ダリブロ 安田理央Blog

フリーライター安田理央のBlogです。

「東京情報コレクション」(講談社現代新書 1986年)

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 新宿駅地下の古本市「古本浪漫州」でたまたま購入した一冊。1986年に書かれた都市論的な東京ガイドだ。
 今から32年前。バブルに向かいつつあり、最も東京が調子に乗っていた頃なので、この本にもその勢いが感じられる。建築史家・陣内秀信による序文「ホロニック都市のコンテクストを読むために」も「『東京は一番エキサイティング!』か?」という章から始まっている。

 とにかく執筆陣が豪華だ。泉麻人がバス路線から東京の変貌を観察し、呉智英が図書館の使い方を講義し、唐十郎が下町の銭湯について語る。赤瀬川原平トマソン入門もある。
 今、読み返して最も面白いのは、30年前の失われた東京の光景だ。まだ秋葉原は「萌都」ではなく最先端の電気街だし、ニューウェーブブームが到来する前のラーメン界は、札幌ラーメンと九州ラーメンが全盛であり、聖地は荻窪だ。湾岸地帯が盛り上がりつつあったようだが、ウォーターフロントという言葉はまだない。この後に盛り上がって、そして消える。

 1986年といえば、僕は高校を卒業して、池袋の西武百貨店でバイトしながら美学校に通っていた頃。実家を出て、江古田の木造アパート(トイレ共同!)でひとり暮らしを始めた年でもある。つまり、まぁ、個人的にも「青春」まっさかりだったのだ。19歳。
 ゲームセンターについて触れた項では、江古田には8軒のゲームセンターとテレビ麻雀専門店が4軒あると書かれている。そうだ、確かにあの頃、江古田はゲームセンターだらけで、僕らの重要な娯楽だった。なにかというとゲームセンターで時間を潰していた気がする。
 それだけあった江古田のゲームセンターも現在は、2006年に開店したマニア向けの店「Game in えびせん」のみ。当時の店はもう一軒も残っていない。同じく、たくさんあった古本屋も壊滅状態だ。
 この本に登場する様々な店も、大半が姿を消している。
 その一方で「店といい、人といい、老朽化が目立つ。あと数年の運命か」と書かれている渋谷ムルギーが、まだ健在だったりもする。

 今、この本を片手に1986年の痕跡を求めて東京を巡ってみるのも面白いかなと思った。


 

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