のどぐろとサーモンといくらの弁当(1480円/新潟県/B-4)
さて、最終日。どの駅弁をフィニッシュに持っていくか、毎年悩むところであります。そして熟考の末に選んだのは、昨年食べて、そのあまりの美味さに衝撃を受けた「のどぐろとサーモンといくらの弁当」でした。
今年は個人的に今ひとつ盛り上がらずに、いつもより購入個数が少なかったこともあって、リピート(以前買った駅弁を、今年も買う)は、ほとんどしなかったのですが、やはりこれは食べたかった。
高級魚であるのどぐろ(アカムツ)を炙ったものとサーモン、そしていくら。ご飯は昆布だしで炊いています。
実は、あちこちから「去年より、のどぐろの美味さが落ちている」という声を聞いていたのですが、うーん、確かにちょっと火が通り過ぎな気がしますね。あのとろけるような味わいが少し失われているような……。しかし、それを補うかのように、サーモンが美味い! こってりとしてまろやか。サーモンの入った駅弁は他にもたくさんあったわけですが、このサーモンがダントツで美味しいのではないか、そう思いました。サーモンだけでも、この駅弁を食べる価値はあると思いましたね。
今年の大会は、値段の高騰が気になったわけですが、「のどぐろとサーモンといくらの弁当」も1480円と、かなり高価なわけです。でも、これは高いと感じない。この値段でこれを食べさせてくれるなら、文句なし、そう感じます。今回、高いと感じた他の駅弁も、素材にこだわった結果にあの価格になったのでしょう。それを高い、安いと感じる差はどこにあるのかなぁ、なんてことを考えてしまいましたね。
というわけで、今年も終了。ごちそうさまでした。
トリュフ風味牛タンと牛肉のイタリア風すき焼き弁当(1480円/青森県/B-3)
「名人夢の競演」企画のひとつ。神戸勝彦氏監修による新作駅弁です。メインは牛タンのタリアータトリュフ風味と、バルサミコ風味の牛肉すき焼きの二種類。付け合せはブロッコリーチーズのせ、マッシュポテト、カポナータ(野菜のトマト煮)、そしてご飯はサフラン風味のガーリックライス。
隅々まできっちりと仕事してるなぁ、という駅弁。特にトリュフ風味牛タンは美味いです。サフランライスとの相性もバッチリ。ああ、イタリアンでまじめに弁当を作るとこういう風になるんだなぁ、と思いました。
こりゃあ、ワインでしょ、というわけで月曜の昼間から赤ワイン飲んじゃいましたよ(笑)。うん、これはいい!
これなら1480円という値段も納得という味でした。
ふくのしま豚の醍醐味(1100円/福島県/B-6)
福島名産の麓山高原豚を、しぐれ、角煮、炙り焼き、みそそぼろ、炙りベーコンという5種の調理で食べ比べられるという駅弁です。極端に細長い独特の箱に一列に並んで詰められています。なので、ちょっとずつ食べるというより、端からひとつずつ食べていくという感じになりますね。僕はしぐれからスタートして、ラストはベーコンで〆ましたが、漬物の位置からすると逆の順番の方がいいのかな?
元々の豚肉が美味しいということもあるんでしょうけど、どれも非常に美味しいです。特にベーコンの脂身の甘さにはうっとりしましたね。味付けだけではなく、食感も色々変えてあるので、全く飽きませんね。さすがはあの名弁「秘伝 豚肉の女将漬辨當」を産んだ福豆屋さんですね(実は僕らは敬意を込めて、豚女将と呼んでおります。ものすごく失礼で、すいません……)
これもロマンスカーの車中で食べたのですが、これは非常に持ちやすく食べやすかったですね。あまりの細長さに最初はギョッとしましたが、この形態はこれから流行るかも。
米の国ニッポン弁当(1600円/新潟県/C-3)
本大会最大の問題弁。とにかく高くなり過ぎている!という印象の今回の京王駅弁大会ですが、それを象徴しているのがこの駅弁。魚沼産こしひかり、山形産はえぬき、北海道ふっくりんごの三種類のご飯の味の違いを楽しんでもらおうというコンセプトで作られた企画弁。そのため、おかずも鮭とたらこ、梅干しのみというストイックさ。なるほど、お米の味を引き立てるためですね!
という狙いはわかります。しかし、これが1600円というのはどうなんだろう。チラシでこの駅弁が発表されるや否や僕の周辺では批判的な意見が相次ぎました。いや、だって、これシャケ弁ですよ。ほか弁なら300円ですよ。それが1600円! いい素材を使えば、それだけの値段になる。それはわかります。「美味しんぼ」でも海原雄山が、よくそんなこと言ってました。
でも、ねぇ。1600円ですよ。例えば岩手県の鮭いくら弁当は食べきれないほどのいくらが乗って1200円ですよ。やっぱり納得できないというのが、一般人の感覚です。
とはいうものの、食べずに批判をするというのは、やはりフェアじゃないですね。一度は買ってみよう。食べた上で文句を言おう。そう考えていました。
僕は、駅弁大会仲間と共にロマンスカーに乗りながら駅弁を食べるという「ロマ弁」というイベントを毎年やっております。その時に、どんな駅弁を持っていくかが、重要なんですね。この時に、ハズレな駅弁を持って行ってしまうと、もういつまでもバカにされちゃうわけですよ。己のアイデンティティをかけての駅弁セレクト。どうせなら「さすがは安田さん!」と言われたい。だから悩みに悩むのです。
ここで、「米の国ニッポン弁当」を行こう。僕はそう考えました。ロマ弁では、もちろんお酒を飲みながらいただくわけで、そうなると美味しいご飯と日本酒はいい組み合わせになるのではないか。おかずに不安があっても、なんとかいけるんじゃないか。そういう考えを元に、僕は「米の国ニッポン弁当」を選んだわけです。
からむし素材の風呂敷を広げて「米の国ニッポン弁当」の全容を眺めます。おお、なんとシンプルな弁面でしょうか。塩引鮭、たらこ、紀州梅、さらにこしひかりにはゴマ塩、はえぬきにはおかかもかかっています。まずはご飯の味わいを比べてみましょう。
うん、それぞれ確かに味が違いますね。でも正直、それほどの差はわからないです。みんな美味しい。そして、鮭やたらこなどと一緒に食べると、その美味しさが引き立ちます。特に梅干しと一緒に食べると、ああ、米、うめぇ! と思いました。
美味いのですよ。米もおかずも、これは美味しいものばかり。既に食べた仲間からは、お米の味を純粋に楽しむならばゴマ塩やおかかは邪魔ではないかという意見もありましたが、僕はこれはこれで美味しかった。
うん、これはいい弁当です。弁当本来の美味しさを追求した弁当です。日本酒にも素晴らしく合います。ああ、日本人に生まれて本当によかった、と思う弁当です。味だけで言えば、今大会で一番美味しかったかもしれません。
しかし、しかし、1600円。確かに美味しいけど1600円。これが1000円だったら、いや1200円だったら……。
決して暴利をむさぼるために高値になったとは思っていません。努力して努力して、この値段になったのでしょう。いい素材を使ったがゆえに、この値段なのです。
わかってはいるけれど、僕はこの駅弁を他人にオススメする勇気はないなぁ。すごく残念です。
まるごと甲州かつサンド(800円/山梨県/B-6)
サブ弁としては、いかめしに次ぐ存在として人気の高い甲州かつサンド。豚、鶏、と来て今年は牛も登場。というわけで、その三種のサンドイッチが楽しめるというセット「まるごと甲州かつサンド」です。
それぞれ二個づつ。豚、鶏の美味さは既に十分わかっていますので、やはり今回の興味は新登場の牛。甲州ワインビーフを甘辛く煮込み、パンごと揚げてしまうという意表を付いた作戦で来ましたよ。まるでコロッケかメンチカツのようなサクサクとした外側と、甘辛い牛肉。これは美味しい。まぁ、揚げてあるだけに油っこさはあるんですが、六個中の二個ということで、このセットの中ではおかずのような立ち位置ですね。これだけ食べると、ちょっとヘビーかもしれません。
うれしいのは、マヨネーズ、ゆず胡椒、わさび、マスタードと調味料が4種もついているところ。いちおう鶏はマヨネーズ&ゆず胡椒、牛はわさび、豚はマスタードが推奨されていますが、色々変えて味の変化を楽しむのもいいですね。
今回はコーヒーと一緒にいただきましたが、ビールのお供にもよさそう。これで800円というのはお得感があります!