ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「メトミックアクション 温泉ズンドコ芸者」(1992年)の演説

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 最近、死蔵してた8ミリビデオのテープをデジタルデータ化する作業をしています。あ、こんなもの撮ってたのか、という貴重な映像もあるんですが、一時期はVHSを使うように8ミリビデオに録画してたので、色んなソフトをダビングしてたりしてたんですね。そんな中から、1992年の「メトミックアクション 温泉ズンドコ芸者」(スーパークリスタル)を発掘しました。

 監督は中野貴雄。最近ではウルトラマンシリーズの脚本などで知られていますが、90年代には、モンドな映画の要素を大胆に取り入れた、かなり異色のAV監督として注目されていたのです。特にこのメトミックアクションシリーズは、特撮映画(「海底轟姦」)やスパイ映画(「マル秘絶頂大作戦」)など、60~70年代の邦画テイストを見事にパロディ化したAVで、傑作ぞろいでした。

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温泉ズンドコ芸者 メトミックアクションシリーズ10(クリスタル映像

 で、今回発掘した中に「温泉ズンドコ芸者」もあったんですね。タイトルからわかる通りに東映温泉芸者シリーズのパロディなんですが、まぁ、メトミックアクションの他の作品に比べると、かなりユルいというかメタな構成で、途中で意味不明な監督インタビューコーナーが始まったり、花電車の技術を競う芸者三番勝負が始まったり、ハメ撮りが始まったりするんですが、ストーリーがうやむやなままに撮影が終了し、打ち上げの宴会に突入。
 宴会シーンで、キャストのクレジットなど出て、これで終わりかと思っていると、突然、登場人物の一人であった西条承太郎(男優時代の二村ヒトシ)が、叫び始めます。

みんなは本当にこれでいいのか?
こんなことだからアダルトビデオにドラマはいらないなんて書かれちゃうんじゃないのか?
それも本当のドラマも本当のドキュメンタリーも見たことのない連中にだ。
本当の現実と本当の虚構の区別もつかないアマチュアのような連中にだ。
いいか、僕たちはプロだろ?
お客さんをだまして嘘をついて
そして喜んでもらうのが商売だろう?
なのに、一番最初に変なインタビューがあって
19かそこらの娘の世迷い言を聞いて
淡々としたセックスをして
「あ、君もとうとう大人への階段を登り始めたんだね」
こんなことでいいのか?
あるいは
「本当のAVの味を教えてあげるよ」
とか何とか言って、弱いものいじめのレイプをして
「ああこれで女の生の反応が撮れた」
そんなことでいいのか?
見てる奴だって人間なんだ。
人間ってのはね、そんな単純なものじゃないんだよ。
皮を何枚も何枚もかぶってるんだ。
だからこそ我々架空のキャラクターだって皮をかぶらなければいけない。
仮面をつけなければいけない。
だいたいこのテレビのブラウン管がひとつの仮面なんだ。
おれは負けないぞ。
最後の最後まで嘘をつき続けてやる。
おれはあきらめないぞ
最後の最後まで嘘をついて、観客をだましてやる。
それがドラマだ。
現実を遥かに超えた豊穣な物語空間、
それがドラマだ。

その後、西条は布団で目を覚ます。
「怖い夢を見た。
天狗の一番汁の安否も恋の三角関係も薔薇蜥蜴の行方も何一つ解決つかないまま、
宙ぶらりんのまま話が終わってしまうんだ。
まさかこのまま、エンドマークが出るんじゃないだろうな。
え、夢オチ?」
そして「終」のエンドマーク。

というように、ある種投げやりなメタ落ちになってるのですが、西条の長い演説のセリフは当時の中野貴雄のAV業界に対する本音も垣間見えるような気がします。
そして、個人的に男優時代の二村ヒトシの一番好きなシーンはアレなのですよ。
こんなセリフを語った彼がその後、TOHJIRO監督を師事してドグマで監督として活躍したというのも、なんか面白いなぁ。

メトミックアクションシリーズ、復刻も配信もされていないようで残念なのですが、もし中古のVHSなど見かけたら、マストバイですよ。

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