ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

1996年のレビュー

僕が1996年に書いた様々なレビュー原稿です。今、読むと文体がちょっと恥ずかしいですね。

AV「これがキャバクラ! オ○○コ娘」(ノアセレクト)

 キャバクラにハマって散々な目にあったバクシーシ山下監督と日比野正明監督がタッグを組んで、現役キャバクラ嬢の自宅へ突撃し、ハメ撮りをカマすのだが、8ミリじゃなくて大型のベーカムカメラを担いでハメ撮りするというのが、なんだかスゲエ。はたから見るととてつもなくマヌケな光景である。
 ま、それはそれとしてこの作品、ヒトは何故やれもしないキャバクラにハマるのかを追求していて、彼らはこの原因を「キャバクラ・マインドコントロール」と呼んでいる。麻薬や宗教の如くハマってしまうとなかなか抜け出せないというわけだ。
 でもまだ山下監督、キャバクラに通ってるみたいなんだよねー。カラクリがわかっても抜けられないというあたり、宗教よりもコワイかもしれない。しかし彼、キャバクラでどんな話してるんだろう。(96年3月「スコラ」)

AV「大開脚」(ヘルメス)

 大股開きである。もう全編大股開きの嵐。全部で10人もの女の子がパッパカパーと大股開きしてアソコをさらしまくってくれている。
 どーせモザイクがかかってるから見えなくて意味ねーじゃん、という声も聞こえて来そうだが、さにあらず。これが意外にクるのだ。最終的に見えないとはいえ、現場では、もうハラワタまで丸見えになっているという事実が、なんとも興奮させてくれるのだ。モザイク越しに内部のピンク色がチラチラと見えるのも、またエッチだし。
 ビニ本とかでは、ひたすら大股開き!ってのはよくあったけれど、AVでここまでこだわったのは初めてであろう。さすがゴールドマン監督、目の付け所が違うよなぁ。
 女の子たちが照れながらも明るいノリなのもいい。笑いながらもついつい感じちゃうって瞬間が、これまた興奮すんだな。(96年4月「スコラ」)


AV「ザ・プライバシー 彼女が本当にSEXした理由」(DOKAN)

 V&R退社後に、なんと芳友メディアステーションで個人レーベル「DOKAN」を立ちあげたカンパニー松尾の最新作。ま、プレイベート色の強い作風は変わらずでファンも一安心。
「本番はNGなんですぅ」なんていう青山さつき嬢(美乳Eカップ!)に、「なぜ本番はダメなんだ?」と詰め寄る松尾。テーマはやがて、セックスにおける挿入行為とは?なんてややこしい方向へ行き始めるが、そこは松尾。あっさり「よーわからん」と投げだしてバコバコ。実は理由は「ハメられると気持ちよくってスケベなのがバレちゃうから」だったりして、これが乱れる乱れる。プライベート感覚でのエッチは興奮しますぜ。なにせさつき嬢、「やだぁ、撮影しないで」なんていって仕事だってこと忘れてんだもん。(96年6月「スコラ」)


BOOK「素人娘ジャパン」(カンパニー松尾 大田出版)
 ちくしょう、やられた! カンパニー松尾の「素人娘ジャパン」を読んだ時の感想だ。
 前からカン松のAV、特に「私を女優にしてください」シリーズは、現代のブンガクではないか、と思っていたのだ。岡崎京子(祈回復!)やよしもとよしとも山本直樹のマンガと同じくらいに、カン松のハメ撮りAVはブンガクなのだ。「うーむ、もうAVとマンガでしかリアルな性文学は描けないんだよなぁ」なんて思っていたのだ。
 ところがカン松ときたら、本というメディアでも、あっさり「現代の性」を見事に描きやがんの。ちくしょう才能のあるヤツにはかなわねーや。
 内容はいつものカン松のAVと同じ。青森と北海道のテレクラとカレー屋を回る旅日記。テレクラで女のコひっかけて、ハメ撮りして、カレー食べて、その繰り返しが38日。
 ダラダラとしているクセにラップのライムの如くテンポのいい文体。大上段に振りかぶったテレクラ娘の意識分析なんてのは一切ナシ。理由もないし意味もない。この薄っぺらさが、最高にリアル。
 別にたいした理由があってテレクラで援助交際してるわけじゃないよね、みんな。ただ大人のヒトたちは、理由がないと不安だから無理矢理こじつけてるだけでさ。
 カン松自ら撮影のハメ撮りフォトも素晴らしく、装丁がまたカッコイイ! 巻末のカン松入魂のカレー店リストも力作。なにしろ「本当はカレーの本が作りたかったんだけど、それじゃ売れないからハメ撮りつけたんだ」(松尾談)なんだそーだ。(96年6月「スコラ」)



グッズ「トリップスキン」

 フェラでも、本番と同じくらいエイズ感染の危険があるというデータがアメリカで発表されたそーです。本番はゴム付でもしょーがないけど、フェラはナマに限る! と思っていた僕には、この発表はちょっとショッキング。だって、フェラもゴム付にしろなんてヒドイじゃないですか。快感も半減っすよ〜。
 という声に応えてかは知らないですが、最近「フェラ用スキン」なるものが開発されました。その名も「トリップスキン」。渋谷の老舗のヘルス「道玄坂クリスタル」では、いち早くこのトリップスキンを取り入れたと聞き、さっそく体験しに行ってきました。
 早速、トリップスキンを装着。これ、ゴム製ではなくてサランラップの様な薄いビニール状の筒でありまして、内側にはローションが塗られているものの、なかなか上手く入らない。苦戦の末、それでもなんとか装着して同店の看板ムスメ楓ちゃんにパクリとやってもらいます。
 んー。確かにゴムよりは口内の粘膜の感触や温度がリアルに伝わってくるよーな。でもラップ自体の微かな固さが妙に気になるんですね。異物感といったらいいのかな? これなら、まだゴムの方が気持ちいいような。ま、たぶん慣れの問題なんでしょうねぇ。(96年8月「スコラ」)


BOOK「自殺直前日記」(山田花子 太田出版)「消えたマンガ家」(大泉実成 太田出版)「いつでも夢を」(原秀則 小学館)

 24歳で高層住宅の11階からダイブしたマンガ家・山田花子の『自殺直前日記』が売れているそうだ。その日までにノート20冊に綴られた痛々しい言葉の山からの抜粋。いじめられっ子ばかりを描いた彼女の作品が、自分自身のドキュメンタリーだったということがよくわかる。怖いモノ見たさで手に取る人が多いのだろうが、半端な野次馬気分で読むと後悔するほど暗い気持ちになることうけあいだ。しかしこれを読んだ後では、もう彼女のマンガを笑って読めなくなるのが残念だ。無責任に笑っていたかったのに。
 その山田花子を含む5人のマンガ家が「潰されて」いった姿を追ったのが『消えたマンガ家』だ。山田の他に取り上げられているのは富樫義博ちばあきお徳南晴一郎鴨川つばめ。そういえば「マカロニほうれん荘」の連載末期というのは、絵がどんどんおかしくなって行き、人間が壊れていく様を毎週実況中継しているようなものだった。子供心にも恐ろしいものを感じたのを思い出す。
 これまた読んでしまうとマンガを素直に楽しめなくなってしまう厄介な本だ。
 まぁ、それだけマンガ業界というのがメイクドラマな世界だということで、古くは「まんが道」、最近では「編集王」などのマンガ家マンガも多く描かれている。『いつでも夢を』もそのひとつ。このテーマの作品にしては珍しくラブコメタッチで軽めに描かれてはいるが、担当編集者の意見で内容をコロコロ変えさせられた挙げ句にボツをくらうというエピソードには、作者の苦い思い出が反映されているんだろうなぁ。しかしマンガ家マンガの内容の打ち合わせをしている時の編集者の表情って、見てみたい。(98年9月「SPA!」)



AV「アムラーをレイプせよ!!」(スーパースレイヴ)
 バクシーシ山下の「女犯」の、余りにリアルなレイプ表現に「これは犯罪じゃないのか?」と人権運動がかみついた事件以来ビデ倫のレイプモノに対するチェックが厳しくなったらしい。
 ドキュメンタリーっぽいレイプモノにはラストにネタバラシ的なご苦労さんカットが入るようになったのも、たぶんその影響なのだろう。「マジに見えるけど、合意の上の撮影ですよ」ということをいいたいのだろうが、見ている側にしてみりゃ、興ざめ以外の何者でもないっす。
 この「アムラーをレイプせよ」では、なんとレイプされたアムラー少女が、「気持ちよかったから、またして欲しい」と電話をかけてきてレイパーたちと再戦する。なんか、こっちの方が青少年に与える影響は悪いと思うんだけどなぁ。(96年10月「スコラ」)


BOOK「内定ゼロ!」(寺田薫 スターツ出版)「アジアン・ジャパニーズ2」(小林紀晴 情報センター出版局)

 就職氷河期といわれて久しいようですが、本当にそんなに仕事は無いのでしょうか。小さい会社とか工場とか飲食店なら、いくらでも就職口はあると思うんだけどなぁ。
 就職活動はしたけれど全滅だったという人たちのインタビュー集『内定ゼロ!』でも、みんなフジテレビとか電通とかIBMとか大手から狙ってるもんね。ま、そこから段々小規模な会社に落としていってもダメだったという話なんですが。
 ここで語られているのはトホホな失敗談というよりも、就職活動を通して気づいたポジティブな「自分探し」ストーリー。
 就職はできなかったけど、結果的に自分の本当にやりたいことがわかった・・・・・・なんて、みんな気持ち悪いくらいに前向きなんですね。全部で153社も受けて玉砕し、それをネタに昇華しちゃってる大川総裁は別格ですが。
 で、「自分探し」の定番といえばアジアへの旅行となるわけですが、海外で出会った日本人たちのノンフィクション『アジアン・ジャパニーズ2』。この続編ではアジアだけではなく、パリへも足を延ばしていて、作者が奇妙な西洋コンプレックスに悩むくだりが面白いです。
 ここでも登場する人たちはみんな日本人としての自己と対峙して、何かと闘っています。日本でのほほんと暮らしている僕らにはわからない何かと。
 しかしどうして海外で頑張っている人って、みんな人生を語っちゃうんだろう。やっぱり自己と対峙してしまったからなのでしょうか。(96年10月「SPA!」)


AV「奴隷女教師と変態女子校生」(アートビデオ)

 これは素晴らしい! もしかしたらSMビデオ史上に残る傑作かもしれません。
 一応、マニア専用のコスプレ館で奴隷女教師と変態女子校生を客が責めるという設定はあるのですが、そんなものを吹っ飛ばしてしまうほど主演の二人のM女が世界に入り込んでいるのです。特に二人がワンワン泣きわめきながら相互に浣腸をし、耐えるシーンの迫力といったら! ほとんど代々木忠監督のチャネリングファックでもやっているかのようにSMトランス状態になっているのです。だから二人は浣腸やムチ、ローソクでもエクスタシーを感じてしまうのです。こんなSMビデオが見たかったという方も多いのでは。(96年11月「お尻倶楽部」)


BOOK「まぼろし小学校」(串間努 小学館)「SMILE ROCK BOOKS」(ハイパークラフト)

 ラメ入りボンド、グルービーケース、電子ロック筆入、ミルメーク、レモン石鹸、ポキール、愛のひとしずく鉛筆・・・・・・。ページを開く度に涙が出て来そうな単語の羅列。昭和40年代の小学生文化の発掘にこだわり続ける日曜研究家・串間努(昭和38年生 千葉市)の集大成ともいえるのが『まぼろし小学校』だ。少し前に流行った「あるある」的なチョロいレトロ趣味とは気合いの違う本気の後ろ向き。なにしろ念力けむりの製造者まで突き止めちゃうんだから。
「バナナの叩き売りが『文化』であるなら『校門前の行商』もまた、文化である」という一文が串間氏の姿勢を物語っている。いやもう読んでいるだけで眠っていた記憶が甦りまくりっす。
 で、そんなモノに囲まれて育った小学生の僕(昭和42年生 浦和市)が「5年の科学」の付録のゲルマニウムラジオで聴いてショックを受けたのがTBSラジオの「スネークマンショー」だった。
 そして、あれから20年近くたち、ついに僕もこの3月にヒトの父になる。そんな時に「スネークマンショー」の仕掛人、桑原茂一が僕らの世代のための絵本『SMILE ROCK BOOKS』シリーズを作ってくれた。しかも細野晴臣朝本浩文らによるCD付で。「ああ、こんなビジュアルと音楽に親しんで育つ子供は、なんとステキなんだろう」と夢想したくなるほど、良質でおだやかな世界。
 でも子供って、『アンパンマン』の方を喜ぶんだろうなぁ、きっと。こっちの方が大人になった時、自慢できるのにさぁ。(96年12月「SPA!」)

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