ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

続おやじびでお 第13話 テレビでオッパイが見られた時代

 ネットには無修正が溢れていて、誰でも簡単にモロなエロが楽しめてしまう時代ではありますが、その一方でテレビ番組のエロ規制はずいぶん厳しくなってますね。地上波では、もうほとんどオッパイを見ることは出来なくなっています。

 私が子供の頃の70年代というのは、テレビにはもっとオッパイが溢れていました。ゴールデンタイムでも平気でオッパイが出てきたものです。大人気ドラマだった「時間ですよ」*1なんて、銭湯が舞台だからということで、女湯のヌードシーンがガンガン出てましたし、土曜の昼にやっていた「独占!女の60分*2でもエロネタが多かったですねぇ。土曜は半日で学校が終わるので、速攻で帰って見たものです。

 また深夜番組のパイオニア「11PM」*3もエロネタの宝庫でした。新聞のテレビ欄で「エロそうなサブタイトルだったりすると、もう見たくて見たくてしょうがありませんでした。早く親が寝たりすると、こっそり起きてイヤホンで聞いたりして。でも、おかげで親が起きてくる音が聞こえなかったりして。いや、それよりも何よりも、テレビ欄に書いてあるタイトルが全然内容と違ってることが多かったんですよ。「女子大生、夜のお勉強」とか書いてあってドキドキしながら見たら、本当に勉強してるだけだったとか……。
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11PM」三流劇画特集(1978年)

*1:名演出家・久世光彦が手がけたコメディドラマ。第一作は1970年にスタート。以後、1989年まで6シリーズに渡って放送された。主演は森光子。堺正章樹木希林天地真理浅田美代子とんねるず工藤静香藤井郁弥中居正広なども出演した。

*2:1975年~1992年放送。ターキーこと水の江滝子、キャッシー中島、清水由貴子など出演者は女ばかりなのに、しっかりエロネタを扱ってくれた。

*3:1965年~1990年放送。大橋巨泉愛川欽也藤本義一などの司会による基本的にはカルチャー番組だが、火曜、木曜はエロネタが多く要チェック。いそのえいたろうの風俗レポートや、うさぎちゃんの秘湯の旅が人気だった。

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続おやじびでお 第9話 平成風俗の栄華と衰退の巻

 90年代の約10年間に「平成風俗ブーム」がありました。それまでのソープ、ファッションヘルス、ピンサロとは違った新しい風俗。具体的にはイメージクラブや性感マッサージ(美療系)、性感ヘルス*1といった業種の店が爆発的に増えたんですね。

 そのきっかけとなったのが1991年にオープンした池袋「R」*2という店でした。言葉責めや前立腺マッサージなどSMクラブから派生したサービスを売りにしていて、女の子は脱がないし、触らせない。でも、従来の風俗とは比べ物にならないような快感を味わせてくれると大評判になりました。
 同店のエースが南智子さんという人で、彼女は代々木忠監督の「性感Xテクニック」シリーズ*3に出演し、その凄まじいテクニックを披露したんですね。彼女の手にかかると、男優が女の子のようにヒィヒィ言わされてしまうのです。彼女をはじめとする性感マッサージ嬢たちのプレイが、その後AV業界を席巻する「痴女」像に大きな影響を与えるわけですね。
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 そんな過激で先鋭的なプレイの「R」ですが、やがて姉妹店として「S」という店を出します。こちらはグッと普通の風俗に近いサービスなのですが、女の子が若くて可愛くて、それでいて、生フェラにアナル舐め、素股といったハードなプレイを格安料金で楽しませてくれるとあって大人気に。「S」のある雑居ビルの階段には行列が出来ていました。

*1:性感とはついているものの、サービス的にはファッションヘルスとあまり変わらない。当時は風営法の許可をとっているのがファッションヘルス、無許可店が性感ヘルスという区分だった。

*2:この「R」のグループが次々と店を出し、平成風俗ブームを牽引したが、1995年に国税局の調査が入ったことから崩壊してしまう。当時グループの年商は20億円以上だったとか。

*3:アテナ映像。10作以上撮られた人気シリーズ。南智子は、のちに作家となり漫画原作なども手がけた。

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続おやじびでお 第8話 AV雑誌ノスタルジアの巻

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 先日、「ベストビデオ」*1が休刊しました。1986年創刊で、25年の歴史でした。創刊号のグラビアは沙羅樹*2ですか。うーん、時代だなぁ。

 ここ数年で「オレンジ通信」*3「ビデオメイトDX」*4と老舗がバタバタと倒れ、これでレンタル時代からのAV雑誌で、現存しているのは「ビデオ・ザ・ワールド」*5だけになってしまいましたね。雑誌業界が厳しいと言われるようになって久しいわけですが、なんとも寂しいものです。特にAV雑誌黄金時代を知る者にとっては……。

 というわけで、今回はAV雑誌の思い出について書いてみましょう。いわゆるAV誌と言われている雑誌の中で、最も古いのは1981年末創刊の「オレンジ通信」でしょう。その後「アップル通信」*6さくらんぼ通信」「バナナ通信」など、フルーツ+通信のタイトルをつけた類似誌をたくさん生むほどの人気を博しました。
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 しかし、創刊当初の「オレンジ通信」は、実はAV雑誌ではなかったんですね。AVはむしろ脇役で、ビニ本裏本、そして裏ビデオの紹介の方がメインでした。そう、80年代の半ばくらいまでは、裏ビデオの方が勢いがあって、一般のAVは「表ビデオ」なんて言い方をされていたほどなんです。これは当時の「通信」系雑誌全てに共通していました。

*1:三和出版発行。女の子にスポットをあてたオーソドックスな作りで安定した人気があった。創刊時は「ベストマガジン」モロパクリな表紙だった。現場取材中心の別冊「スーパードキュメント」は継続している。

*2:1986年にデビューしたAV女優。村西とおる軍団の一員として活躍。2006年に復活した。

*3:東京三世社発行。27年という長寿を誇ったAV雑誌の代表格。後期は裏モノ情報がメインになっていった。ちなみに創刊前に同名の少女漫画があるが、誌名はそこから取られた?

*4:コアマガジン発行。いち早くインディーズ路線を開拓。思い入れたっぷりの読み応えのある記事が多く、業界からの支持も厚かった。

*5:コアマガジン発行。AVを作品として評価するというオンリーワンの道を歩む。裏モノガイド誌としても定評がある。今でもDVDをつけないという硬派な姿勢もステキ。

*6:三和出版発行。オレ通と並ぶ老舗誌だった。「女体解剖実験室」という人気企画が大変エロくて実用度も高かった。

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エロの「デザインの現場」(有野 陽一 アスペクト)

http://instagram.com/p/lWLuqpjW-6/

 エロ本の先鋭的なデザインについて、そのキーマンとなった9人のデザイナー(編集者含む)に取材した一冊です。

 URECCO、夜遊び隊、チョベリグ、SMスピリッツ、TOPAZ、デラべっぴん、すっぴん、BOYES、GOKUH、BODY PRESS、ビデオザワールド、Chuスペシャル、ザ・ベストマガジン、マニア倶楽部……。紹介される数々の名エロ本。誌名を上げていくだけでも、もう目頭が熱くなってきますね。
 僕も書かせてもらった雑誌がたくさんありますし、登場するデザイナーたちともずいぶん仕事をしました。中でも、野田大和氏とは、ゴールドマン監督と三人で「Ha!」というユニットを一緒にやっていた関係もあって、一時期はよく行動を共にしていました(実は本書でも、野田氏の項で僕の名前も登場しています。嬉しい!)。

 誌面で紹介される彼らの作品……、表紙や企画ページ、AVのパッケージなどは、うっとりするほどかっこよく、インパクトのあるものばかりです。それでいて、エロの宿命なのか、どこかとぼけたユーモアを感じさせてくれます。
 登場するデザイナーたちは、みなさん実際に他のジャンルでも活躍していますし、その才能は単にエロ本の枠に収まるものではないのですが、やはりこの作品群にはエロならではの魅力が感じられます。

 デザイナーに限らず、エロに関わる才人には「そこまで出来るなら、エロじゃなくて一般向けをやればいいんじゃないですか」と言う言葉がよく向けられます。でも、エロというジャンルだからこそ活きる表現というのが確実に存在すると思うのです。
 本書はデザインという切り口から語ったものですが、それは当然エロ本自体の歴史を語ることでもあります。あまり取り上げられることのないエロ本の内幕についての貴重な証言も数多く読むことが出来ます。

 本書の制作中に、「ビデオザワールド」と「Chuスペシャル」の休刊のニュースが入ってきたことが綴られています。あとがきにも「この本でとりあげたエロ本のほとんどすべて、今はもうありません」と書かれています。そして現在残っているエロ本には、先鋭的なデザインを受け入れる余裕はありません。エロ本というジャンルは確実に終焉を迎えています。

 著者はあとがきでこうも書いています。
「『アダルトのデザイン』をひとつの歴史として残したい。それ以上でも以下でもなく、これがこの本をつくる趣旨であり、ぼくの純粋な気持ちでした」
 本書がこの時期に出たのは、必然とも言えます。

 紹介されているデザイナー、こじままさき氏は、やはり紹介されているアルゴノオトこと古賀智顕氏のデザインに憧れて、「URECCO」のデザイナー募集に応募したそうです。
 願わくは、本書をきっかけにエロのデザインの芳醇さを知り、それを受け継ぐ人が生まれますように。

 その力を活かす場は、エロ本ではないかもしれないですけれど。

エロ本のデザインに興味がある方は、WEBスナイパーにて、ばるぼら氏が連載している「ポルノグラフィック・デザイン・イン・ジャパン」もぜひお読み下さい。

S氏の遺した情念に溢れた大量のエロイラスト

先日、「びっしりと情念が書き込まれた70年代エロ本を発掘」で紹介した書き込みエロ本をいただいた下北沢の古書ビビビの徳川さんから、「またすごいものが来ました」とのお知らせが。
あのエロ本の持ち主であった方のイラストだそうです。なんだかよくわからないけれど、これはもう僕がいただくしかない。そんな気持ちになって早速ビビビへと向かいました。

「これです」

徳川さんがカウンターに積み上げたのは、大量のレポート用紙の束。その数24冊。

「こ、これは……」
http://instagram.com/p/h5eUYdjWxY/


レポート用紙には、びっしりとエロイラストが描かれていました。かなり精密です。
どうやら写真をトレースしているようです。
なので、薄いレポート用紙やトレーシングペーパーに描かれているんですね。
一冊あたり50枚程度が挟まれていたので、ざっと1200枚。なんという量でしょうか。
そのほとんどがセーラー服の少女が、恥ずかしい姿で縛られているというもの。同じシチュエーションの絵が延々と続きます。
そして、あのエロ本と同じように細かい字で謎の言葉がびっしりと書き込まれています。
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僕は、このレポート用紙の山から溢れ出る情念に圧倒されました。
ちょうどその時、お店にはこの作品群を持ち込んだ方がいらっしゃっていました。
話を聞いてみると、その方はこの作者の義理の娘、つまり作者の息子の嫁だそうです。
80歳を超えて亡くなった作者の遺品を整理していて、あのエロ本の山と、この絵画の山を発見し、これをどうしたものかと考えあぐねた末にビビビに持ち込んだそうです。

この作者……仮にS氏と呼ぶことにしましょう。S氏がいつからいつまで、この大量の作品を描いていたのか、全くわかりません。あのエロ本の発行年から推測すると70年代からでしょうか。40年前とすれば、S氏が40代の頃ということになります。ひたすら溢れ出る性欲と情念をこの大量に作品に焼き付けていったのです。そして、それを捨てることなく、大事に保存し続けていたということです。

他人の目を一切気にすることなく、ただ自分の性欲をストレートにぶつけたこの作品群。一種のアウトサイダー・アートと言えるかもしれませんが、個人的にはこれをそんな枠に収めたくありません。これは偉大なるエロの先輩の遺産なのです。

それではS氏の素晴らしい世界をお楽しみください。
(一部修正をさせていただいております)

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びっしりと情念が書き込まれた70年代エロ本を発掘

 下北沢の古本ビビビの店主、徳川龍之介さんがこんなツイートをしていました。

あまりに怪しすぎて「売り物としては厳しいので貰っていただければ助かります!捨てたら呪われそうですし・・」ということで、すかさず手を上げて、いただいて参りました。

「これです」
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とドサっと渡されたのは、松尾書房とか桜桃書房とかサンライズ社とかアップ社とか高倉書店とかゆに書房とか森尾書房とかの、いわゆるビニ本の元祖的なA4グラフ誌です。70年代半ばの出版のようですね。
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このように非常にイイ味わいのエロ本ばかりなんですが、確かに写真に何やら細かい書き込みがびっしりと……。
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しかし、字が小さく、そして汚いので、何が書いてあるのか、ほとんど読めません。色校刷りに修正の指定を入れているのかとも思うんですが、どうもそういう感じではない。

かろうじて「右もみ」「上さすり」「わき入」「ブラめくり」なんて言葉が読み取れます。

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こちらも「右腿下から入」「右もみ左ヒップ抱」「またがせ」なんて書いてあります。

これはどうも、ここから、どんな愛撫をするかを妄想して書き込んでるような気がします。「おれなら、ここからこう脱がして、こう触って……」というシュミレーション。ちゃんと分岐まで考えられてるのもいいですね。
しかし、すごい情熱というか欲情というか、熱い情念が感じられますね。こういうエロ本の楽しみ方というのは70年代には一般的だったのでしょうか。いや、そんなことは、たぶんないな(笑)。

それでは70年代エロ本と、この名も無き情念のオナニストの素晴らしいコラボをご覧下さい。

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雑誌の切り抜きなんかも挟んであります。山口智子の水着グラビアでも容赦ありません。
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これは週刊プレイボーイとじ込みのAV女優カタログですね。なぜわかるかというと、実は僕もこれを切り抜いて保存していたからです(笑)。
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洋物もあります。これはいい表紙。
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まだヘア解禁前ですから、輸入の際にしっかりと塗りつぶされてます。でも、この方はそこに怒ったりはしてないみたいですね。
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ああ、この頃のエロ本というのは、本当に必要とされていたし、愛されていたんだなぁ。

追記:この方のアーカイブサイトを作りました。イラストともども大きいサイズで見ることが出来ます。
http://mrssworks.tumblr.com/

エロ本業界の厳しすぎる現状について書きました

http://instagram.com/p/gj0cGYjW4g/

 発売中の「創」12月号に「”冬の時代“エロ出版社に吹き荒れるリストラの嵐」という原稿を書きました。

 ここ1年ほどのエロ出版業界は本当にヤバイ感じです。原稿にも書きましたが、2020年のオリンピックの東京開催決定でエロ本への規制が強まるという話がありますが、正直そこまで保たないだろうなというのが実感です。いや、もうエロ本は既に死んでいるという方がいいかもしれないですね。
 多くの関係者に取材したリアルなレポートになっておりますので、興味ある方はぜひ。

 しかし、この取材をしていて、本当に辛い気持ちになりました。7年前に「エロの敵」を書いた時も、エロ本業界を取材していて、その未来の無さに激しく落ち込んでしまったのですが(実はあの本、最初は一人で書くはずだったのですが、エロ本パートを書いているうちに落ち込んでしまって書けなくなり、雨宮まみにAVパートを頼んだのでした)、今回はその比じゃなかったですね。
 もう、誰もが未来を見ていない。この先、エロ本が再び盛り返すとは誰も考えていない。あと何年、細々とでも生き延びられるかということしか考えていないという、完全に終わった業界であることを思い知りました。

 特にキツイなと感じたのが、今、エロ本を読んでいる人は「ネットが出来ない人」だという現実です。現在、エロ本の読者の年齢層は40代から50代がメイン。そしてその大半がネットをやっていない人、なのです。だから、エロ本でネットの記事を書くと不評だと言います。
 キツい言い方をしてしまえば、エロ本を読んでいるのは、保守的な情報弱者なのです。だから、何か新しいことをやってはいけないのです。

 エロ本がそっぽを向かれたのは、編集者の怠慢だという意見もあるかもしれませんが、実はもうそういう時期は過ぎています。新規の読者を見込めないとすれば、いかに今の読者を逃さないようにするしかありません。となれば、新しいことをするのは逆効果です。あくまでも「保守」。これが今後のエロ本を作っていく上で心がけなければいけない鉄則となるのではないでしょうか。

 そして、これはたぶんエロ本だけに限らず、あらゆる雑誌にも言えるのでしょうね。

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