ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「エロの敵」参考資料

「女優・林由美香」を監修した柳下毅一郎さんがこの本を作るにあたって、AVの基礎資料がないということで苦労したと話していました。確かに年鑑などのその年にリリースされたAVを全て網羅したリストは存在しないのですが(何しろ年間の総リリース数は数万本単位ですから)、優れた参考資料は意外にあるんですよ。
 ちなみに「エロの敵」の巻末で参考資料として表記したのは

(*は雑誌)

webでは

といったところです。注釈などの参考にした、エロとは関係ないものも多いですね。

その中でもエロメディアについて書かれた本の中で特に重要と思えるものをいくつか紹介したいと思います。ほとんどが入手困難ですが、古本屋やオークションを丹念にチェックすれば見つかるかもしれません。エロ研究者(笑)なら、押さえておいて欲しい重要資料です。

「アダルトビデオ20年史」(東京三世社 1998年発行)

 AV情報誌の老舗、「オレンジ通信」の1998年12月号増刊。1982年のビニ本時代からインディーズビデオが盛り上がる1998年までのAVの歴史をほぼ完全にフォロー。豊富なカラー図版で大量のAVモデルを紹介しているのはもちろん、沢木毅彦の私的な視点からAVアイドルの変遷を追ったコラム、藤木TDCのAVアイドルスキャンダル史、SMビデオ史、ストリップに移ったAVアイドル、インディーズビデオ10年史、「ビデオ安売王」始末記、故・東ノボルの企画モデル観、豊田薫・神野龍太郎・高槻彰インタビュー、ブラックパック物語、日比野達郎の男優私史と読み物も充実。そして何よりもスゴイのが巻末のアダルトビデオ年表。ここまで詳細な年表は他に類を見ない。全560名のAV女優リストも圧巻(生年月日・スリーサイズ付)。1998年までのAVのことなら、この一冊があればだいたいわかる最重要の一冊だ。99年以降もフォローしたコンプリート版の出版が望まれる。

「80年代AV大全」(双葉社 1999年発行)

双葉社好奇心ムック36として発行。80年代の代表的なAVアイドル50人を各人たっぷり2ページ(1ページの子もいる)約二千字を費やして紹介。各主要作品リストもあり、情報量はかなり多い。村西とおる代々木忠、安達かおる、小林ひとみ林由美香、加藤鷹へのインタビューもボリュームがあり読み応え満点。企画モノの撮影現場の裏話を語るラッシャーみよしの回顧録も面白い。巻末の「80年代AV完全データ」は、もちろん完全ではないが、かなりの本数を短いレビュー付きで掲載しているのがありがたい。装丁が地味で損をしているような気がするが濃厚な一冊だ。

「性メディアの50年」(宝島社 1995年発行)

別冊宝島240として発行。別冊宝島はこの他にも多くの性メディア関連本を出していたが、ここではカストリ雑誌から温泉地で売られるエロ写真、ブルーフィルム、官能劇画、レディースコミックと最も幅広いテーマをあげており、日本のエロメディアの全容を俯瞰できる。永江朗が日本のエロ出版社の系譜をたどる「アダルト系出版社のルーツを探せ!」 「エロの敵」でも引用させてもらった座談会「さらば! 自販機蟹工船!」、「道頓堀劇場がマナ板本番ショーをやめたわけ」など、興味深い記事が目白押し。特に裏世界からの視点で裏ビデオ、ビニ本、裏本、エロ広告について書いた夏原武の記事は、この種の本ではつい手薄になりがちな面なので、貴重である。

「戦後セクシー雑誌大全 実話と画報・篇」(まんだらけ出版 2001年発行)

クィックジャパンを作った赤田佑一の幻の雑誌「あかまつ」の別冊。1956年から1980年に至るエロ雑誌の歴史を集大成。123種のエロ雑誌をカラーで紹介する「日本エロ雑誌カタログ」故・米沢嘉博の「戦後日本エロ雑誌クロニクル」、当事者へのインタビュー(実話誌特集の下品な書き文字職人へのインタビューが秀逸!)。さらにこの手の雑誌とは流れが若干違うと考えられる「Jam」を大々的に特集しているのも、サブカルエロ好きにはたまらないだろう。赤田佑一らしい偏執狂的な情報量に圧倒される。「あかまつ」本誌と共に別冊もこの一冊で終わってしまったのが残念。告知されていた奇譚クラブ特集の2号が読みたかった。

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