ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門 (永山 薫 イースト・プレス )

 エロ漫画エバンジェリスト永山薫氏によるエロ漫画入門書。手塚治虫が登場した1940年代から(そう! アニメ絵の原点は手塚治虫なのだ!)青年劇画、少年向けエッチ漫画、三流劇画、美少女系エロ漫画、そして現在のエロ漫画へ至るまでの歴史を綴った「エロマンガ全史」、そしてロリコン、巨乳、近親相姦、SM、純愛、超ジェンダーといった細分化したジャンルについて語った「愛と性のさまざまなカタチ」の二部構成となっていて、「もう一つのマンガ王国」の全容を理解することができる一冊です。

 発売時期的にも構成的にも拙著「エロの敵」と関連づけて語られる機会が多いでしょうし、「エロの敵」が触れなかったエロ漫画〜萌えの世界がこれで補完され、後はピンク映画とエロゲー、裏メディアあたりの全史を書いてくれる人がいれば近代アダルトメディアの全貌が網羅されるなぁ…なんて思いながら読みはじめたのですが、いやぁ、これは「エロの敵」とは全然違いますね。「エロの敵」は、どちらかというとアダルトメディアが現在直面している問題がメインテーマで、エロメディアのユーザー以外にも読んでもらえるように、あえてサラリと書いてみたんですよ。イメージとしては新書。だから「もうちょっとつっこんで欲しかった」なんて感想なんかもいただいたりしました。
 でも「エロマンガ・スタディー」は骨太の評論なんですね。入門書であり、ガイドブックであり、エロ漫画の歴史教科書でもありますが、根底は評論。多彩かつディープなエロ漫画の世界を通して、その向こう側の表現のあり方に迫っているのですよ。永山氏が個々の作品に惚れ込んでいるのがヒシヒシと伝わってきます。愛があるんですよね。

 僕自身はエロ漫画はどちらかというと門外漢。いや、結構買うんですけど、それはもう純粋に「抜き」のためなので、めちゃくちゃ偏ってるんですね。好きな漫画家は鋭利菊堀川悟郎、シン・ツグル、将門つかさ上藤政樹未由間すばる(鬼薔薇)、木谷さい、MARO、Dr.ぴょんRというあたり。…まぁ、ソフトSM系といいますか、女の子が恥ずかしがってるのをウリャウリャと責めるような漫画が好きなんです。つーか、それ以外興味がないんですね。もう何度も書いてますが、僕の原点は70年代永井豪エッチ漫画でありまして、その延長上にあるようなエロ漫画じゃないと抜けないんですわ。すぐセックスしちゃうような漫画はダメなのですよ。興味なし。買ったことがない。
 つまり漫画として面白い・面白くないという観点でエロ漫画を読んだことが、あまりないんですよね。ははは、エロ本やAVに「抜き」以外を求めないユーザーと同じですな(笑)。

 そんな僕でも「エロマンガ・スタディー」を読むと、「お、これ面白そうだな。今度買ってみるか」と思う作品にいくつも出会うんですね。具体的に言うとEB110SSの「子供料金シリーズ」とか田中エキスの「幼なママ」とか月野定規の「♭37℃」など。僕の「抜き」の守備範囲からは外れるジャンルのものなんですが、それでも永山氏がそれらの作品について書いた文章を読んで興味を持ったんですね。永山氏はあとがきで「一人でも多くの人が本書を手がかりに気になる作家と作品を実際に手に取ってくれればと願う」と書いていますが、その目的は見事に果たせる本になっているのではないでしょうか。ああ、AVなんかでも、こういう本が必要なんだよな。

 ところで本書でも「かつての『エロさえあればなんでもあり』というエロ漫画の魅力が薄れてきた。昔ならエロ漫画誌しか発表の場がなかった作品も、浸透と拡散によって多チャンネル化し、少年誌、青年誌、少女誌、BL誌、マニア誌。オタク&マニア誌と選択肢が広がっている」という記述があったりして、「浸透と拡散」は、どこのジャンルでも進んでいることなんだなぁと改めて実感いたしました。
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