ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

古本トリオ 京浜東北線ツアー

 朝飲み仲間であり、古本屋好き仲間でもある柳下毅一郎さんと、とみさわ昭仁さんと3人で、飲み屋と古本屋を回るツアーをやりました。今回は赤羽から浦和に至る京浜東北線編です。


 まずは赤羽、喜多屋に午前10時に集合。赤羽といえば、いつもまるます家なんですが、たまには違う店にしようということで、朝7時からやってる立ち飲みのこの店にしました。

 いや、とにかく安いのなんの。生ビールが360円というのも安いんですが、ハイボール(焼酎の炭酸割り)が180円、煮込みも180円、まぐろブツ220円と飲み物もつまみもバカ安なので、360円が高く思えるくらい。あまりボリュームのあるつまみはないので、ガッツリ食うというよりも、軽く飲むのに向いてる店ですね。
 お店のおばちゃんやお兄ちゃんも気軽に話しかけてくるし、こういう店が地元にあったらたまらないなぁ。
 あ、ちなみに店内では携帯電話禁止なので、iPhoneいじってても注意されます(笑)。


 ビール一杯、ハイボール一杯と軽くホロ酔い気分で古本屋ツアーがスタート。でも、最初に駅前のブックストア談赤羽店に入っちゃいました。新刊書店なんですが、清野とおるの「東京都北区赤羽」をどーんとディスプレイしてあったのに惹かれて店内に入ると、実にいい棚作りをしてるんですね。3人で「これはいい本屋だ」と絶賛。でも、今日は古本屋巡りだから、とりあえず何も買わなかったですけどね。でもこういう本屋、うれしいな。
 さて、一軒目はブックオフ赤羽駅東口店。古本屋巡りというと、ブックオフは無視するのが普通でしょうが、ブックオフ100円コーナーマニアのとみさわさんがいますからね。ちゃんとチェックするのですよ。

2階建てで、まずまずの品揃えではありました。それほど珍しい本はありませんでしたが、最初だからということで何か買っておきたい。とりあえず僕は文春文庫ビジュアル版の「ベストオブラーメン」(文藝春秋 1989年)「ベストオブ蕎麦」(文藝春秋 1992年)と「ハレンチ学園 ザ・カンパニー」(有賀照人 集英社 2007年)と105円の本を3冊購入。


「ベストオブラーメン」はラーメンブーム以前の1989年刊。今から見ると、素朴なラーメンばかりですが、そこが逆に美味そうなんですよね。「ベストオブ蕎麦」もそうなんですが、文春文庫ビジュアル版のこのB級グルメシリーズは写真がすごくよいので、当時から愛読しております。

ハレンチ学園 ザ・カンパニー」は、やったらめったら多くて、でも愛情の感じられない駄作ばかりの永井豪リメイク漫画の中でも割と面白かった作品です。ちゃんと寸止めエロのセンスも生かされてますし。
 そしてブックオフのすぐ先の山遊堂に行ってみたら、なんと3日前に閉店してました! うわぁ、残念。

看板に書かれた支店にどんどん線が引かれて消されているのが切なかったです。

 じゃあ、次だ。と歩いていくと覆面パトカーが目の前と通り過ぎていきます。なんだなんだと見てみると、警察官がいっぱい。鑑識らしき人までいて、これはどうやら殺人事件でもあった様子。殺人研究家の柳下さんと、殺人現場に居合わせるというのは、なんとも変な気分ですね(笑)。
 駅の反対側に歩いて、今度は平岩書店へ。

お、これはいい感じの古本屋じゃないですか。しかも中に入るとエロ本がいっぱい! これは僕のための店だ! と思ったんですが、僕のお目当ての古いエロ本はあまりなく、新しめの雑誌が中心。うーん、ちょっとがっかり。まぁ、せっかくなので、たいらはじめの「めぞん一刻」オマージュ物の「悠久の刻」(ティーアイネット 2000年)でも買っておきますか。

ちなみに後で気づいたんですが、この本と「ベストオブラーメン」は持ってるのに、ダブって買っちゃってました。
 んで、お店の外に出てみると、店頭のラックに「ザ・テンメイ」(竹書房 1994年)があるじゃないですか。この間から「ザ・テンメイ」を集めはじめているんですよ。18号と21号をゲット!


 ちなみに僕の「ザ・テンメイ」コレクションルールは100円の場合のみ買うということになっております。この後の店でも「ザ・テンメイ」はずいぶんあったんですけど、300円だったり400円だったりしたので買いませんでした。


 さぁ、次の街に行きましょう。京浜東北線で一駅移動、川口です。キューポラのある街として知られる川口ですが、再開発が進んでいて駅前はチェーン店ばかり。とりあえずブックオフはありますが、調べておいた他の古本屋は、軒並み閉まっていました。残念。どこの街に行っても、昔ながらの古本屋はバタバタ潰れています。まぁ、新刊も売れない時代ですからね、わざわざ古本屋に足を運ぶ人も少ないんだろうなぁ。こんなに楽しいのにねぇ、古本屋巡り。


 ブックオフ川口駅東口店でコンビニ本の「BARレモン・ハート きみに、がんばれ!の一杯」(古谷三敏 双葉社 2006年)を購入。一冊は何か買っておこうということで。


 はい、隣の西川口へ。風俗ライターの頃はよく取材に行ってた街ですが、風俗店が壊滅してからは、すっかりご無沙汰になってます。いわゆるNK流の店が閉まった後、そのままになっている店舗が多く、ゴーストタウン化してます。あの賑やかさを知る者としては寂しい限り。
 でも西川口には、確かすごい古本屋があったんだよと、線路沿いに行くと、ありましたありました。宇佐美書店です。

骨董じみた店内の中は何十年もかけて地層のように積み上がったと思われる本の山で迷宮のようになっており、歩くのも一苦労。もしかしたら貴重な本が眠っているのかもしれませんが、とても発掘できそうにありません。
 エロ関係は、掘り出し物がありそうで、今ひとつ微妙な感じ。でも何か買いたいなと思って発見したのが、香坂和子のミニ写真集。吉川マリの名前でも1985年頃に宇宙企画でも活躍していた子で、華奢なイメージとは裏腹にトラックの運転手だったという一面も。宇宙企画の「SM初体験」という作品が好きでした。


 その香坂和子と篠原有希のミニ写真集が二冊セットで500円(辰巳出版 1987年)。とりあえず、という感じで購入。これ「新・ささやき文庫」というKUKI制作のシリーズなんですが、本当はカセット付なんですよね。カセットは紛失したのでしょうか。
 さらに西川口ではもう一軒、創文堂書店。

こちらもなかなかの品揃えです。やや高めの値付けかなという気もしますが、古めのエロ本や雑誌がいっぱいあって見ごたえがありました。僕は洋ピン雑誌「DICK」2008年9月号(大洋書房)、そして団鬼六の「夕顔夫人」下巻(桃園書房 1976年)を購入。

「DICK」は24年の歴史に幕を下ろした最終号。既にDVD付で本誌は薄っぺらくなっていますが、最終号らしく24年間を振り返る特集があるので、資料的には持っていたいところ。ライターとして独立したばかりの頃、無修正の輸入CDーROMについて書かせてもらったような記憶も。

「夕顔夫人」はオリジナルの桃園書房版の初版(保存状態は悪い)。先頃、無双舎文庫から再発されたのを買ったばかりなんですが、内容が大きく違うということで、買ってみました。後で読み比べてみよう。


 さて、この日は、完全な夏日で30度を越す暑さ。赤羽で飲んだ分は、とっくに汗になって流れ出てしまってます。すでにかなり歩いているので、3人ともヘトヘト。西川口は駅前に立ちのみの焼き鳥屋があるんですが、ちょっと座りたい。ということで、ランチ営業をしていた居酒屋「一徳」に入りました。あー、椅子最高(笑)。ビールや揚げ物を平らげながら、ここまでの戦利品を見せ合います。実に楽しいひとときであります。

 燃料を補給して元気が出たところで、アオイ書店駅前店へ。

ここはもう見た目に素晴らしい。怪しい臭いがプンプンしてます。

こんな張り紙も、怪しさに拍車をかけてますね。
 ところが、店内は漫画ばかりで、意外に面白さに欠けました。うーん、期待が大きすぎたか。まぁ、本当はここよりも本店の方が規模が大きいそうなんで、そっちには掘り出し物もあるかもしれないんですが、駅からずいぶん離れてるんですね。どうしようかと相談した結果、あきらめることに。

 何も買わないのも、アレなので、ちびちび集めている「ユリア100式」の6巻(原田重光・萩尾ノブト 白泉社 2008年)を100円で購入。藤井シェリー主演でVシネマ化されたこともあるゆるーいエッチコメディですが、なんか好きなんですよね。

 そしてブックオフ西川口東口店(早口言葉みたいだな)にも寄りましたが、なんか疲労が溜まっていて(もう燃料が切れた!)、3人ともどうもパッとしません。ここでは僕も何も買わず。


 続いて蕨へ。僕はもともと隣の南浦和の出身で蕨に父方の実家もあったもので、地元みたいなもんです。柳下さんも親戚が住んでいたということで土地勘はあるとか。
 まずはブックオフ蕨駅東口店に行ってみますが、外見はそのままなのに、店内はなんとアダルト系のたちばな書店に入れ替わっていました。ううむ。今日は古本が目的なので店内には入らず。

 今のところ、あんまり掘り出し物も無くて、今日はイマイチかなー、なんて思っていたのですよ、この時までは。ところが、ハイライトは直後にやってきました。
 蕨駅東口から川口方面へ線路沿いにかなり歩いたところにある古書なごみ堂。

いい感じに古い店で、店頭に積まれた本はボロボロ。これはあんまり期待できないなと思いつつ、店内に入ってびっくりです。
 うわ、性関係の古い本がえらく充実してる! 風俗関係やらピンク映画関係やらAV関係やらが棚いっぱい。こ、これは……と思っていたら、柳下さんも、とみさわさんも食い入るような眼差しで棚を見つめています。
 このツアーのメンバーのいいところは、三人の狙っているジャンルがバラバラなところなんですね。柳下さんは犯罪関係、とみさわさんはマヌケ本関係、僕はエロ関係とかぶっていないんです。そして、その3人のそれぞれのジャンルを満たしているという、奇跡のような古本屋だったのですよ! もう品揃えが明らかにわかっているセレクト。他の二人も言ってたけれど、自分が持っているいい本が並んでいると、この本屋は信用できるっていうところがあるじゃないですか。なごみ堂は正にそれでした。例えば、その時僕は先日入手した「トルコロジー」という本を読んでいたのですが、それもちゃんとあって、しかもその著者の広岡敬一の他の本も揃ってる。
 あれも欲しい、これも欲しいという状況だったのですが、既にカバンはパンパンだし、まだツアーは続くということで泣く泣く3冊に絞りました。

 まず「エロトデコラ 性のアクセサリー」(信夫誠 綜合図書 1971年)。貞操帯やら張型やらコンドームやら、様々な性具を集めた1971年の本なんですが、写真や図版が大変味わい深い。カバーが無く、状態があまりよくないので高くありませんでした。

カストリ雑誌にみる戦後史」(山岡明 オリオン出版社 1970年)はタイトル通りにカストリ雑誌の歴史についての本。この辺、僕は弱いので勉強のために購入。

 そして「おとこの読本 Vol.1」(永田社 1980年)。もともとは「酒と男」という雑誌が改題したピンク情報誌で、特集が「いま、トルコ」。トルコ用語辞典も興味深いけれど、圧巻なのが全国トルコ1200軒徹底ガイド。吉原から那覇に到るまでの全国のトルコ店のリストです。まだ残っている店が多いので、店名を見ているだけで楽しいです。「年増が多いかわりに徹底サービスで楽しめる」「派手さはないが江戸っ子トルコ嬢が気前よいサービス」「個室にはスライド装置、赤外線装置があって疲労回復にもよい」なんて一行コメントも泣けます。
 しかし、柳下さんは大爆発。一万円以上もここで使ってました。それも見事なくらいに真っ黒な犯罪本ばかり。
 意外なところで名店に出会えて、僕らも勢いがついてきました。西口にまわって旭書房へ。

実はここ、僕が小学生の頃に、父親が経営していた喫茶店に置く漫画をまとめ買いしてた店なのです。30年も前の話ですが、当時とムードが変わってないのが嬉しかった。漫画とエロ本が充実していて、ここで白夜書房の伝説の雑誌「Billy」1983年7月号(白夜書房)を発見。実は「Billy」を一冊も持ってなかったんです。これが1000円というのは買いでしょう。

安田老人の放尿盗撮写真コレクションから始まって、欧米スカトロ本、ニューハーフにSM、獣姦、そしてもちろん死体写真と充実しておりました。僕が高校生の頃のサブカル少年の必読雑誌だったんだよなー。
 蕨ではもう一軒、森のしずくという店も行きました。

まぁ、ここはアダルト基本の店で、特にジュニア系が充実。でも古い本はほとんど無かったので僕はパス。


 さて、僕の地元である南浦和は古本屋が無いので飛ばして、このツアーの最終目的地である浦和へ。もともとは、去年とみさわさんが古本めぐりで浦和に来た時にあまりにディープで入れなかった浦和古書センターという店のことをブログに書いてたんですが、そこは僕が中高校生時代に入り浸り、エロ本の奥深さに目覚めた、いわば原点とも言える場所なのです。じゃあ、改めて一緒に浦和古書センターに行こうじゃないかというのが、今回のきっかけだったのです。
 まずは駅から近い武蔵野書店へ。

文庫本が充実したオーソドックスな古本屋。ここは店頭の100円コーナーに面白い本がありますね。でも、ここでは購入せず。
 ちょっと雨がポツポツ降ってきました。目的の浦和古書センターは、駅からだいぶ離れた調神社の近くにあるので、早足で向かったのですが、あれ、シャッターが降りてる?

 もしかして潰れちゃったのか? いや、いつ潰れてもおかしくない店ではありますが。

 ところが看板には「定休日は火・水・木です」の文字が。週の半分休みですか!
 浦和には、まだ他にも何軒かあったのですが、ここで緊張の糸が切れてしまい、ツアーを終了にすることに。もう6時30分でしたしね。


 浦和の飲み屋と言えばレッズファンの聖地「力」が有名ですが、僕ととみさわさんはサッカーに興味なし、柳下さんはライバル鹿島アントラーズのファンということで、「力」の向かいのお多幸に入りました。

 くつろぎたいということで二階に上げてもらったら、おや、貸切り状態。これはいいということで、名物のおでんを食べながら、戦利品を見せ合い、その模様をUSTREM中継しました。何しろ貸切状態なので、雑音が一切なしで中継には最適でした。

 それではとみさわさんの戦利品を購入店順に。





 さすがはとみさわさんとしか言いようのないセレクトですね。続いて柳下さん。
 濃いです。真っ黒です。






 正に三人三様な古本ツアー。大変楽しかったので、またやることになりました。今度はどこの沿線に行こうかなぁ。

柳下さんのレポ http://garth.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/post-fe92.html
とみさわさんのレポ http://d.hatena.ne.jp/pontenna/20100619/p1

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