ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

エロは不滅ではない

歌舞伎町から、こんな光景は消えた
 先日、歌舞伎町の風俗店店長からAVモデルのプロダクション社長になった方にインタビューしました。2004年の歌舞伎町一斉摘発を機に転職したということなんですが、僕も元風俗ライターとして、あの一連の出来事は忘れられません。
 それまでも、風俗店の摘発は日常茶飯事でした。性感ヘルス、イメクラといった、いわゆる平成風俗は、ほとんどが風営法無届けの「違法店」でしたから、常に摘発の可能性があったのです。とはいっても、摘発されても、もうその日の夕方には店名を変えて表向きの店長を変えて営業再開していたりして、まぁ、見せしめのようなものだったわけです。お上の方も必要悪だと思っているというのが、僕らの認識でした。だって、実際に風俗を潰しちゃったら色々と弊害も出てくるじゃないですか。男の性欲ってのは、どこかで発散しないといけないわけだし、その辺はお上の方も心得ていて、未成年使うとかクスリ使うとか本番させるとか、そういうあからさまにマズいことをしなければ、それほど目くじら立てずに共存共栄していくつもりなのです…。なんてことを思ってたわけですよ、2004年までは。
 ところが2004年の摘発はそういう甘いものじゃありませんでした。一度摘発された店は、再度開けようとするとまた踏み込まれました。徹底的に潰されました。池袋、新宿、渋谷、都内の無許可店は次々と潰され、そして翌年には西川口など近郊の風俗街にも摘発の嵐は吹き荒れました。気がつけば、あれほどたくさんあった性感ヘルスやイメクラは、街から姿を消してしまったのです。残ったのは新風営法施行以前から営業していたソープランドファッションヘルスといった許可店と、風営法許可の下りるデリヘル、ホテヘルのみ。現在は、デリヘルが風俗のメインということになっているのですが、いちいちラブホテルに入らなくてはいけないデリヘルは客に取っては面倒くさいし料金もかかるしと敷居が高く、自然と足が遠のいているようです。かといって、その分、ソープやヘルスに客が押し寄せているかというと、そうでもない。あのたくさんいた風俗客はどこへ行ってしまったのでしょうか?
 風俗が無くなったら、みんな地下に潜ってしまい援交や違法な裏風俗がはびこる、なんて話もありましたが、実際にはそこまでして遊びたいという人は少ないようです。気軽に遊べたからあれだけ平成風俗が流行ったのでしょうね。じゃあ、その性欲は、今はどこへ向けられているのでしょう。
 ま、実際のところ、我慢すれば我慢できちゃうということなんでしょうね。どうしても我慢できなかったらソープでもデリヘルでも裏風俗でもあるし。ただ、以前のように、頻繁に足を運ぶということが無くなっただけで。
 僕自身で考えてみれば、2003年に「風俗ライター止めました」宣言をして以来、めっきり風俗への興味が失せてしまい、仕事でさんざん行って更に自腹でもガンガン行くというほど通っていたのに、今はもうほとんど行かなくなってしまいました。以前は風俗が無くなったら生きていけないと本気で思っていたけれど、別に行かなくても大丈夫だなぁなんて気づいたり(笑)。まぁ、たまに行ければいいかなというぐらいの気分です。無ければ無いで何とかなる。自分でも、この心境の変化にはビックリしましたね。
 プロダクション社長とは、「お上が本気になった時の怖さ」について話しました。社長は「一夜にして、ひとつの業界が無くなってしまったことに驚いた」と言っていましたね。何しろ、あれだけ栄華を誇った歌舞伎町の新風俗があっという間に消えてしまったのですから。お上が本気になって潰そうと考えたら、本当に無くなっちゃうのです。そして世論だって表だっては味方になってくれません。エロって、そういう立場なんですよね。
 そしてあの悪夢がトラウマとなっているという社長は、新天地のAV業界でも、また同じ目に合うんじゃないかという思いが拭えないそうです。AVやエロ雑誌が、徹底的に潰される、そんな日が来るんじゃないかと考えてしまうそうです。
 今年、ビデ倫がヘア解禁をしてからの新基準モザイクは、びっくりするほど細かく薄くなっています。数年前に流行した半違法の薄消しAVかと思うほど、よく見えています。と、なれば、これに対抗する形でメディ倫などの新基準団体も、消しを薄くしていく可能性もあります。もしも薄消し合戦がエスカレートしていったら、そのゴールは摘発ということになるでしょう。はっきり言って、今のセルAVの修正でも以前の基準で考えたら完全にアウトですからね。本気でお上が動いたら、今のエロ業界は、あっという間に吹っ飛びます。
 エロは必要悪、エロメディアが無くなったら、性欲のやり場を失って性犯罪が増えてしまう。男に性欲がある以上、エロメディアは不滅! と、いう意見も、あの風俗業界の崩壊を目の当たりにした僕らには空しく聞こえてしまうのですよ。
 エロは、いつだって砂上の楼閣なのです。

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