ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

レコードをつまみに飲む

f:id:rioysd:20210826192829j:plain
 レコードがブーム、CDの売り上げを上回った、なんて話を聞いても「ふーん」と他人事でした。

 レコードプレーヤーを手放したのは、たぶん二十代半ばくらい。引っ越しの時に、もう使わないと思って処分しました。思い入れがあったり、貴重だったりするものを数十枚だけ残して、レコードのコレクションも売るなりあげるなり捨てるなりして一気に処分。
 それから三十年ほど、レコードプレーヤーを持たない生活を続けていました。
 もともとレコードは色々と面倒くさくて好きではなかったのです。ジャケットから出して、内袋から出して、クリーナーでホコリを取って、おっとレコード針もクリーニングして、そっと針を落としてようやく聴ける。さらにA面が終わったら、ひっくり返さないとB面も聴けない。そして、かけている間はおとなしくしてないと針飛びしてしまう。下手すれば盤面に傷をつけてしまう。そうしたら、もうおしまいだ……。
 そうした面倒臭さを解消するために、レコードを買ったらすぐにカセットテープに録音して、もっぱらそっちを聴いていました。90分テープの片面に録音すればAB面をひっくり返す手間もいらないですし(昔のアルバムは45分以内がほとんどだったのです)。

 ということで、当時からレコードよりもカセットテープの方が思い入れがありました。貸しレコード屋を愛用していましたしね。とにかく一枚でもたくさん聴きたかったのです。
 80年代後半にCDが普及してくると、その手軽さに飛びつきました。そして、前述のように、あっさりとレコードプレーヤーも手放して、レコードとは無縁の生活を三十年過ごしてきたわけです。
 カセットテープには思い入れがあったので、ネットオークションで整備済みの古いラジカセを入手して、カセットテープをコツコツと集めたりしてました。
 どうせアナログなら、レコードよりもカセットの方がいいや。そんなスタンスだったのです。

f:id:rioysd:20210826193530j:plain
SONY CF6500。1977年発売のジルバップシリーズ第一号。

 ところが少し前に、仲良しのDJフクタケさんと「80年代洋楽を聴きながら飲みましょう」という話になり、フクタケさんが大量の7インチレコードと共にポータブルプレーヤーを持参して遊びに来ました。
 ポータブルプレーヤーでシングル盤をかけながら飲む。これが実に楽しかったんですね。一曲ごとにチマチマとレコードを変えていく。面倒くさいけど、それが面白い。酒やつまみと同じテーブルに載せられたプレーヤーの上で、くるくると回るレコードが実に愛らしい。


 いや、実は前にもレコードプレーヤーくらいあった方がいいかなと思ったことはあったんですが、ターンテーブルを置くスペースを用意しなくちゃいけないことを考えて挫折しました。うちの仕事場にそんな余計なスペースはない。
 でも、フクタケさんが持ってきたポータブルプレーヤーなら、使わない時はしまっておける。スピーカー内蔵なのでアンプもスピーカーも用意する必要はない。まぁ、この時は実は内蔵スピーカーだとモノラルだし、あまり音がよくないということで、うちにあった小さなBluetoothスピーカーに有線でつないで鳴らしたんですが、これが結構いい音だったんですよね。

f:id:rioysd:20210826194439j:plain
7年前に5千円で購入したCheero Sound Garden。結構使ってます。

 そのフクタケさんのポータブルプレーヤーは、Vestaxのhandytrax USBというもの。DJ機材で知られるVestaxらしくボリュームのフェーダーがDJミキサーっぽくなってたり、デザインもすごくよい。USBでデジタル出力もできるし、乾電池でも動作できる。ピッチやトーンも調整できる。
「ポータブルプレーヤーなら絶対コレですよ」とフクタケさん。
 でも実はVestaxは2014年に倒産しているということもあって、もともとは1万円くらいだったこのhandytrax USBは現在プレミヤ価格で取引されているとか。
 Amazonで売られてる中古を見たらなんと7万5千円の値段がつけられてましたよ。それはさすがに手が出ない。
 でも、こまめにヤフオクをチェックしていたら、運良くかなり安い値段で落札することが出来ました。

f:id:rioysd:20210826193934j:plain
カバーをつけると持ち運びが出来るのが嬉しいVestax handytrax USB。デザインも素敵。

 というわけで半月ほど前にVestax handytrax USBを入手。さっそく近所のディスクユニオンに飛んでいって、中古レコードを漁りました。
 近年のレコードブームで少し相場が高くなっているそうですが、それでも安いレコードは多い。シングルもアルバムも数百円で結構いいのが買える。楽しくていきなり一日で色々とりませぜて12枚も買ってしまいましたよ。

f:id:rioysd:20210826194128j:plain
ディスクユニオン高田馬場店で9枚購入して……
f:id:rioysd:20210826194211j:plain
さらに新宿店にも行って3枚追加購入(笑)。

 安いということもあって、なんか毎日のようにチョコチョコ買ってしまうようになりました。これまでショップに行っても、自分には無縁だと素通りしていたレコードコーナーを漁れるようになったのも楽しかったんですよね。古本屋なんかにもレコードコーナーあったりするし。

f:id:rioysd:20210826194320j:plain
渋谷に行けば当然買っちゃうし
f:id:rioysd:20210826194349j:plain
神保町に行っても、そりゃあ買っちゃいますよね!
f:id:rioysd:20210826195035j:plain
休日は地元の江古田でまた買っちゃう!

 ここ十数年くらいはCDを買っても、すぐにPCに取り込んで、データの方を聴くことが普通になってました。CDを買っても、CDとして一度も聴いてなかったりするわけです。こうなると、CDを買うって意味はなんなんだろうと思うようになり、ここ数年、音楽はすっかりサブスクリプションサービスで聴くようになってしまうと、完全にCDを買うという行為からは縁遠くなってしまいました。

 その点、レコードというのは物欲をそそるところがあります。音楽自体はサブスクで聴くので、単純にそれを持っていたいか、ジャケットが珍しいか、それをプレーヤーでくるくる回したいか、そういうところだけが買うかどうかの基準になります。なので一番好きなのは洋楽の日本盤シングル。ジャケットのコピーが変だったりするのを楽しんでます。
 アナログの方が音がいいなんて話もありますが、ポータブルプレーヤーとポータブルスピーカーで聴いてる人間なんで、そこは全く気にしてないです。
 
 早めに仕事を切り上げて、レコードをかけながら、ひとりで軽く酒を飲む、というのが最近の楽しみになってしまいました。
 かつては面倒くさいだけだった、かけるまでの作業も、それ自体が酒のつまみだと思うと、楽しいんですよね。
 飲んでるテーブルの上で、くるくる回るレコードを見ながら、というのも大事なポイントです。

 ただ、買ったレコード袋を抱えて街を歩くのが、なんか気恥ずかしいんですよね。今どきのナウな若者みてえ! なんて思っちゃう。自意識過剰なおじさんとしては。

 さて、今日は金井克子の「他人の関係」と、トーキング・ヘッズの「ワイルド・ワイルド・ライフ」日本盤シングルあたりをつまみに大好きなタリスカーハイボールをいただきますか。
 ちなみに「ワイルド・ワイルド・ライフ」のジャケットに書かれたコピーは「NewYork最先端、世界をリードするクリエイター集団トーキング・ヘッズ。湧き出るダンスビートとポップ・センス。お待ちどうさま、ニュー・シングル!!」です。かっこいい!

Amazon 【最大70%OFF】ミュージックセール