ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

レコードをつまみに飲む

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 レコードがブーム、CDの売り上げを上回った、なんて話を聞いても「ふーん」と他人事でした。

 レコードプレーヤーを手放したのは、たぶん二十代半ばくらい。引っ越しの時に、もう使わないと思って処分しました。思い入れがあったり、貴重だったりするものを数十枚だけ残して、レコードのコレクションも売るなりあげるなり捨てるなりして一気に処分。
 それから三十年ほど、レコードプレーヤーを持たない生活を続けていました。
 もともとレコードは色々と面倒くさくて好きではなかったのです。ジャケットから出して、内袋から出して、クリーナーでホコリを取って、おっとレコード針もクリーニングして、そっと針を落としてようやく聴ける。さらにA面が終わったら、ひっくり返さないとB面も聴けない。そして、かけている間はおとなしくしてないと針飛びしてしまう。下手すれば盤面に傷をつけてしまう。そうしたら、もうおしまいだ……。
 そうした面倒臭さを解消するために、レコードを買ったらすぐにカセットテープに録音して、もっぱらそっちを聴いていました。90分テープの片面に録音すればAB面をひっくり返す手間もいらないですし(昔のアルバムは45分以内がほとんどだったのです)。

 ということで、当時からレコードよりもカセットテープの方が思い入れがありました。貸しレコード屋を愛用していましたしね。とにかく一枚でもたくさん聴きたかったのです。
 80年代後半にCDが普及してくると、その手軽さに飛びつきました。そして、前述のように、あっさりとレコードプレーヤーも手放して、レコードとは無縁の生活を三十年過ごしてきたわけです。
 カセットテープには思い入れがあったので、ネットオークションで整備済みの古いラジカセを入手して、カセットテープをコツコツと集めたりしてました。
 どうせアナログなら、レコードよりもカセットの方がいいや。そんなスタンスだったのです。

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SONY CF6500。1977年発売のジルバップシリーズ第一号。

 ところが少し前に、仲良しのDJフクタケさんと「80年代洋楽を聴きながら飲みましょう」という話になり、フクタケさんが大量の7インチレコードと共にポータブルプレーヤーを持参して遊びに来ました。
 ポータブルプレーヤーでシングル盤をかけながら飲む。これが実に楽しかったんですね。一曲ごとにチマチマとレコードを変えていく。面倒くさいけど、それが面白い。酒やつまみと同じテーブルに載せられたプレーヤーの上で、くるくると回るレコードが実に愛らしい。

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2021年度上半期個人的ベスト10曲

なんか今年は年が開けてから、ピンと来る新曲が少ない気がしたんですよね。色々聴いてはいるんですが、「いいな」と思った曲はみんな去年リリースだったり、もっと前だったり。とは言うものの、それでも上半期で10曲選ぶとなると、悩むくらいは当たりの曲もあったわけですが。
ここ数年、シンガーソングライター系のしっとりとした美メロの曲ばかり気に入ってたんですが、今年上半期で選んだら、ちょいニューウェーブ風味な曲が多かったりして、自分の中のトレンドも変わってきてるのかな。

というわけで順不同で10曲選んでみました。

Lou Hayter - Time out of Mind
ディスコロック・バンドのNEW YOUNG PONY CLUBなど様々なバンドやユニットで活動してきたイギリスの女性シンガーLOU HAYTERがスティーリー・ダンの「ime Out Of Mind」をカバー。ちょいテクノポップ風の可愛らしいアレンジになってて心地よいです。

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The Lazy Eyes - Where's My Brain???
オーストラリアのティーンエイジャー4人組、The Lazy Eyes。トリップ感満点のサイケデリックナンバー。後半どんどんヤバく盛り上がっていく演奏がたまりません。若い子が古臭い音楽やってんの、好きなんですよね。

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エロの現場におけるハダカの意味

 担当がH氏からS君に変わった。ライターが個人事務所を持っていると聞くとすぐに「女連れ込むんでしょ、いいですねぇ、うらやましい」と妄想を暴走させることはあっても、直接的にはエロに興味はなさそうだったH氏と違って、S君はかなりAV好きと聞く。

「はい、休みの日はだいたい2~3本は見てますね。素人ものが好きです。特にギャルがやられるのがいいですね」
 おお、若者のエロ離れが進む今、なかなか有望な青年ではないか。そんなS君も風俗には足を踏み入れたことは無いという。
「だって怖そうなんですもん」
それは偏見だ。そりゃ一部に怖い店も無いでは無いが、たいていの店はちゃんとした客商売。怖い思いをすることは滅多にないのだ。
 よし、僕がその偏見を無くしてあげよう。とりあえずこれから風俗店に取材に行くから、ついて来なさい。

 と、いうわけで高田馬場の某性感ヘルスへの取材にS君を同行させた。
 20歳のあいこちゃん(T148B84W59H89)にインタビュー。小柄ながらも出るところは、しっかり出たナイスバディな女の子に「プライベートで何人くらいとやった?」とか「性感帯は? クリと中だと、どっちが感じる?」とか、まぁ普通だったらセクハラどころの騒ぎじゃない露骨な質問を浴びせ、その後、ヌード撮影。あの風俗店の狭い個室の中で、すぐ目の前に全裸の女の子が横たわっているという、考えてみれば、かなり刺激的な状況ではある。それを、じーっと見学するS君。さぁ、健康な二十代男子、どう感じた?

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「エロ本とエロ漫画の「猥褻」歴史学」参考図版

「エロ本とエロ漫画の「猥褻」歴史学」参考図版

これは、【#KEMNOMA 無観客無料配信】「ヘアヌードの誕生」発売記念「エロ本とエロ漫画の『猥褻』歴史学」の参考図版です。
otb.hatenablog.jp
You Tubeにもアップしました。
youtu.be


※対談での登場順に変えました。

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K01 ダビンチ 世界初の断面図
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Y02 蝴蝶 渡辺省亭
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新刊「ヘアヌードの誕生」と配信イベントのお知らせ

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 6月6日、単著としては「日本エロ本全史」以来の新刊「ヘアヌードの誕生 芸術と猥褻のはざまで陰毛は揺れる」イースト・プレス)が発売になります。
 日本人と陰毛表現の歴史を検証したという本です。ええ、真面目です。すごく真面目な本です。たとえ最初が永井豪『イヤハヤ南友』の耐冷テストでの冷東麗造子ちゃんのヌードの話から始まったとしても!

 んで、本を出す度にいつもは色々イベントをやるのですが、今はこんなご時世なので、配信イベントをやります。実はもうたくさん決まっております。

 その第一弾として、発売日の6月6日に美少女コミック研究家の稀見理都さんと、実写と漫画における「猥褻」の定義と境界線の歴史を語り合うという「エロ本とエロ漫画の『猥褻』歴史学という配信イベントをやります。
 こちらは無料配信となっておりますので、お気軽にご覧下さいませ。
otb.hatenablog.jp

 なにしろ相手が稀見理都さんですから、かなりディープなトークとなると思われます。


 以降のイベントも解禁になり次第告知させていただきます!


 それから「ヘアヌードの誕生」関連以外でも、いろいろなトーク動画がアップされております。

 まず、若手バンドのソノシータ@の内田君がやっている「くるくるラジオ!」に、花田健哉と出演しました。モデルプランツ~野獣のリリアンと30年以上に渡って活動を共にしている花田君と、懐かしい話などをしておりますよ。

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 ちなみにこの番組、前回のゲストがじろうと野獣のリリアン濃度高すぎ(笑)。


 姫乃たまとやっていた「実話BUNKAタブー」チャンネルも再開しております。現在、姫乃たまはお休み中なので、「実話BUNKAタブー」編集のソレンさんとトークしております。

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 お楽しみ下さい!

誰もいない居酒屋でノンアルコールビールを飲む

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 池袋北口の「D都会」といえば、24時間営業で激安とあって、昼飲みどころか朝飲みの聖地として、池袋周辺の飲兵衛の間では愛されている店です。
 しかし、緊急事態宣言でお上から、「酒類の提供禁止」と言われてしまったら、他の飲み屋同様、さすがの「D都会」も休業するしかないでしょう。

 と思ってたんですが、たまたま前を通ったら、あれ、やってる? 外の看板にはいつもの通りに「昼居酒屋できます24時間営業中」「生ビール4杯券1000円」「酎ハイ3杯券600円(各種)」なんて書いてあります。
 え、通常営業? と階段を降りていけば、「営業案内 緊急宣言により当店は朝9:00~夜8:00までとさせて頂きます。尚、酒類は販売中止とさせて頂きます」
との張り紙が。
 まぁ、そうですよね……。

 覗き込んでみると、営業はしているようですが、お客の姿は見えません。
 でも、酒類以外は通常営業なのかな。ちょっと興味を持って入ってみることにしました。
 店内に入ると、女性の店員さんが少し慌てたように
「アルコールはないんですけど」
「ノンアルコールとおつまみはあるんですよね」
「はい」
「じゃ、いただきます」

店内は他にもう一人男性店員がいるだけで、客の姿は無し。
 このD都会、いつ行っても客がいっぱいなんですよ。早朝に行っても、昼に行っても、深夜に行っても。他に客のいない貸し切り状態なんて初めてですよ。なんか不思議な気分です。

 食券の自動販売機を見ると、ドリンクのところは軒並み「売り切れ」の赤い文字。ようやくノンアルコールビールを探し出します。
 え、350円もするんだ、ノンアルコールビール。生ビールが4杯1000円、酎ハイ3杯600円なのに……。
 そして煮込み350円も頼んで合計700円。なんかD都会にしては、ずいぶん高くついたような気持ちになりますが、まぁ、そこはしょうがないですね。

 二人がけ用のテーブル席に座って、ノンアルコールビールの小瓶をチビチビ飲みながら、煮込みをつまみます。テーブルにはちゃんとアクリル板の仕切りもあります。
 がらんとした無人のD都会店内を眺めながらノンアルコールビールを飲む。貴重といえば貴重な体験ですね。
 さすがにおかわりをする気にはならず、これでおしまいにすることに。
 僕がいる間、他のお客さんは来ませんでした。もしかしたら、僕は初めての客だったのかな。だからあんなに驚かれたのかな。
 ずっと、ノンアルコールビールなんて、と思っていたんですが、こうやって飲み屋の雰囲気の中で飲めば、それなりに気分は味わえます。

 結局のところ、僕らが飲み屋を応援するのって、こういうことしか出来ないのかな、という思いました。
 一人で、黙ってノンアルコールビールを飲み、ちょっとつまんで、サッと出る。もちろん、モヤモヤとした欲求不満は残るんですけど、それで少しでも飲み屋さんの力になるのだったら……。
 まぁ、ほとんどの飲み屋さんは休業してるようですが、その中でも営業してる店を見つけたら、ちょいとノンアルコールビールでもひっかけてみようかな、そんな気持ちになっております。

「メトミックアクション 温泉ズンドコ芸者」(1992年)の演説

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 最近、死蔵してた8ミリビデオのテープをデジタルデータ化する作業をしています。あ、こんなもの撮ってたのか、という貴重な映像もあるんですが、一時期はVHSを使うように8ミリビデオに録画してたので、色んなソフトをダビングしてたりしてたんですね。そんな中から、1992年の「メトミックアクション 温泉ズンドコ芸者」(スーパークリスタル)を発掘しました。

 監督は中野貴雄。最近ではウルトラマンシリーズの脚本などで知られていますが、90年代には、モンドな映画の要素を大胆に取り入れた、かなり異色のAV監督として注目されていたのです。特にこのメトミックアクションシリーズは、特撮映画(「海底轟姦」)やスパイ映画(「マル秘絶頂大作戦」)など、60~70年代の邦画テイストを見事にパロディ化したAVで、傑作ぞろいでした。

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温泉ズンドコ芸者 メトミックアクションシリーズ10(クリスタル映像

 で、今回発掘した中に「温泉ズンドコ芸者」もあったんですね。タイトルからわかる通りに東映温泉芸者シリーズのパロディなんですが、まぁ、メトミックアクションの他の作品に比べると、かなりユルいというかメタな構成で、途中で意味不明な監督インタビューコーナーが始まったり、花電車の技術を競う芸者三番勝負が始まったり、ハメ撮りが始まったりするんですが、ストーリーがうやむやなままに撮影が終了し、打ち上げの宴会に突入。
 宴会シーンで、キャストのクレジットなど出て、これで終わりかと思っていると、突然、登場人物の一人であった西条承太郎(男優時代の二村ヒトシ)が、叫び始めます。

みんなは本当にこれでいいのか?
こんなことだからアダルトビデオにドラマはいらないなんて書かれちゃうんじゃないのか?
それも本当のドラマも本当のドキュメンタリーも見たことのない連中にだ。
本当の現実と本当の虚構の区別もつかないアマチュアのような連中にだ。
いいか、僕たちはプロだろ?
お客さんをだまして嘘をついて
そして喜んでもらうのが商売だろう?
なのに、一番最初に変なインタビューがあって
19かそこらの娘の世迷い言を聞いて
淡々としたセックスをして
「あ、君もとうとう大人への階段を登り始めたんだね」
こんなことでいいのか?
あるいは
「本当のAVの味を教えてあげるよ」
とか何とか言って、弱いものいじめのレイプをして
「ああこれで女の生の反応が撮れた」
そんなことでいいのか?
見てる奴だって人間なんだ。
人間ってのはね、そんな単純なものじゃないんだよ。
皮を何枚も何枚もかぶってるんだ。
だからこそ我々架空のキャラクターだって皮をかぶらなければいけない。
仮面をつけなければいけない。
だいたいこのテレビのブラウン管がひとつの仮面なんだ。
おれは負けないぞ。
最後の最後まで嘘をつき続けてやる。
おれはあきらめないぞ
最後の最後まで嘘をついて、観客をだましてやる。
それがドラマだ。
現実を遥かに超えた豊穣な物語空間、
それがドラマだ。

その後、西条は布団で目を覚ます。
「怖い夢を見た。
天狗の一番汁の安否も恋の三角関係も薔薇蜥蜴の行方も何一つ解決つかないまま、
宙ぶらりんのまま話が終わってしまうんだ。
まさかこのまま、エンドマークが出るんじゃないだろうな。
え、夢オチ?」
そして「終」のエンドマーク。

というように、ある種投げやりなメタ落ちになってるのですが、西条の長い演説のセリフは当時の中野貴雄のAV業界に対する本音も垣間見えるような気がします。
そして、個人的に男優時代の二村ヒトシの一番好きなシーンはアレなのですよ。
こんなセリフを語った彼がその後、TOHJIRO監督を師事してドグマで監督として活躍したというのも、なんか面白いなぁ。

メトミックアクションシリーズ、復刻も配信もされていないようで残念なのですが、もし中古のVHSなど見かけたら、マストバイですよ。

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