達人、もしくはお湯の魔人。そして今回が3度目の参戦となるK氏にワタクシを加えた3人。戦場となるのも昨年同様、初日が群馬県H温泉で2日目に同じく群馬県のT温泉というゴールデンコースです。今回は過去2回の戦いでは残念ながら一度も若いムスメさんの裸身を見ることができなかったK氏のリベンジの意味もあります。K氏にも混浴の醍醐味を味わってもらいたい、とT氏は強く思っていたそうです。
 さて、お昼頃に東京を出て、車で一路H温泉へ。山間部へと進むと、かなりの積雪。目的地のH温泉は完全に雪景色でした。何もかもが雪の中に埋まっております。
 3時半頃に宿に到着し、お茶を一杯飲むと、達人はスックと立ち上がった。もう戦いは始まっているのだ。くつろいでいる暇などはないと達人の背中が語っていた(はい、ここから文体変わります)。
 こんな平日に若い女性客がいるわけがないと思う方も多いだろうが、このH温泉は温泉ファンの間では知らぬ者のない名湯。平日でも予約がいっぱいなのである。現に我々が大浴場の前まで来ると、女性脱衣所の戸が開き、二十代後半と思われる女性二人組が出てきた。我々は顔を見合わせた。
「…遅かった」
ああ、あと10分、いや5分早く大浴場に来ていたら…。しかし、若い女性客がいるということは、これで証明された。戦いは、まだまだこれからである。大浴場に入ると、先客がいた。50代夫婦一組と男性二人。50代奥さんは、さすがに獲物と認識するには無理がある。まぁ、落ち着いて次の獲物を待とう。H温泉の大浴場は明治28年築という歴史ある木造建築。微妙に温度の違う四つの浴槽は、それぞれ丸太で二つに区切られて合計8マスになっている。我々3人は別々のマスにて入浴。じっと時を待つ。ぬるく柔らかいお湯に浸っていると意識がフーッと遠のいて行き、あっという間に時が過ぎていく。気づけば一時間以上が経っていた。若い男性の4人グループがドヤドヤと入ってきたのを機に第一ラウンドを終えることにする。男性客が騒いでいるところに、若い女性客は入ってくるまいという達人の判断だ。ちなみに50代奥さんが浴槽から上がる時に、その裸身をチラリと見ることができた。やはり、あまり嬉しくない裸身だった。それから80代と思われる女性も一名入って来たが、こちらは初めからノーマーク。
 部屋に戻って、とりあえずビールで水分補給。長時間お湯につかっていた体にビールが美味い。美味すぎる。そのまま夕食。戦士の休息とも言えるひと時。普通の温泉旅行ならば、ふにゃふにゃになるほど脱力してしまえばいいのだが、我々は遊びに来ているわけではない。戦いはまだ始まったばかりなのだ!
 夕食後、二度目の出撃。夕食時ということもあって、大浴場に客の姿はなく我々の貸切状態。一時間ほど粘ったが、8時〜10時は大浴場が女性専用時間となる為、一度部屋への撤退を余儀なくされた。あ、推定80代女性が一名入って来ていたが、これはポイントにはならないだろう。全然見てないし。
 部屋には既に布団が敷かれていた。我々は布団に横になり、来る途中でヤマダ電機にて2980円で購入したラジカセにて、達人T氏が持参した懐メロテープに聴き惚れる。ゴダイゴやらジャーニーやらの竹内まりあやらの歌声を聴きながら「ねぇ、ねぇ、2組の女子で誰が一番だと思う」などと告白タイムを楽しむ。あと枕投げとかして、見回りの先生に怒られました。廊下で正座させられました。
 さて、時計が9時45分頃を示すと私とK氏はソワソワしはじめた。前回、女性専用時間から混浴時間へと切り替わる時に、残っていた20代女性に遭遇したという幸運な体験を覚えていたからである。この時間が勝負だ。しかし前回K氏は、眼鏡を忘れてその見事な20代バディを見逃すという失態を犯していた。今回はもちろん眼鏡は忘れない。気合十分で我々は大浴場になだれ込んだが、先客はなし。またも貸切状態。まぁ、それならそれで湯煙情緒を楽しもう。のんびりとぬるい湯に浸かって、薄暗い浴場内に立ち込める湯煙を眺めていると胎内回帰したかのような気分になれる。ナチュラルトリップ。ああ、今、俺はお湯と一体になっている。我は温泉そのもの也。
 しばらくして、脱衣所で物音がした。女性脱衣所からもだ。向こうの世界に行っていた我々の意識が呼び戻される。浴場内に緊張が走る。しかし出てきたのは第一ラウンドの時にもいた50代夫婦だった。落胆にくれる我々。だが達人の目が私に語っていた。
「いや、これはチャンスなのだ」
そう、他に女性がいて、なおかつ女性用脱衣所に一番近い湯船には誰もいない。この状況は新たに女性客が入ってくるには最適なシチュエーションなのだ。いわばテトリスで四段分の穴が開けられた状態。棒、来い! 棒! なのである。
 そして棒が来た。20代半ばと思われる女性二人組である。浴用タオルで前を隠しながら入ってきたものの、湯船に入る時は潔くタオルを外した。我々はその瞬間、彼女たちの裸身を見た。一瞬ではあったが、確かに見ることができた。小ぶりではあるが形のよい乳房もヘアも確認できた。混浴の神は微笑んだのだ。彼女たちは二人である気安さからか、大胆にも枕木に頭を乗せたまま仰向けに体を浮かせたりするのだ。残念ながら、私の位置からはよくは見えなかったのだが、達人はさりげなく立ち上がり、お湯にゆらめくヘアと湯面から顔を出す乳房をしっかりと拝観したという。さすがである。彼女たちが見事なヒップを晒しつつ脱衣所へ消えていったあと、我々3人は心の中で叫んだ。
ピカチュウ、ゲットだぜ!」
この成果に満足した私は、部屋に戻りビールで水分補給。勝利の美酒は格別の味であった。第3ラウンドは2時間に及んでいたのだ。しかし、達人もK氏もまだ部屋へ戻って来ない。ああ、まだ彼らは戦っているのだ。私ひとりがここで休息しているわけにはいかない。30分後、私はまた戦場へと向かった。
 午前0時を超えて第4ラウンド。誰もいない深夜を狙うカップルもいるため、狙い目の時間だと達人はいう。しかし、この日は全く動きがなく、我々3人の貸切状態のまま午前1時が過ぎ、とりあえず切り上げることとなる。
 戦いに疲れきり、ボロクズのようになって布団にもぐりこむ。本日の総入浴時間は5時間。私はあっという間に眠りについた。しかし、達人はそのわずか3時間後、午前5時前には起きだして、一人で戦いを開始していたのだった!(続く)

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