敬愛する先輩ライター、藤木TDC氏が1992年から休刊までの12年間「噂の真相」に連載していたコラム「アダルトビデオ構造主義」(2000年4月号より「新性紀猥物史観」にタイトル変更)を完全収録した「アダルトメディア・ランダムノート」が遂に発売されました。
アダルトメディアのその時々の流行を俯瞰的に考察した本というのは、皆無に等しくてこれは実に貴重な資料なんですね。そして取り上げられている1992年〜2004年という時代は、僕がエロ系のお仕事をやっている期間がすっぽりはいっておりまして、これまた感慨深いのですよ。
1992年の項では、代々木忠監督の「性感Xテクニック」から始まって、ハメ撮りの流行、企画モノのヒット、バクシーシ山下監督の「女犯」問題などが取り上げられています。ああ、懐かしいなぁ。この頃、僕は広告代理店のコピーライターをやりながら、実話誌にAVレビューを書いたり、ゴールドマン監督一派とイベントをやったりして急速にAV業界に接近し、そして性感ヘルスなどの平成新風俗にハマっていたのでした。
僕がエロライターとして独立したのは1994年。この年の項では超小型ビデオカメラの登場、カンパニー松尾の躍進、関西物ブームといったテーマが取り上げられていますが、個人的に思い入れが深いのは「CD−ROMの暗い未来」という回。そうそう、アダルトCD−ROMのブームというのがありました。僕はこの新しいメディアにえらく衝撃を受けまして、フリーライターになりたての頃はアダルトCD−ROM関係の記事ばかり書いてましたね。これはもしかして、すごく新しい表現を産むんじゃないかなんて、思ったりして。いや、全然そんなことはなかったんですけど(笑)。
てな調子で、エロメディアの12年間を俯瞰できるこの本、僕には大変楽しめました。前述の通り、こういう資料的価値のある本って、ほとんどないんですよ。雑誌の特集なんかではよくやってるんで、スクラップしてるんですけどね。
しかし、こんな風にエロメディアを客観的に考察できる人って、藤木TDCさんしかいないというエロライター界の層の薄さも悲しいところがありますな。未だに「SPA!」なんかで、こういうったテーマでコメントもらおうと考えると藤木さんしか人選が浮かばないもんなー。
それにしても、改めて古い原稿から読んでいくと、藤木さんの枯れっぷりが興味深いです。「自分が歳をとってしまったことが」とか「三十路を越した男の目で見ると」といった男性をリタイアしたような表現があちこちに見られるんですね。当時は「藤木さんは、やっぱり大人だなぁ」と思っていたものですが(僕よりも5つ年上)、いざ同じ年齢になってみると、そこまで枯れていないぞ(笑)。
ま、それはそれとして、エロメディアに関心のある全ての人、必読です!