ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

現在の正しいアダルトビデオの作り方

 明日発売の「ビデオザワールド4月号」(コアマガジン)に掲載されているカンパニー松尾バクシーシ山下・小坂井徹の鼎談が興味深い。
 これは松尾・山下が毎回同業者をゲストに招いて業界の話題を語り合う「エロエロ・ブラザース、近況を語る」という隔月連載なのだが、今回はすっかり売れっ子監督となった小坂井徹*1に、その成功の秘密を聞いている。小坂井と言えば、松尾らと同期デビューのベテラン監督で、高槻彰率いるシネマユニットガスに所属し、平野勝之やゴールドマンなどと活動を共にしていていたなどアバンギャルド系の環境にいながらも、本人は極めてオーソドックスな作風で、AVマスコミ的には(そんなのあるのか?!)あまり取り上げられることの少ない人だった。
 しかし、松尾を除けば、同期の「個性的な」監督たちが揃ってAVの本流からはじきだされている現在、コンスタントに月3〜4本の作品を撮っているというから、確かに「売れっ子」といっても過言ではない。
 といっても、現在のAV業界で「売れる」監督になるということは、どういうことなのか。この鼎談では、AVにまつわるあらゆる幻想を残酷にはぎ取っていく。
 小坂井は自らを、工場長だと言う。作品を作るのではなく商品を作っているのだとはっきり自覚している。
「ウチの工場からは食中毒を出さないよう、品質管理は徹底する」
という言葉は清々しくもある。
 監督には女優のキャスティング権もなく、メーカーが構成やチャプターまで練り上げた企画が渡される。そんなシステマチックな制作方法を松尾・山下は、ファーストフードやファミリーレストランに例える。本部から送られてきた冷凍肉を、マニュアルどおりに調理するだけ。それで面白い作品って出来るのかと問いかける。
 しかし、小坂井はこう答えた。
「AVは面白くちゃダメだよ」
 面白いと見入ってしまうから抜きづらい。やはり早送りしやすいとか、チャプターで切ってどこからでも見られるようにを考えることが今の時代のAVには大切だと。
 あまりに夢の無い考え方ではあるが、これが現在のすぐれたAVの作り方なのだ。というか、この考え方を否定すると、現在のAVのシステムからは、はみだしてしまう。
 この他、幻想でコーディネートされていないAVの制作の現場が色々語られているので、興味のある方は、ぜひこの鼎談を読んでいただきたい。
 そして、その5ページ後に、そのシステムから外れたところで、どう闘えばいいのかという話を、僕がパンチ監督にインタビューした原稿の掲載されているので、合わせて読んでいただけると幸いだ。
 

*1:ちなみによくモデルプランツのライブを撮影してもらってました!

Amazon 【最大70%OFF】ミュージックセール