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ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

続おやじびでお 第17話 通販ビデオのマニアックな世界

AV 原稿アーカイブ

 現在、AVはセル(販売用)が中心となっていますが、ほんの10年ほど前まではAVは基本的にレンタルで、セルはインディーズと呼ばれ、あくまでもマニアックなものという扱いでした。
 そして、さらにその前には通販ビデオと呼ばれた、本当にマニアックなAVが密かな人気を集めていたのです。

 もともとAVが誕生した80年代初頭には、まだレンタルショップ*1がなく、AVは販売専門でした。もちろんVHSとベータ。一本が30分収録で一万二千円から二万円という、今では考えられないような価格でした。よっぽど好きな人じゃないとAVは見られない、そんな時代だったのです。そのためか、SMモノなどマニアックで暗い内容の作品が目立っていました。

 そして80年代半ばになると、レンタルショップも一般的になり、AVは借りて見るものになっていきます。それでもレンタル料金は一泊二日で定価の一割、つまり千二百円以上と、かなり高価ではありましたが…。
 ともあれ、レンタル時代になり、誰もが手軽にAVが見られるようになると、その内容も一般向けになっていきます。若くて可愛い女の子が普通のセックスをする。そんな作品が中心になっていきました。AVアイドルと呼ばれる女の子も登場し、テレビ番組に出演するなど、AVはどんどんメジャーな存在になっていきます。

 しかし「AVって、そんなもんじゃないだろ! もっと淫靡なもんだろ!」と思った人がいたのかどうか。この頃にブラックパックと呼ばれる販売用AVが登場します。ブラックパックについてはこの連載の第10話で紹介しましたが、ま、犯罪スレスレのハードなSMプレイや露出度を競うような過激な内容のビデオでした。
 ブラックパックのブームは3年ほどで終焉を迎えるのですが、時を同じくして、よりマニア向けのAVが蠢き出していました。それが通販ビデオです。
 文字通り、マニアがマニアのために作ったマニアックなAVです。本格的な緊縛やキャットファイトといった普通のセックスでは興奮できないマニアのためのプレイを撮影したもので、マニア誌の広告などで、通信販売をしていたのでした。
 こうしたマニア向けの通販ビデオを取り扱い、その筋では聖地と呼ばれたのが1985年にオープンした高田馬場の「タイヨー」*2です。通販じゃないと手に入らないマニアビデオが、ここでは店頭で購入できるということで、喜んだ人は多かったようです。自宅にマニアックなビデオが郵送されるというのは、家族がいる人にはリスクが大きいですからね。
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2012年の閉店当日の高田馬場タイヨー。

 こうして90年代前半に通販ビデオは盛り上がりを見せていきます。佐藤義明監督による「SMマニア撮り」シリーズ(ジュリアン)*3や脚フェチ向けの「天下一品」シリーズ(TF-CLUB)*4、そしてノンヌードの本格ボンデージにこだわる「エキゾチックボンデージ」(小原譲プロダクション)*5など、セックスが全く登場しない作品が人気を集めていました。
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小原譲プロダクションの「ボンデージブロッサム」

 中でも異彩を放っていたのが、松下一夫監督による「美少女スパイ拷問」シリーズ(松下プロ)*6。アニメ「ルパン三世」第一話の峰不二子が機械にくすぐり責めされるシーンに衝撃を受けたという松下氏が、大の字に拘束された女の子をひたすらくすぐるというもの。かなり大量の作品がリリースされていましたが、どれも捕らえられた女スパイが拷問を受けるという設定で、松下氏本人による責めや尋問のセリフもほとんど同じ。ワンパターンの美学というか、マニアにとってはそれでいいんでしょう。ちなみに、くすぐり以外にも電動マッサージ器で何度もイカせるという責めも定番で、これが現在に続くイカセ物の元祖かもしれないですね。そういえばイカセ物の名門メーカー、ベイビーエンターテイメントの社長も、松下氏の作品に影響を受けたなんて言ってましたっけ。
 この他にもラッシャーみよし監督による超フェチメーカーのハウスギルドや、のちにフェチの総本山となるアロマ企画もこの頃に誕生していますね。
 ゴールドマン監督もストロベリー社名義で着衣ボンデージのインディーズ作品を量産していました。
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ストロベリー社の「GAL'S GAG」

 また、同時期に盛り上がりを見せていたブルセラビデオも、ショップが自分たちで撮影して販売していたという意味では、同じ流れにあるといってもいいでしょう。
 AV史的に言うと、この後にビデオ安売王によってセルビデオが一気に広がり、インディーズビデオブームへとつながっていくわけですが、一般的な広がりを見せていくにつれて、かつてのレンタルAVと同じようにマニア色は薄れていっちゃうのですね。レンタルAVと完全に立場逆転した今では、セルビデオがマニアックという図式は全く意味がないものになりました。フェチの代名詞だったアロマ企画も、普通の痴女メーカーみたいになっちゃってますしねぇ…。

 しかし、やっぱりマニア向けの自主制作AVというのは生き続けているのですね。秋葉原のSM専門店のサンショップ*7あたりに行くと、普通のAVショップでは見たことがないようなマニアックなAVがいっぱい。真空パックでの窒息プレイが売りのココアソフトや、着衣のままで縛られた女がジタバタしているだけのDID企画、針で刺しまくる苦痛系のスクラムなど。ああ、こういう世界は不滅なんだなぁと、何だか嬉しくなります。
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ふぇち工房の「靴汚し」。ひたすら泥にまみれた靴の映像が……。

 しかし店長に話を聴いてみると、こうしたマニアックな作品は、DVDではなく配信の方が主流になりつつあるとか。前述のココアソフトも、現在は店舗での販売を中止しているみたいですしね。レンタル全盛時代に、一足先にセルをやっていたように、マニア系の方が時代を先取りしてるようです。

TENGU(ジーオーティー)2011年8月号掲載。手作り感溢れる通販ビデオのいかがわしいムード、好きでした。僕も制作を手伝っている小林電人監督も初期は手作り感溢れる作品を作ってましたねぇ。

*1:ビデオソフトのレンタルが始まったのは1982年。84年頃から本格化し、89年には全国で一万五千店以上に増加。しかしそれをピークとして、バブル崩壊の影響などから、以降は減少。

*2:ミリオン出版ワイレア出版などを擁する大洋グループ直営のアダルト本やAVの専門店。2012年に閉店。

*3:カメラが固定で撮りっぱなしだったりと素人っぽい作りが生々しかった。スカトロプレイが多いのも特色。

*4:もともとは東京覆面倶楽部という制作集団が母体。実は初期には筆者も関わっていた。現在もパンストを中心としたフェチ系作品を販売している。

*5:アーヴィング・クロウに影響を受けた着衣緊縛にこだわった作品を撮り続けている。どことなくエキゾチックなムードが魅力的。最近は下着への興味が強い。

*6:今なおくすぐり作品を撮り続けているくすぐり界の巨匠。オフィシャルサイトを見ると、かなり広範囲な活動をしている模様。

*7:SMAV専門店。店内ではイベントやAVの撮影が行われることもある。

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