ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

これからの編集者はもっと頭を固くしないと!

 以前、「エロ本業界の厳しすぎる現状について書きました」というエントリーの中でも「現在のエロ本の読者は40~50代でネットが出来ない人が大半」という話を書きましたが、これはエロ本に限らず、一般誌でも似たような状況だと思われます。

 週刊誌などは、50代以上がメイン読者なわけですが、誌面を作っている編集者はもっと若いんですね。つまり「おじさんって、こういうのが好きなのかなぁ」と若い人が想像して誌面を作っているということになります。この辺のギャップって、結構大きな問題になってるんじゃないかなぁ。
 読者が自分より、ずっと年上ということを考えると、これからの編集者はあんまり頭が柔軟だとよくないのかもしれません。
「もっと頭を固くしないと!」
 これが今後の編集者が心がけないといけないポイントになるのです……。

 半分冗談みたいなつもりで書いていますが、実は意外に正しいのかもしれないですね。少なくとも、今、雑誌を読んでいる人は、既に先端の人ではないという事実からは、目をそらしちゃいけないんじゃないか、と思います。


 総世帯の半分以上が「月に一冊も雑誌や週刊誌を買っていない」現実

 また雑誌や週刊誌、書籍は4割~5割近くに留まっている。つまり仮に購入1世帯につき「1人が1誌のみ」の割合で雑誌を購入していたとしても、全世帯のうち6割近くは「一か月で1誌も雑誌を買わなかった」という計算になる。実際には週刊誌などのように定期的に買う事例が多数想定できるため、世帯単位での購入実態はさらに低いことになる。

 こういうニュースを読むと、つい、それでも雑誌を読んでいる人は情報リテラシーの高い人、と思ってしまいがちですが、むしろ「取り残されちゃった人」という認識の方が正しくなっているのかもしれません。

 いや、それでも僕は紙の雑誌が好きなんですけどね……。

「note」でコンテンツを販売してみる。

 新しいネットサービスには、ついつい手を出してしまう(そしてすぐに放置してしまう……)のですが、また面白そうなサービスがあったので登録してみました。
「note」です。ネット雑誌「Cakes」を運営するピースオブケイクが新たに始めた個人向けメディアプラットフォーム、なんだそうです。
 まぁ、基本的には写真やテキスト、サウンド、ムービーなどを投稿して、お互いに「スキ」(いいね!)したりコメントしたりというFACEBOOK的なSNSなのですが、そうしたコンテンツを販売、つまり値段を付けて公開できるというのが面白いところです。

安田理央 note

ちなみにムスメの安田三号画伯もやってます。

安田三号 note


 とりあえず、僕も何か売ってみようかと思い、1999年にレコーディングしたモデルプランツの「君がいなくても」の音源、
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「君がいなくても」(1999年バージョン)モデルプランツ

1992年に発売した2ndシングルに収録した「ぼくのバスケットケイス」の音源、
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「ぼくのバスケットケイス」(1992年バージョン)モデルプランツ

 あと10年くらい前に撮影した微エロ画像を販売してみました。
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LOVE FOR SALE #00
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LOVE FOR SALE #01


 あらかじめ振込先の銀行口座を登録しておけば、後は値段を決めるだけで、もう販売開始という恐ろしくなるほどの簡単さ!

 値段は税込100円から1万円までの間で決められます。手数料は売上金額から決済手数料(売上金額の5%)を引いた額の10%となかなか良心的。
 音源を一曲100円で売るなど、ミュージシャンにとっては使いやすいんじゃないでしょうかね。
 販売の方は、まだ動画が未対応なのがちょっと残念。動画を簡単に安く売るというのは、結構可能性があるような気がするんですよね。対応を期待します。

 これが上手くいったりすると、インディーズのクリエイターにとってはちょっと面白いことになりそうですね。

 これまでにもgumroadなどの同じようなサービスがありましたが、noteは国産で、しかもやってる人の顔が見えるという安心感が大きいのかな、と。

※ちょっと追記しました。

続おやじびでお 第9話 平成風俗の栄華と衰退の巻

 90年代の約10年間に「平成風俗ブーム」がありました。それまでのソープ、ファッションヘルス、ピンサロとは違った新しい風俗。具体的にはイメージクラブや性感マッサージ(美療系)、性感ヘルス*1といった業種の店が爆発的に増えたんですね。

 そのきっかけとなったのが1991年にオープンした池袋「R」*2という店でした。言葉責めや前立腺マッサージなどSMクラブから派生したサービスを売りにしていて、女の子は脱がないし、触らせない。でも、従来の風俗とは比べ物にならないような快感を味わせてくれると大評判になりました。
 同店のエースが南智子さんという人で、彼女は代々木忠監督の「性感Xテクニック」シリーズ*3に出演し、その凄まじいテクニックを披露したんですね。彼女の手にかかると、男優が女の子のようにヒィヒィ言わされてしまうのです。彼女をはじめとする性感マッサージ嬢たちのプレイが、その後AV業界を席巻する「痴女」像に大きな影響を与えるわけですね。
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 そんな過激で先鋭的なプレイの「R」ですが、やがて姉妹店として「S」という店を出します。こちらはグッと普通の風俗に近いサービスなのですが、女の子が若くて可愛くて、それでいて、生フェラにアナル舐め、素股といったハードなプレイを格安料金で楽しませてくれるとあって大人気に。「S」のある雑居ビルの階段には行列が出来ていました。

*1:性感とはついているものの、サービス的にはファッションヘルスとあまり変わらない。当時は風営法の許可をとっているのがファッションヘルス、無許可店が性感ヘルスという区分だった。

*2:この「R」のグループが次々と店を出し、平成風俗ブームを牽引したが、1995年に国税局の調査が入ったことから崩壊してしまう。当時グループの年商は20億円以上だったとか。

*3:アテナ映像。10作以上撮られた人気シリーズ。南智子は、のちに作家となり漫画原作なども手がけた。

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春原未来のこと、そして日本のAV女優の進化について考えたこと

 先日、レビューの仕事で「100人斬り ついでに30発も大量ゴックンしちゃいました! 春原未来」(アイデアポケット)という作品を見て、唸った。
 人気企画単体女優である春原未来が、100人の男優を次々とフェラや本番で抜いていくという内容だ。確かにハードではあるが、こうした作品はこれまでにもたくさん作られてきていて、特に驚くほどのことはない。
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 しかし、この作品での春原未来がすごいのだ。最初から最後まで笑顔を浮かべて、実に楽しそうに男たちにむしゃぶりついていく。
 カウントしながら見ていたのだが、顔射27発、口内発射が37発、胸や尻などへの射精が40発。挿入は54回まで数えられた。
 彼女の顔も身体も大量のザーメンでドロドロに汚れていく。だが、彼女の表情は曇ることはない。その笑顔には神々しさすら感じてしまう。
 こういうシチュエーションならば、普通は淫乱痴女か、あるいは痛々しく凌辱される女に見えてしまうものだが、春原未来はあくまでも男たちを喜ばせるために尽くす。作業的に「抜く」こともしない。一回一回きっちり心を込めてセックスを見せる。もう天使としか、言いようがない。

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「生者と死者 酩探偵ヨギ ガンジーの透視術」(泡坂妻夫 新潮文庫)

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 表紙には大きく「取り扱い注意」の札の絵が書かれ、「『消える短編小説』入ってます!」の文字。そして帯には、「お願い。はじめは各頁を切り開かず、必ず袋とじのままお読み下さい。」のコピー。

 そう、この本は、16ページごとに袋とじにされていて、そのまま読むと25ページの短編小説。しかし、袋とじを切り開くと、まったく別の194ページの長編小説になるという凝った仕掛けになっているんですね。
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 作者はマジシャンとしても活躍した推理作家・泡坂妻夫。本作でもマジックが重要なテーマとして使われています。そしてこの小説自体が、マジックのような構造を持っているんですね。
 短編小説として使われる25ページが、長編小説の一部として取り込まれると、その文章が全く別の意味を持ち、元のストーリーはすっかり消えてしまう。なるほど、これは確かに「消える短編小説」です。なんという緻密な計算の上に書かれているのでしょうか。

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続おやじびでお 第8話 AV雑誌ノスタルジアの巻

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 先日、「ベストビデオ」*1が休刊しました。1986年創刊で、25年の歴史でした。創刊号のグラビアは沙羅樹*2ですか。うーん、時代だなぁ。

 ここ数年で「オレンジ通信」*3「ビデオメイトDX」*4と老舗がバタバタと倒れ、これでレンタル時代からのAV雑誌で、現存しているのは「ビデオ・ザ・ワールド」*5だけになってしまいましたね。雑誌業界が厳しいと言われるようになって久しいわけですが、なんとも寂しいものです。特にAV雑誌黄金時代を知る者にとっては……。

 というわけで、今回はAV雑誌の思い出について書いてみましょう。いわゆるAV誌と言われている雑誌の中で、最も古いのは1981年末創刊の「オレンジ通信」でしょう。その後「アップル通信」*6さくらんぼ通信」「バナナ通信」など、フルーツ+通信のタイトルをつけた類似誌をたくさん生むほどの人気を博しました。
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 しかし、創刊当初の「オレンジ通信」は、実はAV雑誌ではなかったんですね。AVはむしろ脇役で、ビニ本裏本、そして裏ビデオの紹介の方がメインでした。そう、80年代の半ばくらいまでは、裏ビデオの方が勢いがあって、一般のAVは「表ビデオ」なんて言い方をされていたほどなんです。これは当時の「通信」系雑誌全てに共通していました。

*1:三和出版発行。女の子にスポットをあてたオーソドックスな作りで安定した人気があった。創刊時は「ベストマガジン」モロパクリな表紙だった。現場取材中心の別冊「スーパードキュメント」は継続している。

*2:1986年にデビューしたAV女優。村西とおる軍団の一員として活躍。2006年に復活した。

*3:東京三世社発行。27年という長寿を誇ったAV雑誌の代表格。後期は裏モノ情報がメインになっていった。ちなみに創刊前に同名の少女漫画があるが、誌名はそこから取られた?

*4:コアマガジン発行。いち早くインディーズ路線を開拓。思い入れたっぷりの読み応えのある記事が多く、業界からの支持も厚かった。

*5:コアマガジン発行。AVを作品として評価するというオンリーワンの道を歩む。裏モノガイド誌としても定評がある。今でもDVDをつけないという硬派な姿勢もステキ。

*6:三和出版発行。オレ通と並ぶ老舗誌だった。「女体解剖実験室」という人気企画が大変エロくて実用度も高かった。

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エロの「デザインの現場」(有野 陽一 アスペクト)

http://instagram.com/p/lWLuqpjW-6/

 エロ本の先鋭的なデザインについて、そのキーマンとなった9人のデザイナー(編集者含む)に取材した一冊です。

 URECCO、夜遊び隊、チョベリグ、SMスピリッツ、TOPAZ、デラべっぴん、すっぴん、BOYES、GOKUH、BODY PRESS、ビデオザワールド、Chuスペシャル、ザ・ベストマガジン、マニア倶楽部……。紹介される数々の名エロ本。誌名を上げていくだけでも、もう目頭が熱くなってきますね。
 僕も書かせてもらった雑誌がたくさんありますし、登場するデザイナーたちともずいぶん仕事をしました。中でも、野田大和氏とは、ゴールドマン監督と三人で「Ha!」というユニットを一緒にやっていた関係もあって、一時期はよく行動を共にしていました(実は本書でも、野田氏の項で僕の名前も登場しています。嬉しい!)。

 誌面で紹介される彼らの作品……、表紙や企画ページ、AVのパッケージなどは、うっとりするほどかっこよく、インパクトのあるものばかりです。それでいて、エロの宿命なのか、どこかとぼけたユーモアを感じさせてくれます。
 登場するデザイナーたちは、みなさん実際に他のジャンルでも活躍していますし、その才能は単にエロ本の枠に収まるものではないのですが、やはりこの作品群にはエロならではの魅力が感じられます。

 デザイナーに限らず、エロに関わる才人には「そこまで出来るなら、エロじゃなくて一般向けをやればいいんじゃないですか」と言う言葉がよく向けられます。でも、エロというジャンルだからこそ活きる表現というのが確実に存在すると思うのです。
 本書はデザインという切り口から語ったものですが、それは当然エロ本自体の歴史を語ることでもあります。あまり取り上げられることのないエロ本の内幕についての貴重な証言も数多く読むことが出来ます。

 本書の制作中に、「ビデオザワールド」と「Chuスペシャル」の休刊のニュースが入ってきたことが綴られています。あとがきにも「この本でとりあげたエロ本のほとんどすべて、今はもうありません」と書かれています。そして現在残っているエロ本には、先鋭的なデザインを受け入れる余裕はありません。エロ本というジャンルは確実に終焉を迎えています。

 著者はあとがきでこうも書いています。
「『アダルトのデザイン』をひとつの歴史として残したい。それ以上でも以下でもなく、これがこの本をつくる趣旨であり、ぼくの純粋な気持ちでした」
 本書がこの時期に出たのは、必然とも言えます。

 紹介されているデザイナー、こじままさき氏は、やはり紹介されているアルゴノオトこと古賀智顕氏のデザインに憧れて、「URECCO」のデザイナー募集に応募したそうです。
 願わくは、本書をきっかけにエロのデザインの芳醇さを知り、それを受け継ぐ人が生まれますように。

 その力を活かす場は、エロ本ではないかもしれないですけれど。

エロ本のデザインに興味がある方は、WEBスナイパーにて、ばるぼら氏が連載している「ポルノグラフィック・デザイン・イン・ジャパン」もぜひお読み下さい。

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