ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

おやじびでお第2話 ロマンポルノは遠い憧れの巻

 前回はAVとの出会いについて書きましたが、私たちが中高生の頃は、まだまだロマンポルノやピンク映画*1が健在でした。ポルノ女優がAVに出たり、逆にAV女優がロマンポルノに出演したりということも多く、二つの業界はかなり密接に感じられました。代々木忠監督の不朽の名作「ザ・オナニー」のように、AVとして作られた作品がロマンポルノとして劇場公開されることもありました。
 まぁ、とにかくロマンポルノも我々には十分身近な存在、というか憧れの存在だったわけです。ポルノ映画館に行ってみたいというのは、我々の夢だったのです。
 ちょうど私が中高生くらいの時期というのは、青木琴美*2、美保純*3、岡本かおり*4といったアイドルっぽい可愛いポルノ女優が登場していました。美保純や、岡本かおりはその後、一般の女優になりましたっけ。そういえば、当時は小森みちことか松本ちえことか、元アイドルがロマンポルノに転身なんてことも、よくありましたね。今でいうMUTEKIみたいなもんですよ。漫才師の春やすこも「夕ぐれ族」ってロマンポルノに出てましたねぇ。
 ポルノ映画も、それまでの暗くて重そうな情念の世界から、明るくポップでエッチな路線へと変わりつつあった時代です。だから、中高生にとっても、親しみやすいというか、見てぇ! という気分をかき立ててくれてたのです。ポルノ映画館の前のポスターを見ては憧れていたのです。
 そんな中でも衝撃的な一本がありました。同世代の人なら、タイトルを口にするだけでも甘く切なく、そしてほろ苦い気持ちになるその作品は「セーラー服色情飼育」。私が中学三年生だった1982年に公開されました。
 何が衝撃的だったかといえば、もちろん主演の可愛かずみ。その後、普通のアイドル、女優として活躍したほどの可愛らしさ。そして細い身体なのに、大きくて形のいいオッパイ。この原稿を書くために当時のヌード画像を漁ったんですが、今見ても可愛いし(ちょっとクセはありますが)、スタイルも十分イケますよ。
 あの頃、たまたま入手できた可愛かずみのヌードグラビア*5をどれだけ使ったことか。
 そんな可愛かずみがセックスしてる姿が見られる、それも動いてるところを! というわけで、同世代の男子はみんな「セーラー服色情飼育」が見たくて見たくてしょうがなかったはずです。少なくとも、私の周りではそうでした。
 しかし、まぁ、公開当時は私も中学生ですから、それは到底見果てぬ夢でありました。
 それが高校生になると、私もずいぶん図太くなりまして、平気でポルノ映画館に入れるようになったんですね。最初はドキドキしましたけど、滅多にバレるもんじゃないし、バレたところで、いちいち怒られないことがわかってきました。この辺は前回にも書いたレンタルビデオ屋でAV借りるのと同じですね。
 真っ先に(か、2回目か3回目)に見に行ったのは、やはり「セーラー服色情飼育」でした。これだけはどうしても、見ておかなくてはいけない。もうその頃は可愛かずみはヌードを卒業して、シブガキ隊の映画「ヘッドフォンララバイ」とかに出演してました。逆にそんな女優さんのセックスシーンが見られる! と「セーラー服色情飼育」の価値は上がっていたわけですよ、私の中では。シティロードとかぴあとか*6で上映してる映画館を調べて行きましたよ。たぶん飯田橋とか神楽坂とかの映画館でした。
 さぁ、その期待の「セーラー服色情飼育」ですが、ストーリーはロリコン助教授が、可愛かずみに一目惚れして、なんとか彼女をモノにしようとして、将を射んとせば先ず馬を射よとばかりに、未亡人のお母さんを口説いて結婚しちゃう。そしてお母さんを殺してしまい(!)、一人ぼっちとなった可愛かずみを籠絡するというもの。ロリコン男役の下元史朗の怪演ぶりや、母親を殺してしまうという陰惨な展開で、ロマンポルノ好きの間でも評価が高い作品のようなのですが…。
 とにかく可愛かずみのハダカが出てこない! ほとんど、お母さん役の杉佳代子のカラミばかり! 怪男優と熟女の濡れ場を延々と見せられて待ちくたびれた時に、ようやく可愛かずみが脱いだ、と思ったら、オールヌードにはならず、オッパイを吸われるくらいのカラミで、アッという間に終わり。映画も終わり。
 ええええええええ。これで終わりですかああああああああ。
 後で聞いた話だと、可愛かずみはポルノ出演には抵抗があり、カラミ無しということでなんとか承諾したそうなんですけど、それにしても、これはショッキングな経験でした。大人って汚いと思いました。「セーラー服色情飼育」を見たという友だちは、みんな複雑な表情をしていました。ちなみにこの作品、主演女優がフルヌードにならない唯一のロマンポルノだとか…。
 そして1997年に、可愛かずみが自殺してしまうという事件があり、この映画に対する思いは、さらにほろ苦いものとなったのです…。
 その後も、ちょくちょくポルノ映画は見に行ってたんですが、内容が暗かったりシュールだったりするものが多くて、あんまりハマれませんでしたね。そして1988年、にっかつはロマンポルノの制作を打ち切り、日本は本格的にAV時代へ突入するのでした。

DMM DVD(ジーオーティー)2009年8月号掲載。現在は「TENGU」(ジーオーティー)にて「続おやじびでお」として連載続行中

*1:ピンク映画は成人映画全般をさすが、日活が1971年にポルノ映画制作に転身した際に、他との差別化のために「日活ロマンポルノ」を名乗った。

*2:1983年「セーラー服百合族 2」でロマンポルノデビュー。愛くるしい顔立ちで人気となる1985年からはAVに転身し、村西監督作品にも出演した。

*3:1981年「制服処女のいたみ」でロマンポルノデビュー。「ピンクのカーテン」でブルーリボン新人賞受賞。その後は一般映画・ドラマで活躍。「男はつらいよ」ではタコ社長の娘・あけみを演じた。

*4:森田芳光監督の「マル本噂のストリッパー」でロマンポルノデビュー。ちなみに共演はケンちゃんこと宮脇康之。その後はタレントとしてテレビなどで活躍し、さらにレーサーになったり、ヨガ講師になったり。現:岡本佳保里

*5:たぶん週刊プレイボーイ。もしかするとGOROか平凡パンチかスコラの可能性も…。

*6:どちらも映画やコンサートの情報誌。シティロードの方がマニアックでサブカル色が強く、当時の映画少年、ロック少年はこっちを読んでいた。1993年に休刊。ぴあは当時ほどの勢いは無いが健在。

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